EpiSodE104:犠牲と決意
エルサリオンを助けに、イズレンディアがイグゼキュタ達を連れて戻ってきた。
それに対してエルサリオンは納得いっていないという思いと、疑問も抱いていた。
自分を助けたいという思いは十分にわかった。
だが、人数を集めたところでマモンに勝てると思ったのか。
イズレンディアはそんな馬鹿なエルフではない。
もう何十年、何百年と家臣を請け負ってくれているからそれはわかっていた。
だからこそ何故人を連れて戻ってきたのかわからなかった。
「お前の後ろにいる奴らはなんだ?良い雰囲気をしてるじゃないか」
マモンが後ろのイグゼキュタを見て、少し興味を持っていた。
「私達はイグゼキュタ。このアルフヘイムの秩序を守る法の番人だ!」
「法の番人か、、だからここを守る為にこいつについて来たというわけか?」
「そうだ!お前のような奴にこのアルフヘイムは穢させない!アルフヘイムの秩序は私達が守る!」
「この状況を見てもそんな事をほざくか。もう守れてないと思うが?」
「黙れ!お前は私達イグゼキュタが倒す!」
そう言ってイグゼキュタは一斉にマモンに攻撃を仕掛けた。
「やめろ!お前らが何人束になってもこいつには敵わない!無駄に血を流すな!」
その様子を見てエルサリオンは叫んだ。
その時、エルサリオンの背後から声がして、その声に振り返る。
「エルサリオン様!」
そこにいたのはイグゼキュタの1人だった。
「なんだ?どういう事だ?何故お前だけここにいるんだ?」
「エルサリオン様、私についてきて下さい!」
エルサリオンはイグゼキュタが自分にかける言葉の意味がわからなかった。
「ついてこい?どういう事なんだ?」
「、、エルサリオン様は私と一緒にこの場から離れてもらいます!」
「意味がわからない!何故俺がここを離れるんだ?わかりやすく説明しろ!」
「、、時間がないので簡潔に説明します。あのマモンという悪魔の事はイズレンディアさんから聞きました。ものすごく強く、エルサリオン様の攻撃すら効かなかったと」
そう言われてエルサリオンが反応する。
「俺の攻撃は、、」
「いいから聞いて下さい!」
こんな事は初めてだった。
イグゼキュタがエルサリオンに反論したのだ。
それに驚いてエルサリオンは黙った。
そしてイグゼキュタは話を続けた。
「そのマモンにはエルフ族では敵わない。イズレンディアさんと私達イグゼキュタはそう判断しました。だから私達は決めたのです。エルサリオン様だけには生きてもらおうと」
エルサリオンはそこまで話を聞いて、やっとイズレンディアとイグゼキュタ達が何をしようとしているのかわかった。
だが、それはエルサリオンにとって屈辱とも言える行動であった。
「お前達、、俺を侮辱しているのか!俺を逃す為にここに戻ってきた?それで俺が喜ぶとでも思っているのか!」
「わかっています!エルサリオン様が納得いかないというのも、怒るのも!わかっています!」
イグゼキュタは涙を流しながら必死に話していた。
それを見てエルサリオンも少し落ち着きを取り戻した。
「でも!それでもエルサリオン様には生きていてもらわないといけないのです!」
「俺1人が生きたところで何もならないだろう」
「エルサリオン様とアルフィリオン様が生きてさえいればエルフ族はまだ種族として生きていけます!今ここでエルサリオン様を失えばそれこそエルフ族の終わりなのです!だからどうか、どうか、、」
イグゼキュタはエルサリオンの足に縋り付くように下を向いて説得していた。
そして、その話を聞いたエルサリオンは決断する。
「、、わかった。お前についていこう」
「ありがとうございます!では、こちらに!」
「待て。行く前に母上と父上のところに行って安否を確認したい。一度家に戻る事は出来るか?」
自分の為に時間を稼いでくれているイズレンディアとイグゼキュタの事を考えるとすぐに逃げないといけないのはわかっていた。
だが、エルサリオンは家族を置いて逃げる事は出来なかった。
その言葉を聞いてイグゼキュタは顔を曇らせる。
「ここに来る前にエルサリオン様の家に行ったのですが、エドラヒル様とララノア様の姿はもうありませんでした、、今何処にいるかもわかりません、、」
「なん、、だと?」
エルサリオンは一瞬思考が停止した。
「家にはいませんでしたが、逃げたエルフの中にいるかもしれません!」
「俺達以外にも逃げれたエルフがいるのか?」
「はい!私達イグゼキュタ先導の元、2000人程はアルフヘイムから逃げる事が出来ました!家にいなかったとすると、そこにいる可能性があります!」
「、、そうか」
(だったらそこに母上と父上、エルノールもいる事を信じるしかない、、か。頼むからいてくれ!)
「エルサリオン様、、」
イグゼキュタが心配そうにエルサリオンを見る。
「すまない。わかった。そこにいる事を信じよう」
「ありがとうございます!でしたら今すぐこの場を離れましょう!」
「あぁ、、」
エルサリオンはイズレンディア達が足止めをしてくれているマモンの方を振り返ると、そこはもう惨劇になっていた。
もう何人ものイグゼキュタが地面に倒れていて、血の海と化していたのだ。
イグゼキュタとマモンでは圧倒的力の差があるにも拘らず、なぜマモンを足止めできていたかというと、イグゼキュタの使う魔法にあった。
「くそ!なんだこれは!鬱陶しい!」
イグゼキュタは法の番人で、その仕事は拘束にある。
なのでイグゼキュタの魔法は拘束に特化した魔法で、絶大な力を持つマモンであってもそれから簡単には逃れられなかったのだ。
だが、それと同時にイグゼキュタ側もマモンを倒す術は何もなく、その場に留めておく事しか出来なかった。
それでも少しずつイグゼキュタはマモンにやられていったが、イズレンディアは辛うじてまだ生きていて、エルサリオンが振り返った事に気付くと、笑顔でこちらを見ていた。
「すまない。イズレンディア、、」
エルサリオンは唇が切れて血が出るほど唇を噛み締めていた。
その時、マモンもエルフ側が何をしたいのか理解した。
「おい!エルサリオン!お前は自分の配下を見捨てて逃げるのか?お前はその程度の奴なのか?よくそれでエルフ最強の戦士と名乗れたなぁ!」
マモンはエルサリオンが頭に血が昇って戻ってくるように、エルサリオンを煽った。
そしてエルサリオンはマモンの思惑通り足を止めた。
「エルサリオン様!」
「、、そうだな。俺はエルフ最強の戦士と名乗るに相応しくない。そんな事自分が1番わかっている」
足を止めたエルサリオンはマモンの方に振り返り、怒りと悲しみが混じった感情で涙を流しながら言い放つ。
「だから待っていろ。いずれ再びこのアルフヘイムに戻ってくる。お前より強くなってお前からアルフヘイムを取り戻す為に!」
エルサリオンはイズレンディアやイグゼキュタを助けたいという気持ちを押し殺して翼を広げた。
「おい!待て!逃げるのか!」
もうマモンの言葉はエルサリオンには届かなかった。
絶対にもう一度この場に戻ってくる。犠牲になった同志の為にも絶対にアルフヘイムを取り戻す。
そう決意をしてその場を飛び立ったのであった。
エルサリオンの決意。
それは固く決して裏切れない決意だった。




