1.勇者は転移先を選べない
今、異世界にいる。
ちょっと前に猫を助けて車に轢かれた俺、篠原悠斗は、気が付いたら光の渦の中を漂っていた。
その最中、
『まだ死ぬときではありません…』
という優しい女性の声を聞いたのだ。この流れだと、きっと女神様だろう。女神は続ける。
『貴方のその気高い魂で、とある世界を救って欲しいのです』
猫ちゃんを助けたくらいでこんな褒められたら断りにくい。
いや、確かに猫ちゃんは崇高な存在なのだが。
「いいですけど…その…能力というのは、どんなものか選べるんですか?」
『………何か、希望がありますか?』
「そうですねえ……最強の魔力で無双してみたいかなあ。いや、やっぱり魔力よりも美少女にモテる能力みたいなのが欲しいですね」
『………………』
「まずは巨乳のお姉さんが良いかな、あとはロリっ娘と眼鏡っ娘と…ヒロインは王道のツンデレ美少女で…」
『…分かりました。それでは貴方には、美少女の仲間が出来る様に差配しましょう』
女神様の変な沈黙で、ついつい欲を出した事を後悔した。
ここで女神様に嫌われるのは得策ではない。今は姿が見えないが、展開によっては美少女になって後々助けてくれるかもしれない。
「いやっ、すみません。無理にとは言わないんで!その世界を救うためにちょっと役立つスキルさえあれば大丈夫です。ははは」
『…貴方は面白い方ですね。それでは貴方にはカルムガルドの女神の加護を与えましょう…』
女神が一瞬クスリと笑った気がした。そして、やや柔和になった声と共に、周囲の光が一層強くなる。
『さあ、篠原悠斗よ。今からかの地、カルムガルドへと送ります。その人柄と才能でカルムガルドを救うのです…』
…とまあ、こんな感じでこの世界にやってきた。
のだが。
辺りは何やら巨大な骨やら皮やらゴミが山積みになっている。
1度も晴れたことの無さそうな曇天の下、このゴミ山は辺りに延々と広がり、ボロボロの服を着た奴らがゾンビの様にうろつき何かを漁っている。匂いもロケーションも今すぐ気絶して2度と目を覚さずに次の人生に移りたくなる様な最悪な場所だ。
異世界って、こんな世紀末な感じで良いのか?もっと最初から剣と魔法みたいな雰囲気に満ちてないのか?少なくとも西洋風の緑とか可愛い低レベルモンスターみたいな要素があっても…
その時。俺は後ろから何者かにがっしり肩を掴まれた。
「おうおう、久々の転移野郎だぜ!」
「エルダムガルドへようこそ!新たな勇者さま!ギャハハハハハ!!!!」
そいつらは大声で野蛮に笑いながら…その後は記憶が無い。誰かが俺の頭を殴った様だった。
エルダムガルド?
「カルムガルド」じゃないの?