転生者さんいらっしゃい
あらすじ
ひょんなことで死んでしまった僕 マサルは、
気が付くと知らない世界の草原に寝転がっていた。
あたり一面の草原が広がっている。
人類の文明が及んでいない、世界そのままの姿が広がっている。
「・・・これはあれか。ウワサの異世界転生ってやつか・・・」
死んでしまったこと自体は嘆かわしいことであるが、正直元の世界は嫌いであった。
生前ゲームが好きだった僕にとって、そんな世界に来られたということは不幸中の幸いだったかもしれない。
前向きに考えよう。余生をラノベらしく過ごそうじゃないか。
気が楽になった僕は、テンプレに沿うことにした。
このテの物語なら、町へ向かってギルトを探せばいいはずだ。
はて、どっちに向かえば・・・
「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
女の子の悲鳴が聞こえる。
これはアレか。ヒロインか!?
僕は颯爽と救出に向かった。
涼しい風の中、野菜鍋は既にリンスの興味から外れていた。
健康にいいと無農薬野菜を拝借した二人だったが、水につけたとたんに小さな虫が湧きだした。
魔法使いなら虫くらい平気だと思うかもしれないが、リンスは年相応に虫嫌いであり、それが仮にも今から胃に入ろうとするものから溢れ出したら、食欲なんてものは減退するものだ。
可愛らしいとは呼びづらい悲鳴を上げ、涙目のリンスは虫の浮く鍋から視線を外していた。
「わかった。 俺が食うよ。」
ワン公がぺろりとたいあげると、軽めの潔癖症のリンスはその無頓着ぶりに若干引きながらも、虫鍋という脅威が去ったことに安心していた。
「うわっ 底にビッシリ張り付いてら。」
「ぎゃあああああああああ!!!!」
見つけた!魔法使いらしい女の子が犬のようなモジャモジャしたモンスターに襲われている!
僕は力の限りを振り絞り、女の子ににじり寄るモンスターにとびかかった。
ゴロゴロゴロ・・・!
モンスターと絡み合いながら草原の上を転がっていった僕は、口から異臭の漂うモンスターの上を取った。
と、次の瞬間・・・
ゴォン!
頭部に鈍器のようなもので殴られたような衝撃が走り、僕は意識を失った。
「いてて・・・サンキューな、リンス。」
「いいってことよ。にしても、ヒビでも入ってくれれば、大義名分の上で捨てれるんだけど・・・ホント、忌々しい鍋ね。」
「しっかり洗っといてやるよ。・・・で、こいつは何だ?」
そこには、黒髪の地味な男が横たわっていた。
「恐らくよそ者ね。人間至上主義団体には見えないし・・・きっと転生でもしてきたんでしょう。」
「まったく、迷惑な奴だ。わからせてやらないとな・・・。」
次に目が覚めると、僕の体は縛られていた。・・・亀甲縛りなのは謎だが、状況は飲み込めた。
「M向けエロ小説だったか!」
「違う! ・・・その言語。やっぱりあの世界の出身者ね。」
「・・・あの、状況を教えてもらえるとありがたいんですが・・・」
マサルの顔に不安が宿る。
リンスはめんどくさそうに説明を始めた。
「ここはアナタが思っているような世界じゃないの。経験値もなければ、ステータスオープンなんてこともできない。」
そう言うとリンスは、マサルの脳内を覗いた。
「よく聞いて、マサル君? アナタの思うモンスターってやつは、ガッツリ人権を持っているの。だから、むやみに殺すと処刑されるわよ。」
「じゃあ、魔王を倒すとかは・・・」
「魔法学大臣相手にテロを起こすってこと。 もちろん重罪。」
「じゃあ、僕はどうすれば・・・」
「転生者保護センターにでも行きなさい。 テレビゲームで遊べるわよ。」
マサルは落胆した様子だが、リンスは気にも留めなかった。
「まあ、気楽にいきましょう。 頑張ってね。 国税庁で会ったら見逃してね。」
マサルは困惑したが、勇気を出して聞いてみることにした。
「あの・・・ついていってもいいですか?」
「ヤなこった。」
何ということだ。犬がしゃべった。
「このまままっすぐ行けば、アナタの知る世界によく似たところに出るわ。 途中にある大きな壁みたいなものは、事情を話せば通してくれるはず。 じゃ!気を付けて!」
女の子はそう言うと、ズリズリと犬ぞりで行ってしまった。
マサルは草原に一人、ポツンとたたずんでいた。
マサルは、思ったより偉大ではない一歩を踏み出した。
Good Luck MASARU!