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7.各国の対応

 


 新世界歴1年1月3日、ロシア共和国 首都ウラジオストク 大統領官邸


「日本との距離が遠いなぁ〜」


 ロシア共和国軍や在露米軍との協力により作成された地図を見ながら部屋の主は残念そうに言った。

 大統領の言葉に部屋の中に居る閣僚達も激しく同意しており、この国が如何に日本頼りだった事が窺える。


 そもそもロシア共和国はロシア革命とそれに伴う内戦で共産主義に反発する者達、白軍を日米英が上手く極東に集めた事で誕生した国家である。

 そんな経緯からロシア共和国は日本に経済から安全保障まで深く依存しており、同じ日米英の支援で誕生した満州連邦共和国や生き残った中華民国との違いだった。

 日本としては当時の中華人民共和国よりソ連を脅威と見ていた為、ロシア共和国を支援し、他の2ヶ国は支援こそしたものの、その殆どをアメリカに任せていた。


「距離で言いますとイギリス本土まで約7000km、日本本土まで約7500kmになります。」

「間宮海峡トンネルは完全に水没して居ますが死傷者はいません。」


 日本領樺太とロシア共和国は海底トンネルで結ばれており、ロシアから日本まで陸路で行けていたのだが、もう陸路で行く事は出来ない。


「アメリカが何処かの国に攻められたそうじゃ無いか?在露米軍が撤退する可能性は?」

「現時点では不明ですが、恐らく撤退はしないかと思われます。」


 ロシア国内には多数のアメリカ企業が進出しており滞在しているアメリカ人も多く居る為撤退はしないと推測する国防大臣、在露米軍の殆どは空軍戦力で有り陸軍は満州に配置されている。

 ただ、ロシア共和国としては自国の空軍力と同等規模の在露米空軍の撤退だけは勘弁して欲しい。

 一応、アメリカや日本とは軍事同盟を結んでおり、ソ連軍により侵攻されれば日米はロシア共和国を防衛する義務があるが、世界そのものが変わった今は分からない。


「しっかし日本にイギリス、それとスカンディナビアか・・・海軍力2位と3位が近くになったな。日本が今交渉中のスフィアナとかいう国家もかなりの海軍力を有すると報告書に書いてあったな。」


 もし昔から日英が現在の位置ならば間違いなくどちらかが(多分日本)、片方を征服していただろうから海軍力2位と3位が隣り合わせにはならないだろうと思う大統領だが、史実のアイルランド島を見ると案外分裂しまくってそうではある。

 別に同じ民族で分裂してる国家もあるしね。


「スフィアナとの交渉に関しては日英間で日本に優先権があると決まっているそうなので我々が今口を挟む必要は無いかと。」

「日本が上手く行ってから日本に仲介して貰うのが無難かな?」


 日本が離れた事での経済の穴埋めとしてスフィアナを活用する気なのだが、国が3つな事を除けばアメリカ並みの国力と経済力と人口を有した消費地が現れたような物なので、資源・穀物輸出が軸のロシア共和国としては非常に有難い。

 経済大臣としてはスフィアナと現在交渉中の日本の外交官達に対し上手く行く事を祈らざるを得ない。


 ちなみに日英間でのスフィアナに対する交渉優先権に関しては日本がイギリスに対し工作機械や素材の貿易再開時期延期をチラつかせたとからしいと言うのは風の噂。

 だって逆はあっても日本がイギリスから入って来ないと困る物なんて無いしね!!


「それよりもソ連軍だよ、後ろ盾が無い今彼等が侵攻してくるかもしれん。最悪は人民解放軍と連動する可能性だが、アイツら関係悪いしなぁ。」


 そう言いながら大統領は国防大臣にソ連との国境地帯の軍備を増強するように指示を出して下がらせた。

 ソ連とロシア共和国はバイカル湖で分裂しており、ソ連はロシア共和国への侵攻姿勢を独立時から隠そうとしない。

 今でこそロシア共和国軍はそれなりの戦力を有しているが、ソ連とは比べ物にならない。

 日本やアメリカの後ろ盾が無ければとっくに攻め滅ぼされてただろう。


「アメリカとは更に離れたし、まずは日本かな?」


 そう言って大統領は日本との首脳会談の準備をし始めた。

 その後、同じく日本からの支援を期待した中華民国や大韓民国、満州連邦共和国からも首脳会談の要請が日本に届いたのであった。







 新世界歴1年1月3日 アメリカ合衆国 フロリダ州上空


 フロリダ州南部に出た避難命令により混雑しているフロリダ上空を窓が殆ど無いグレーの機体が悠々と飛行していた。


「いきなり本土侵攻ってどう言う事だよ!?」

「防衛計画が根本的に崩壊してるよなぁ・・・」


 スタート・ハイウェイ9336を隊列を組んで進む敵戦車部隊を見ながら発狂してるのはアメリカが誇るお爺ちゃん爆撃機の『B-52』のパイロットである。


 そもそもアメリカは本土が侵攻されるなど一切考えていない国である。

 北には一緒にNORAD(北アメリカ航空宇宙防空司令部)を編成し、領空警戒を共有化する程仲が良いカナダ、南には移民問題はあっても攻めてくる軍事力が無いメキシコが位置し、そもそも本土侵攻とは無縁の地理に位置するのがアメリカ合衆国である。

 なので今回の状況はアメリカ合衆国軍上層部からすれば発狂物であった。


「陸軍と海兵隊は大慌てでフロリダ州に向かってるようだな。」

「陸軍ね、色々と大丈夫かな?」


 そう言ったパイロットの表情はどこか不安そうだった。

 近年は増額される海・空軍と海兵隊とは対照的に陸軍の予算は削減傾向にあった。

 それでも諸外国と比べると最新装備を保有しているのは流石米軍だが、海・空軍程の実力は望めないだろう。


「目的地上空に到達、これより攻撃侵入を開始する。高度4000まで降下。」


 既に敵部隊はホームステットの街まで残り50kmを切っている。

 ホームステットの街との境界付近にはフロリダ州兵を始めとした部隊が展開しているが、速度を重視して来たのでその装備は軽装備で、とても戦車を有した機甲部隊と戦闘出来るようなものでは無い。

というよりも数が少ない。


「攻撃目標へのコースへ侵入しました。」

「了解、ハッチ解放、爆弾投下準備。」


 今回の爆撃目標は敵部隊では無く、スタート・ハイウェイ9336、言わばただの道である。

 投下するのは誘導爆弾なのだがGPSが使えないので、結局は無誘導爆弾と同じく爆撃地点付近にばら撒くだけである。


「投下開始。」

「了解、投下します。」


 ウェポンベイの中で固定されていた500lb爆弾が次から次へと投下されていく。

 この爆弾を敵部隊に投下出来たら幾分か、地上の味方陸軍部隊が楽になりそうだが、道路に投下するのが今回の目的なので従わなくてはならない。


「48発全弾投下完了。」

「たかだか二車線道路破壊するのに過剰戦力だよなぁ。」

「みんな思ってんだから言うな。」


 実は大量にある500lb爆弾の在庫処理という事を知らない彼等はそんな事を言いながら帰投して行く。

 その後も6機のB-52が計100発以上の爆弾を投下、スタート・ハイウェイ9336を1km以上に渡って焦土にした。

 もちろん国立公園の一部を破壊するこの作戦は後で環境保護庁から猛抗議が来たのは言うまででもない。






 新世界歴1年1月3日 日本連邦国 首都東京 国土交通省 運輸安全委員会


「はぁ、俺らの三ヶ日・・・」

「俺も台湾に旅行しに行く筈だったのに・・・」

「飛行機なんて軍以外飛んで無いよ。」


 衛星を全て喪失した事で様々な混乱が発生しているが、その1つがGPS衛星による航空機の墜落事故である。

 日本1ヶ国だけで100機近い旅客機が墜落したのだ。


 その為、国土交通省の外局の1つである運輸安全委員会は全職員呼び出しの下、職員総出で事故の原因究明に勤しんでいた。

 まぁ、全て『GPS衛星の喪失による自動操縦システムの破綻』が事故原因として終わらせる事が出来るのだが、機体によっては市街地に墜落して数万人規模で死傷者が出ているなど、様々な調査はしなければならない。

 最も、調査よりも先に救助の方をやらなければならないのだが・・・


「俺達だけでこの仕事終わるのか?数百件だろ?」

「軍や警察、消防まで総動員している現状は無理だな。」


 彼はこれから更に増えるであろう仕事にゲンナリしながらも終わらない仕事に取り掛かるのであった。

 彼等に暇な時などは無い。



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