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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
103/106

EpiSodE103:逃げる覚悟と逃げない覚悟

 エルサリオンとマモンの戦いも佳境に差し掛かっていた。


 シュッ


 エルサリオンの頬に傷が付く。


 「!?」


 エルサリオンは何が起こったのかわからず、傷が付いた方を振り返る。


 「なんだぁ?その反応は。この程度の動きが見えないのか?」

 「・・・・・」


 エルサリオンは全く見えていなかった。

 しかも今のマモンの言い方だとまだ本気で動いてすらいないような言い方だった。


 「エルサリオン様!」


 そう呼んだのは家臣のイズレンディアだった。


 「イズレンディア?なんでこんなところにいるんだ!」

 「エドラヒル様に言われて、昨日の夜から長老様のところにお世話に来ていたのです!」

 「そうだったのか。なら、、イズレンディア!」

 「はい!」

 「長老の護衛を頼んだぞ!」

 「わかりました!エルサリオン様は、、まさか!」

 「俺はこの悪魔の足止めをする。足止めになるかどうかわからないがな」


 イズレンディアはわかった。

 エルサリオンが自分と長老を逃がす為に犠牲になろうとしている事を。


 「エルサリオン様!あなた私達の為に犠牲に、、」

 「違うぞ、イズレンディア。犠牲になる気など更々ない。こいつを倒して俺も後で合流する。だからこっちは大丈夫だ」


 イズレンディアも先程のエルサリオンがマモンの攻撃に全く反応できていないのを見ていた。

 あれを見てしまってはどう考えてもエルサリオンがマモンに勝てる見込みがないのがわかっていた。


 「ですが!」

 「行けと言っているだろう!これは命令だ!」


 エルサリオンがイズレンディアの言葉を遮って叫んだ。


 「、、わかりました、、」


 イズレンディアは唇を噛み自分の無力さに怒りを覚えた。


 「エルサリオン様!ご武運を!」

 「、、あぁ」


 そしてイズレンディアがアルフィリオンを抱えて飛んで逃げていった。

 それを見ていたマモンは。


 「もういいか?」

 「あぁ。いいのか?逃げるのを見逃して」

 「俺はお前に興味があってここに来たんだ。他はどうでもいい。それとも追って殺した方がいいか?」


 マモンは興味の湧いたものにしか関心がなく、他はどうでもいいと思っていた。


 「いや、見逃してくれるなら助かる」

 「はは。俺の気分に感謝するんだな」

 「、、お前は仲間の敵討ちで俺のとろこに来たんじゃ無いのか?」

 「あ?そんな事の為にこんなところまで来るかよ。配下の変えなんていくらでもいる。俺は悪魔を倒したお前に興味があって来たんだよ」


 マモンは何処までいっても自分の欲求を満たす事しか考えていなかった。

 それは悪魔の中でも強欲を司る悪魔のため、自分の欲求が最優先で、それを満たす為なら殺す事もなんとも思っていなかった。

 今回も悪魔がエルサリオンに殺された事などどうでもよかった。

 ただ単に悪魔を殺したエルサリオンがどれ程のものなのか気になっただけであった。


 「、、それは悪魔全員がそうなのか?全員が仲間の事をなんとも思ってないのか?」


 エルサリオンはいつもより数段低い声でマモンに問う。


 「どうだろうな。他はわからないが、俺の配下は大体そうだろうな。俺が配下の事は仲間とは思った事がないからな。あいつらも俺を見ているから仲間意識とかそういうのはないだろう」

 「だったらマモン、お前の仲間は何処にいるんだ?」

 「お前、今の自分の立場を理解して喋れよ?俺がお前の問いに答える必要がない事くらいお前でもわかるだろう」


 マモンの言う通り、今のこの状況でマモンがエルサリオンの質問に答える必要は全くない。

 何故ならエルサリオンよりもマモンの方が圧倒的に強いからだ。

 強い者が弱い者の質問に答えるのではなく、弱い者が強い者に質問して答えるのが普通であった。

 それはエルサリオンも理解していた。


 「、、答えてはくれない、という事か。すまない、ただの好奇心だ」


 少しの沈黙のが流れた後、マモンが口を開けた。


 「まぁいい。俺の配下を倒した褒美としてそれくらい教えてやろう。俺が仲間と思っているのは同格の悪魔だけだ。それ以外はただの道具だ」

 「お前と同格、、さっき言ってた七大悪魔という事か」

 「そういう事だ。さぁもうお喋りはいいだろう」

 「後一つだけ!頼みがある」


 戦いを再開しようとしたマモンにエルサリオンが何か覚悟を決めたような顔だった。


 「おい、さっきも言ったがお前は何かを頼めるような立場じゃないって、、」


 マモンの言葉を遮ってエルサリオンが叫ぶ。


 「俺の!俺の首だけで許してくれ。俺はエルフ族の中でも最強の戦士と呼ばれている。その俺の首をやるから、このアルフヘイムは見逃してくれ」


 マモンはエルサリオンの言葉に呆れ、怒りを覚えた。


 「お前は何を勘違いしている。俺はお前の首が欲しいんじゃない。お前に興味があってここに来ただけで、目的はこの場所を奪う事だ。もちろんお前の首ももらうが、その後ここももらう。お前達に選択肢なんかない」

 「・・・・・」


 エルサリオンはずっと下を向いて黙っていた。

 この悪魔にどうやって勝ったらいいか、どうやったらアルフヘイムを守れるか全くわからなかったからだ。

 その時、何かがぶつかる音がして顔を上げた。

 そこにはエルサリオンには信じ難い光景が目に飛び込んできた。


 「お前は、、さっき飛んで行ったやつだな」

 「エルサリオン様!大丈夫ですか?」


 そこにはマモンに攻撃を仕掛けるイズレンディアがいたのだ。


 「何故お前がこんなところにいる!お前は長老と逃げたはずだろう!」

 「エルサリオン様を置いて逃げれるわけがないでしょう!私はあなたの家臣です!私が死ぬ事があっても主人より後に死ぬ事はしません!ましてや見捨てるなんてあり得ません!」


 イズレンディアは初めてエルサリオンの命令を無視した。

 どんな命令であろうと従ってきたイズレンディアだが、主人であるエルサリオンを見捨てる。そんな命令に従えるわけがなかった。

 それでもエルサリオンは納得していなかった。

 何故ならイズレンディア1人が来たところで状況は何も変わらなかったからだ。


 「お前1人が来てもなんの助けにもならない事くらいわかるだろ!」

 「1人じゃありません!」

 「1人じゃない?」


 イズレンディアの後ろにはエルサリオンが見慣れた顔のエルフ達がいた。


 「お前達は、、」

 「エルサリオン様!私達はこの時の為にエルサリオン様に鍛えて頂いていたと思っております!」

 「おこがましいかもしれませんが、私達も助力させて下さい!」


 そこにいたのはエルサリオンがずっと鍛え続けた精鋭、イグゼキュタの面々だった。


 「何故なんだ、、何故お前達は逃げなかった!」

 「私達もイズレンディアさんと一緒です!師匠であるエルサリオン様を置いて逃げる事なんて出来ません!」


 イズレンディアとイグゼキュタ達は一つの決意を持って戻って来ていた。

 どんな決意をしたのか。それがわかるのはもうすぐの事であった。

エルサリオンを見捨てる事なんてできなかった。

これからアルフヘイムはどうなっていくのか、、

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