お供サンジョウ!
あらすじ
世界を変えるために歩き始めたリンス。
するとそこに、お供を志願するものが現れる。
「魔法使い」というものは、様々な方面から嫌われている。
動物の知能を上げたことで、動物愛護団体は目の敵にしているし、
動物たちも「誰がこうしてくれと言った」と敵意を見せている。
また、「魔法」という言葉が使いづらくなったと歌手や、
イメージと違うと文句をつけてくる旧・ケモナーのみなさん。
冒涜だと言う宗教家や、
泥棒だと化学者など、
他にもかなりいるが、とにかく魔法使いは嫌われていたのだった。
嫌われ者のウワサは回るのが早く、リンスが旅に出たことは既に動物たちの間では周知の事実となっていた。
「おーい! リンスー!」
遠くから犬が駆け寄ってくる。
ボサボサの毛並みのこの犬は、リンスが小さいころから親しくしていた犬であった。
「お前さん、旅に出るんだってな!
俺をお供にしてくれないか?」
リンスは、忠誠心溢れる申し出に心奪われかけたが、つい先ほど動物とトラブルがあったため、変な警戒心を持っていた。
「お供?」
「相棒でもいいぜ」
「部下よ。 それでもいいならついてきなさい」
かなり失礼なことをした。
仮にも、自分を慕っている者への対応と呼ぶには酷いものであったが、
「いいぜボス。 リンスって呼んでもいいか?」
泣かせる返事である。
犬は忠誠心が高いと聞いてはいたが、まさかこれほどまでとは。
「いいわよ。
・・・ありがとう。
ところで、アナタのことは何て呼べばいいかしら?」
「別に何でもいいが、そうだなぁ・・・
昔みたいに「ワンコ」とでも呼んでくれ。」
「ワン公ね。 了解。」
最強タッグの完成である。
こういうのは気持ちの持ちようなんで、最強と言ったら最強なのだ!
「さあ、先は長いわ。
行きましょう!」
「よっしゃ! バッチこいだ!」
「・・・ところで、この荷物を持って欲しいんだけど・・・」
「いいぜ。 まかしとけ。」
「あと、足になってほしいの」
「・・・それは何だ?」
「犬ぞりよ。」
「車輪は?」
「ないわ。」
「ここ、草原だぞ?」
「そうね。 さあ、行きましょう!」
ワン公は部下になったことを少し後悔した。
つづく