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12. うちのペットが出勤

この作品は、フィクションです。

実在の人物、団体等とは、一切関係ありません。

唐突ですが朝から気が重いです。

理由は、皆さんご存知の通りムキムキマッチョの話・・・・では無くて、退職理由をどうしたものかという事です。

いや、ムキムキマッチョも大問題では、あるんですけどね。


行きたくはないけれど仕方なく、重い足取りで玄関を出て行きます。


「行ってきます。」

「「行ってらっしゃい。」」


電車や、バスに乗っているだけなのに足取りも重く、心なしかバックも重く感じます。

ああ~、重さが肩や頭にも移動してきました。

精神的に結構ギリギリの所まで来ている様ですね。

周りの乗客の人達も私の負のオーラが出ているのか視線を感じます。


とうとう会社に着いてしまいました。


「おはようございます。」

「おは・・・・宮園君、その頭は何だ?」


ん?頭?

私が頭に手をやるとモフモフしたものが・・・・。

あ、スポンと剥がれました。

恐る恐る、前持ってくるとそこには兎が!

まぁ、ピョニッコなんですけどね。

いやいや! ピョニッコ居ること自体おかしいから!! 何で!!?


一緒の電車に乗って来た同僚の子がそっと教えてくれました。


「その子、宮園さんのバック、肩や頭にヨジヨジ登っていたけどペットか何か?」


もっと早く教えて!!

足取りが重いんじゃなくて、実際に重量がかかってた~!!


「いや、これはですね・・・・」

「あなたがセクハラ係長ね?」

「何んだと?」

「ずいぶん、私のナオを可愛がってくれたようね。」

「ぴょ、ピョニッコ、セクハラじゃなくて、瀬原係長だから!!」


セクハラもとい、瀬原係長が茹で凧の様になっている!!


「宮園! お前係長に向かってなんて事を!!」

「いや、私じゃ・・・・」

「あなたがパワハラ先輩ね、覚悟は出来ているのかしら?」

「ピョニッコ様、止めて! パワハラじゃなくて、川原先輩だから!!」

「「宮園ー!!」」

「す、すみませ~ん!!」


どうしてこうなった!?

私は、ただ出勤してきただけなのに!!


私が謝り倒していると救世主が現れました。

マルっとした体形にレジを通せば金額が出そうな頭、高級そうなスーツを着こなしています。


「何の騒ぎだね?」

「「しゃ、社長!! いえ、宮園がですね・・・・」」

「宮園君?」


社長がピョニッコを抱きしめている私の方を向き、一斉に視線が集まりました。

終わった。

辞めるつもりではあったけど何か終わってはいけない終わり方です。


「宮園君。」

「はい!」

「その兎は、とても可愛いね!!」

「「「「えええぇぇ~~~!!?」」」」


社員一同、この時ばかりは、心を一つにして驚きました。

ただ、一人?を覗いては。


「私の可愛さがわかるなんて、あなたなかなか見る目があるじゃない。」


ピョニッコは、私から飛び降りて、社長によじ登り、頭をペシぺシ叩いています。

止めて! これ以上、私を追い込まないで!!


「これ、私が働いているカフェのサービス券よ。 上げるわ。」

「ほほう、ここに行けば君に会えるのか? ありがとう。」


社員一同、冷や汗をダラダラ流して見ている中、さらっと営業までこなしています。

そして、爆弾まで投下しました。


「そうよ。 そして、そのお店の社長がナオよ。」

「ほほう、宮園君、社長だったのかね?」

「な、成り行きで社長にされました・・・・。 多分?」


誰かのゴクリと飲み込む音が聞こえるほど静まり返った社内。

社長がおもむろにフトコロに手を入れます。

銃か!? 撃たれるのか!!?


「私、(株)○○商事取締役社長をしている者です。」

「あ、これは、ご丁寧に。 カフェの社長している宮園です・・・・?」

「「なんでやねん!!!」」


名刺交換の途中で間違い?に気づいた私は、硬直し、瀬原係長と川原先輩がツッコミを入れました。


「何を言っているのかね君達、名刺交換は、基本だろう?」

「「いや、宮園はですね・・・・」」

「君達は、我が社に泥を塗るつもりか! 減給だ!!」

「「なんで!?」」


何か2人が可哀想になってきました。

混乱する2人を無視して社長は、語りだします。


「いや、私は、小さい頃、兎を飼っていてね。 兎が大好きなのだよ。」

「はぁ・・・・。」

「これから、宮園社長のお店に行けば兎達に会えると思うと日々の活力になるからね。 ワハハハ!」

「あは、あははは・・・・。」

「良かったわねナオ、常連さん獲得よ。」

複雑すぎるわ!!


そして、複雑な心境のまま、私のお見送りが行われました。


「宮園社長の門出を祝って皆でお見送りしようじゃないか!」

「いえ、そこまでしてもらわなくても・・・・。」

「遠慮はいらん、さぁ、皆アーチを作るぞ!」


社長や同僚から声援を送られながら退職?する私。

パレードの主役張りに手を振るピョニッコ。

恥ずかしい! 誰か助けてー!!


出勤して、僅30分で退職して、家へと帰りました。

大家さんに後で聞いた話によると、ここ最近で一番顔が死んでいたそうです。


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