第110話俺と合同学園祭(劇、前編)
110話です。
俺は、袖幕から、観客席の様子を、ちらりと見てみる。
お客さんは、どうやら、満員のようだ。
「皆さん。準備は、よろしいですか?」
体育館の舞台裏で、三条さんが、そう言い、全員頷く。
「では、劇を必ず成功させましょう!」
「続きまして、東浦学校と、祭政学園の合同劇、王子とお姫様のLOVEロマンスです」
「では、舞台に、行きますわよ、沙耶香さん」
「分かりましたわ」
二人は、舞台に上がって行く。
役は、お姫様役、三条祭、王子役、坂本雄一、意地悪な母役、神宮寺沙耶香、お姫様の妹役、坂本優、ナレーターは、藤森千代となっている。
ちなみに、登場人物には、それぞれ、名前が、あり、お姫様、サラ 意地悪な母、クレカ、王子、シン、お姫様の妹、アノンである。
「準備が、終わったようなので、王子とお姫様のLOVEロマンス始まりです!」
司会の人が、そう言うと、舞台の幕が上がる。
最初の場面は、クレカの部屋である。
「ここは、サファテラス王国。女王クレカにより、この国は、支配されていました。女王クレカには、二人の娘がおり、長女は、サラ、次女は、アノンという名前です」
「ある日の夜、クレカは、娘たちを、自分の部屋に呼び、王位を、妹のアノンに、継がせると、言い不要な長女で、あるサラには、出ていけと、言いました」
「納得、出来ませんわ、お母様!」
「納得しなくても、決定事項ですわ」
「そんな酷い! 何故私ばかり、何故こんな!」
「文句を言っていないで、さっさと、出ていく準備をしなさい!」
「その言葉を、聞いた瞬間、サラは、クレカの部屋を、飛び出して、行きました」
「お母様、流石に酷すぎでは?」
「アノン貴女は、気にしなくても、良いのよ」
「………はい」
ここで、舞台が、暗くなる。
明かりが、つくと舞台は、森に変わっていた。
「家を、飛び出して、森の中に入り、サラは、とぼとぼ、歩いています」
「これからどうしたら………」
「どうかされましたか?」
「「「キャーーーーー!」」」
俺が、登場した瞬間、歓声が、響く。
「サラが、声のした方を見ると、美しい男性が、一人立っていました」
「ああ、何と美しい人なのだろう」
「ありがとう、では、夜も遅いですので、家に送りましょう」
「「「イケメンすぎです。雄一さん(君)」」」
「では、お手を失礼します」
「「「ブハッ!?」」」
何人かが、耐えきれず、鼻血を吹き出したようだ。
「美しい男性は、サラの前で、膝をつき、右手を取りました」
「僕の名前は、シンです。失礼ですが、お名前は、何ですか?」
「サ、サラと言います!」
「サラ様ですね、では、向かいましょう」
「は、はい!」
「「「お姫様役の女!? そこを私に、寄越せ!?」」」
観客が、全員、そう言う。
「サラは、シンの笑顔に、完全に見惚れ、自分が、家を呼び出した理由を、忘れ、家へと案内して、しまいました………ちっ」
藤森さん、今劇中だから、舌打ちしちゃ駄目だよ。
再び舞台が、暗くなる。
明かりが、つくと舞台は、城門の前になる。
「ここが、私の住んでいる場所です」
「まさか、王族の方だったとは、失礼を」
「頭を上げてください、私は、全然気にしてませんから」
「そう言って、頂けると、助かります。では、僕は、これで」
「そう言って、シンは、去って行きました」
「はあ~、素敵な方でした」
「サラは、シンの誠実な態度に、うっとりしていました。シンと一緒に、いる所を、クレカに、見られているとは、知らずに」
「ふふふ、アノンの婿に丁度良い、人を連れて、来てくれましたね、サラ」
読んで頂きありがとうございます。




