第89話俺と体育祭中編
遅くなってすいません。89話です。
「さあ、まずは、百メートル走から、始まります。私は、実況の坂本優と………」
「解説の坂本雄一です。よろしくお願いします」
「さて、まずは、一年生から、走ります。選手は、指定された所へ、向かってください」
優が、そう言うと、最初に走る子達が、並ぶ。
「ゆーうーいーちーさん!」
「ん?」
誰かに、大声で呼ばれ、そっちの方を見る。
見ると、藤森さんが、俺に向かって、手を振っていた。
「貴方の為に、絶対に、勝ちます!」
藤森さんが、大声で、そう言う、どうやら一組目のようだ。
「兄よ、解説は、平等で、やる事が、大切だぞ」
優は、藤森さんを、睨み付けながら、そう言った。
いや、優だけじゃ無いな、皆藤森さんを睨み付けていた。
「さあ、スタートの時間だ、一組目準備は、良いか?」
一組目の子達は、頷く。
「位置について、よーい………千代以外スタート」
「ちょっ!?」
優のその声で、藤森さんのスタートが、僅かに、遅れる。
「やり直しです。スタート位置に、戻ってください」
俺は、そう言う。
「ちょっ!? 兄よ!?」
「優、実況も平等で、ないと駄目だぞ」
「………はい」
「という訳で、一組目の子達、すまない、スタート位置に戻ってくれ」
俺が、そう言うと、はーい! と元気な返事をして、戻ってくれた。
「では、改めて、スタートの合図をしよう、位置について、よーい………ドン!」
パーン!
今度は、ピストルの音もなった。
「さあ、始まりました。百メートル走、一組目、現在トップは、一年一組、藤森千代です。兄よ、千代は、中々速いな」
「そうですね、手元の資料によると、藤森さんは、今日の為に、山を走っていたそうですね」
しかし、いつの間に、こんな資料を、作ったんだ?
「ゴール!」
どうやら、一組目が、終わったようだ。
結果は、藤森さんの圧勝のようだ。
「ん?」
走り終わった、藤森さんが、こっちに、走ってくる。
「雄一さん! 勝ちました!」
「おめでとう、最初は、ごめんね、優が、あんなこと言って」
「いえいえ、大丈夫です! ………あの~雄一さん、お願いがあります」
「何? 藤森さん?」
「勝ったので、撫で撫でしてください!」
「なあ!?」
「良いよ」
「兄よ、駄目だ!」
俺が、良いよと言うと、優が止めてくる。
「何よ優、勝ったから、良いじゃない。雄一さんも良いよって、言ってるし」
「千代、ここで、お前を撫でると、どうなると、思う」
「私が、気持ちよくなる!」
「馬鹿者! 勝った人、全員が、兄に、撫で撫でを要求してくるぞ!」
なるほど、そうなったら、俺が大変そうだな。
「藤森さん。ごめんね」
「そんな~」
藤森さんは、落ち込んだ。
「兄よ、先生方が、準備は、良いかと、聞いているぞ」
「あ、はい! 藤森さんお弁当作ってるんだ。後で、一緒に食べよ」
俺がそう言うと、藤森さんの顔が、明るくなる。
「約束ですよ! 雄一さん!」
「約束だ、それじゃあ、また後で」
藤森さんは、待機場所に戻っていった。
「兄よ、相変わらず、甘いな」
優に、呆れられた。
「そうかな? 普通だと、思うぞ」
「はあ~」
優は、思いっきり、ため息をした。
□□□
「さて、次は、午前の部、最後の自転車だ」
どうやら、午前の部の最後は、自転車のようだ。
「この競技は、各クラス代表一名による、競争だ、出る人は、指定の位置に、集まってくれ」
優が、そう言うと、選手が、集まる。
そう言えば、今思い出したが、実況って入れ替わるんじゃ無かったっけ?
「ああ、実況は、私だけになったぞ、他の面々は、暴走しそうだからな」
俺の考えを、読んだのか、優が、そう言った。
「優、読まないでくれ」
「なんの事だ、兄よ、それよりも、始まるぞ」
優が、そう言ったので、俺は、切り替えて、選手を見る。
「月下さんと、神宮寺さんが、いるのか………」
恐らくだが、この二人のどちらかが、勝つだろう。
「では、位置について………よーいドン!」
選手が、自転車をこぎ始める。
「「ゴール!」」
「「「はい?」」」
え? もう一周したの? と、その場で見ていた全員が、そう思った。
というか、ゴールした瞬間、見えませんでしたよ………
「少々待っていてくれ、皆、スーパースローカメラで、確認する」
優の手には、カメラがあった。
俺は、優と一緒に、カメラの映像を見る。
「ほぼ同着だな………」
「いや、兄よ若干だが、会長が、先にゴールしている」
よく見ると、神宮寺さんは、手を思いっきり、伸ばしていた。
「なるほど、手が先にゴールしてるな」
「勝者、神宮寺沙耶香!」
優が、そう言うと、歓声が、響く。
「やった! 雄一さん! 私やりましたわ!」
神宮寺さんが、手を振りながら、大声で、俺に言った。
「さて、これにて、午前の部は、終了だ。皆、昼食の準備してくれ」
「「「はーい!」」」
皆は、元気よくそう言う。
それじゃあ、俺も昼食にするか。
俺は、昼食を手に持ち、藤森さんを探した。
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