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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE100:襲撃の夜

祝!100話目!

 その日は夕食の場でもエルノールのこれからの意気込みを聞く場となっていて、何度も何度も同じ話を繰り返していた。


 「エルノール、その話もう何回目だよ」

 「兄上!何回でもしたいんです!それくらいやる気に満ち溢れていますから!」


 エルサリオンがツッコミを入れるが、そんな事は関係ないと言わんばかりにエルノールは話を続けていた。


 「まぁ向上心がある事はいい事だな。俺の方が強いが」

 「これから兄上よりも強くなるんです!今に見てて下さい!」

 「無理だよ。俺もこれから本気で鍛えるからな」


 まだ負けたわけではないのにエルノールはもう負けた気になってしまった。

 それはエルサリオンもわかって、エルノールに話を続けた。


 「お前の決意はその程度だったのか?俺が無理と言ったら諦めるのか?」


 エルサリオンの問いにエルノールは真っ直ぐエルサリオンの方を見て答えた。


 「違います!僕は本気です!絶対に兄上よりも強くなって見せます!」

 「そうか。じゃあこれからが楽しみだな」


 エルサリオンは少し口角を上げて笑った。


 「よし、じゃあもう明日も闘技場での稽古がある。早く寝るぞ」

 「はい!兄上!母上、父上、おやすみなさい!」

 「あぁ、おやすみ」

 「エルノールちゃん、おやすみなさい!」


 そして、エルサリオンとエルノールが寝た少し後にララノアとエドラヒルも眠りについたその頃、アルフヘイム全体の街灯も消え、静まり返っていた。


 「この5階層ではあの空中都市アルフヘイムを奪うぞ」

 「はい!かしこまりました!」


 そんな静まり返ったアルフヘイムを奪おうとする者がいた。

 それはもちろん、七大悪魔であり強欲の悪魔マモン率いる悪魔の軍団だった。

 マモン達はアルフヘイムより更に上空からアルフヘイムを見下ろしながらその時を待っていた。

 そして、、


 「作戦開始だ。いくぞ」

 「は!」


 マモン率いる悪魔の軍団、総勢5万がアルフヘイム侵略に動き出した。

 それにいち早く気付いたのはエルフの中でも特殊な魔法を使うハイエルフだった。


 「あなた、あなた!何か来るわ!」

 「どうしたんだ、ララノア。来るって何が来るんだ?」


 その魔法とは未来予知による危機察知能力。

 そしてその使い手とはエルサリオン達の母、ララノアだった。


 「わからない、、でも今まで一番寒気がしたの、、このアルフヘイムに危険が迫ってる!」


 そう話すララノアの顔はいつもの優しい母親の顔ではなく、青ざめて怯えている顔で、体も小刻みに震えていた。


 「、、わかった。エルサリオンとエルノールも起こしてこよう」


 ララノアはもはやエドラヒルの声も届いてなく、ずっと下を向いたまま震えていた。

 そんなララノアを優しく抱きしめるエドラヒル。


 「大丈夫だ。俺達に任せろ。エルノールが言ってたろ?アルフヘイムを守る為に強くなってきたと。俺やエルサリオンもそうだ。この時の為に強さを身に付けたんだ。だから安心しろ」


 ララノアはエドラヒルの言葉で落ち着きを取り戻した。


 「わかったわ、、いきましょう」


 何か決意をしたような表情になったララノア。

 その真意がわかるのはもう少し先の事だ。

 そしてエルサリオンとエルノールを呼んで家族会議を始めた。


 「母上、父上、こんな時間にどうしたのですか?僕もう眠くて仕方ないんですけど、、」

 「・・・・・・」


 エルノールは目を擦りながらなんとか起きようとしていたが、エルサリオンは座りながらほとんど寝ていた。

 だが、次のエドラヒルの一言で2人とも一気に目が覚める。


 「アルフヘイムが危険に晒されている」


 エルサリオンとエルノールが目を見開いた。


 「き、危険に晒されているってどういう事ですか?何かあったんですか?」

 「エルノール、落ち着け。父上、母上の能力ですか?」


 エルサリオンは母、ララノアの能力だと気付いていた。

 こういうところは流石エルサリオンと言える。


 「、、あぁ、そうだ。母さんの未来予知がアルフヘイムの最悪な未来を予知した」

 「・・・・・・」


 いつも元気で笑顔なララノアがずっと下を向いて黙っていたが、やっと口を開けた。


 「もうその時は近くまで来てる、、予知だと今日このあとすぐ、、」

 「このあと、、すぐ、、」


 驚きの表情をするエルサリオンの一方でエルノールは、、


 「このあとすぐだったら早く行かないといけないじゃないですか!この為に僕達は鍛え、強くなったんです!」


 迫り来る謎の敵に対して早く対処しないとアルフヘイムが危ない。

 その当たり前の事は誰しもわかっていたが、口にする事はなかった。

 何故ならその脅威が未知数だったからだ。

 ララノアに関しては未来予知で見た光景が頭から離れなかった。


 「まぁそうだな。今どんな相手か考える事よりもアルフヘイムを守ることの方が大事だな。母上、その敵はどこにいるんでしょうか?」

 「、、それを言わなきゃ、、ダメ?」

 「?、、どういう事ですか?」


 エルサリオンとエルノールはララノアが何を言っているのか意味がわからなかった。

 場所を言わないといけないかどうかなんて聞くまでもない事だ。

 一方でエドラヒルはララノアが言っている事の意味を理解していた。

 これにはエドラヒルとララノア、エルサリオンとエルノール、この2組の決定的な違いがあった。

 それは親と子という事だ。

 エドラヒルももちろんだが、ララノアは特に2人の子を愛している、愛しすぎていた。

 その為、そんな危ない場所に我が子を送り出したくなかったのだ。


 「母さん、、」

 「、、ごめんなさい。何でもないの」


 ララノアは誰でもわかるような作り笑いで言葉を絞り出した。

 その表情を見てエルサリオンもどういう事なのかわかった。


 「母上、心配してくれてありがとうございます。でも俺達じゃなかったら、その敵を倒せないかもしれない。俺達は大丈夫だから安心して下さい」


 その言葉にララノアは涙を流し、エルサリオンとエルノールを抱きしめた。

 そしてエドラヒルに見せた時とはまた違う決意を固めた顔をしていた。


 「じゃあまずは居場所だけど、信じられないかもしれないけど、この上にいたの」

 「上ですか?上というのは何処ですか?」

 「アルフヘイムの上空よ。そこに数えきれないくらいの悪魔?のような人がいたわ」

 「そんなところに悪魔が!?」


 エルノールは驚きの表情を浮かべていて、エルサリオンは終始落ち着いていた。


 「エルノール、行こうか」

 「はい!」


 そう意気込んだ瞬間それはやってきた。


 ドォーン!


 アルフヘイム住人の全員に衝撃が走る。


 「くそ、もう来たのか!」


 エルサリオンの特筆すべき才能は戦闘もあるが、特にこの状況判断力がズバ抜けていた。


 「エルノール!いくぞ!」

 「はい!兄上!」


 さっきとは違って、2人とも本気の表情だった。

 ついに悪魔がアルフヘイムに攻めてきた。

 ここからがアルフヘイムの悪夢の始まりであった。

悪魔の襲撃。

楽しい日々は一瞬で崩壊する。

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