1/27
プロローグ
「ゴ、メン……ご……めん……ッ」
きつく握りしめた手が、ゆっくりと冷たくなっていくのを感じながら、クロはただひたすら謝りつづけた。
あふれた涙は止まらなくて、頬を伝う雫は、細い輪郭にそって、真っ白なシーツの上に流れおちた。
クロは今まで、本気で涙を流したことなどなかった。
だけど、どんなに泣いても
どんなに声をあげて謝っても
もう、運命が変わることはない。
「ごめん、コハク……ッ」
薄暗い病室の中には、少女の手を握り、涙を流しつづける”天使”が一人。
それは、天使である”クロ”が、人間の少女”コハク”と出会って一週間後の夜のことだった。
満天の星が輝く、7月7日。
この日クロは、初めてコハクに
────嘘をついた。