2 ヘーベ学園というところ。
「桃野さーん」
やっとの思いで下の広いステージ会場まで着いた。
父に手を振られた。その顔つきは私がいつも一緒にいる父の顔つきではなかった。
父はいつもはああいうスタンスなのか。
本当に理事長って感じで、いや理事長には変わんないんだけどさ、
なんというか本当に赤の他人なんじゃないかな。そう思ってしまう自分がいた。
手を振る父に回りの女子はキャーキャー言う。
父は歳とは対照にすごく若くみえる。私と歩いてたら「お兄さんですか?」とかしょっちゅう言われる。
三十半ばの人がよく二十代半ばがとか言われるほどにな。
若くみえるうえに童顔で顔が整っている。要するにか女子からモテるのだ。
それとは別に彼は理事長として信頼も厚いらしい。
そりゃあそうだ。幼当部からここにいたら学園のトップである理事長はみんなの父も当然。
案内がされるがままに私は端の席で父が理事長としての挨拶やら立ち姿をみていた。
本当に別の世界の住民みたいでわかっていても頭では理解してても心に何かが突っかかってきた。
私はここにいていいのか、私は考えさせられた。
記憶はここまでしかない。
気づいたらすごく綺麗なゴージャスなベットにいた。
病室なのか保健室なのか庶民をやっていた私からすると判別がつかなかった。
「おー、目覚めたかー」
「…コーヒー臭い」
「初対面の先生に対しての最初の一言はそれかよ」
「あ、先生だったんですネ」
「急に語尾カタコトになってるぞ」
「……」
「俺は養護教諭の竹生田。相談なら俺にしとけよー。生徒の心の管理をするのも俺の役目だ」
頭をわしゃわしゃっとされた。
初対面の人にわしゃわしゃする人ってどう?それも勘違いしやすい女子高校生に。私は例外だけど。
「………こんなの先生に相談したって仕方がないんで」
「…こんなかわいげのない生徒は初めてだ」
「他の女子はみんな俺に話すってか。女子みんなが先生の虜になってペラペラ喋るとか思ってるんだ」
「そのゴキブリを見る目やめろ!てか誰がそこまで言ったよ!!」