迷惑な訪問者
遠いようで近い世界―
魔法が科学分野の一つとして認められるも、
まだそれほど人々の生活に影響を与えていない時代のこと―
手品師という職業や、いわゆる「魔女っ娘アニメ」といったものが姿を見せなくなって早数年。
「魔法使い」を自称する女の子、リンスは、人里からかなり外れたド田舎に動物たちと住んでいました。
―動物たちといっても、みんな人語を話せるけどね。
「コッケコッコォォォォォ!!!!!!」
日の出前の世界に騒音が鳴り響く。
「―インターフォンくらい知ってるでしょうが・・・」
この物語の主人公 リンスが眠い目をこすりながら玄関を開けると、そこには立派なトサカを持った鳥類がたたずんでいた。
「やっと起きたか寝ぼすけめ。それとも卵でも産んでいたのか?
貴様らサルの一人天下は終わったんだ。
こっちの都合にも合わせてもらわなくちゃな。」
目の前の鳥類は流暢に話してきた。
来たよ。種族差別にセクハラのフルコース。ここ最近毎朝やってくる。
何でも、動物たちの地位向上を訴えたいらしい。
で、ホモサピエンスの私に毎日色々と同じようなことを言ってくるのだが、お門違いなんで勘弁してほしい。
鳥類がうだらうだらと何か言ってるが、もう嫌だ。
ストレスのせいかカッとなった私はつい口走って、
「わかった! アタシが何とかするわよ!」
・・・言ってしまった。
人間(この世界では一定以上の知能がある生物全てをそう呼ぶが、この場合はホモサピエンスのこと)が動物相手に約束事をした場合、必ず守らなければならないという法律がある世界で、動物相手に約束事をしてしまった。
目の前の鳥類は突然のことにあっけにとられるも、自分の要望が通ったと理解するや否やコケコケ鳴きだした。
さあ、大変なことになったぞ。
この世界の人々の思想概念を変えなければ、私は犯罪者となってしまう。
14才の小娘に、年不相応の重圧がのしかかる。
―とりあえず朝ごはんを食べよう。
そう思い、リンスは玄関扉をゆっくりと閉めた。
つづく