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便利屋

 静かな寝息だけが響き渡る薄暗い部屋に、突然けたたましい機械音が鳴り響く。


「んぁ…。はいはい…、今出ますよっと」


 布団から手だけを突き出し、近くに転がる携帯を手に取る。


「はい、便利屋でーす。ご用件は…え?買い出し?朝のセール?…了解。じゃあ、それを買っていけば

…だから、小陽ちゃんって呼ぶなよ!…て切れてるし」


 会話が途切れてから、数秒の沈黙。

 それから、布団がスポーンと跳ね跳んだ。


「あー今日も仕事だ。めんどくせぇ」


 眠気眼を擦りながらあくびを噛み殺す小陽。

 御年二十五歳の彼は半年前まで自宅警備委という名のニートをやっていたが、ついに親に家を追い出され叔父の家に逃げ込んだ。

 そこまではよかった。

 が、叔父は小陽が転がり込んできたのをいいことに「地球一周の旅をしてくる」と訳の分からないことを言って小陽に自身が営んでいる便利屋を託して姿をくらました。

 最初は叔父の代わりに便利屋なんてやるつもりは微塵もなかったが、予想以上に叔父の顧客が多い。

 毎日、仕事の電話が小陽の携帯に掛かって来るのだ。

 後で、聞いた話では叔父が消える前に顧客に小陽の携帯番号を教えたらしい。

 最初は無視をしていたが、当然働かなければ金が無い。

 金銭的な理由で結局は便利屋をやる羽目になった。


 小陽が気だるそうに歯を磨いていると本日二回目の電話が鳴り響く。


「はいはい、便利屋。…三時に犬の散歩ですね。了解。では、三時にお伺いします」


 電話わ切ると重いため息が一つ零れ落ちた。


「犬の散歩くらい自分でそしろって…。ってやべぇ!タイムセールに遅れる!!!」


 顔を適当に洗いジャケットを引っ掴むと外へと飛び出し、自転車に飛び乗る。

 目指すは近所のスーパー。

 朝一のタイムセールで米を入手しなくてはならないのだ。


「行くぜ!」


 こうして小陽の一日は始まったのだ。

 いつもと変わらない日なるはずだった。

 これから待ち受けるものなど、小陽はまだ何も知らなかった。

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