6. うちのペットと腹話術
いつもの様に公園でトレーニングを済ませて、家へ帰る途中、お孫さん連れのお婆さんと出会った時のお話です。
「今日も良い汗かいたわ。」
「そんなに頑張ってボディービルダーにでもなるつもりなの?」
「そのボディービルダーってなんなのかしら?」
驚きました、あんなに博識なピョニッコ先生がボディービルダーをしらないとは。
いえ、そもそも兎があれだけの知識を持っている事がそもそもありえませんでした。
「ボディービルダーって言うのはね・・・・」
「こんにちわ!」
「こんにちわ。」
「あ、こんにちわ。」
「お婆ちゃん、この兎さん白くて可愛い!」
「うふふ、ミオちゃんは、兎好きだもんね。」
「うん、わたし兎大好き~!」
「貴女、なかなか見る目があるわね。」
「・・・・お婆ちゃん、この兎さん喋ったよ?」
私は、とっさにしゃがみ込み、ピョニッコの背中に手を当てました。
「お嬢ちゃん、これは、腹話術だよ~。」
「ちょっと! くすぐったいわ。」
「あ。」
誤魔化そうとしましたがピョニッコがくすぐったさに飛び退きすぐにバレてしまいました。
※兎は、急に触られたりするとビックリして、パニックに陥り、飛んだり走ったりして怪我をする事があるので正しい接し方を心がけましょう
「お婆ちゃん、やっぱりあの兎さん喋ってるよ?」
「そ、そうね。」
「どうぶつ図鑑に兎さんは、声帯が無いから鼻とかを鳴らすしかできないって書いてたのに嘘だったんだね。」
「お嬢ちゃん、動物図鑑は、間違ってないよ! 間違っているのはこの兎さんだから!!」
「あなた失礼ね。」
私が小脇を抱えて、お嬢ちゃんに突き出すように言うとピョニッコが何処かの僧侶の様な事を言いだしました。
「貴女は、まだ若いわ。 人間が知りえている常識なんて、ほんの一握りよ。 世の中には、不思議で満ち溢れているのよ。 こんな事で驚いていないで精進なさい。」
いや、君以上の不思議なんてそうそう出会えませんよ?
私は、ツッコミをぐっと堪えてお嬢ちゃんの反応を見ます。
「私お嬢ちゃんじゃいないよ? ミオってついているの~。」
「・・・・ミオは、まだ若いわ。 人間が知りえている常識なんて、ほんの一握りよ。 世の中には、不思議で満ち溢れているのよ。 こんな事で驚かないで精進なさい。」
やり直した~!!?
「私の知らない事イッパイあるの?」
「そうよ。」
「そっか~。 兎さん物知りだね!」
「分からない事があったら何でも聞きなさい。」
褒められて気を良くしたのか大きく出てしまったピョニッコを見て、会社務めの私の経験上、ろくな事にならない気がしました。
案の定、次の質問にピョニッコが固まりました。
「じゃね、さっき話していたボディービルダーってなあに?」
「えっ!?」
しばらく固まった後、助けを求める様に涙目でこちらを振り向くピョニッコが可愛かったです。