エルフ娘は奴隷送り?
TS物です。
勢いだけで書いてしまった……
「なぜ…なんで…あれだけ細い…をお見せできんぞ!」
「はい…毎日…食べさせて…ですが」
ドアの向こうから聞こえる俺に対する不満の声。
「あぁ…やっぱり…」そう思いまた憂鬱になる。
「奴隷とかにされる日も近いかな…」
誰にも聞かれないように、そうつぶやくのは銀髪のストレートのギリギリ中学生に見えなくもないほどの身長、その身長に似合わず妖艶さがある中性的な顔立ち、そして耳が普通の人より長い。
この世界では、エルフと呼ばれる種族。
「はぁ…奴隷送りにされるなら早くしてくれ…この半年で覚悟はできたからさ…」
エルフの少女は顔をうつむかせ、ため息をつく。
「転生したのに、エルフの女の子になって奴隷…どうすりゃいいんだ」
少女はこの半年ずっと思っていたことを口に出して、どんどん気分が沈んでいった。
☆
半年前
日本で17年間、男として生きてきたオタクの俺はトラックに轢かれそうだった女の子を助け、代わりに自分が轢かれた。
死に際「こういう展開、異世界転生ならテンプレだよなぁ…」なんて馬鹿なことを考えていた。
目を覚ます事のないはずだったのに、目を覚ました俺は、森の中にいてしばらく放心していたのをよく覚えている。
気づいた時には大パニック、本当に転生したことよりもこの先どうやっていけばいいのか、そして何より自分の姿だ、目線の位置、身体の細さ、そして何より男として大事なモノがなくて、怖かった。
そんな状態の時に聞こえた何かが動いた音に足がすくんで立つことすらままならず、震えていた。
するとすぐに草むらから狼に近い生き物が出てきて歯をみせ、唸りながらこっちに来るのでどうしようもなく、漏らした。
もう無理だ、また死ぬのかと諦めに入ったところで、誰かが俺の目の前に立ち、狼と対峙した所で俺の意識は一旦途切れた。
次に目を覚ましたら豪華なベットの上だった。
混乱していると人が部屋に入って来る音がする。
「こんにちわ、エルフのお方」
そう言ってきたのは悪人面のきれいな格好をした男の人。
盗賊かなんかだと思った俺は逃げようとするが自分の身体に慣れていなくて、歩くことも難しかった。
ベットから出ようとした所で、男の後ろからいかにも使用人というような格好をした女の人が出てきて元に戻された。
「すまない、君を何処かへ行かせる訳には行かないんだ」
そう言われて、前世オタクだった俺の頭は一瞬で「これ奴隷とかにされるのかな…」と前に見た異世界ファンタジーもののラノベを思い出して、そう思った。
それから、悪人面の人は俺を拾ったから、しばらく家に居ろということと、娘がいるけど、あまり近づくなということだけ言って出ていってしまった。
どうすればいいのか、何をすればいいかわからない。
俺がいる部屋にやってくるのはメイドさん?が数人だけ、なんか飯をいっぱい食わされる。
数日たってようやく女の身体にも慣れ、部屋で軽い運動や、メイドさんから渡された本を読んで過ごした。(文字は分からないが、何が書いてあるはわかった、よくわかんないけどまあそんなもんだろ)
「ん?」
読んでいた本でかすれているがエルフのと書いてあるのがわかる。
{エルフ…貴重……にすべし}
それをみて、今更だが恐怖がこみ上げてくる。
「やっぱり…」
奴隷にされるのは正直怖い、今はなぜかわからないが丁重?にもてなされてるのはなにか意味があると思ってしかたない。
だが逃げようにも、ドアの前にはメイドさんがいるし、窓はあるがここは二階で飛び降りるのは怖い。
「詰んだ…」
どうしようもないからおとなしくしていよう。
数日後、なにやら窓の方から音がするので近寄ると、なんと女の子が入ってくるところだった。
「だ、だれ!?」
入ってきた女の子はこちらを向くと
「あなたがエルフ…?なんというか…(ぼそぼそ)」
「え、あ、あの…」
「ああ、ごめんなさい、私はリーシャよろしくね、あなたは?」
「え、あの、その…」
名前なんて考えてない、前世の名前は正直ダサい。
どうしようかと考えていると
「もしかして名前がないの?」
「え、う、うん」
「そう…なら名前をつけてあげる」
これはありがたい、この世界のことがあまりわからないから名前も無難ならいいんだが…
「そうね…リア、なんてのはどう?」
「リア…うん、ありがとうリーシャ…さん?」
「リーシャでいいわ!それよりあなたに聞きたいことがいっぱいあるの!」
そういって根掘り葉掘り聞かれたが、応えられることなど殆ど無い。
その日はある程度聞かれた後リーシャは窓から帰っていった。
その後、リーシャは度々来ては色々なことを話してくれた、俺のことは全く話してないが。
俺が女だと知るとかなりびっくりしていたが、まぁ一人称俺だしね…
知った時になんかぶつぶつ言ってたけどなんだろうか…
それからというものリーシャと話して、本読んで、飯食ってって感じで過ごしていた。
半年たって、あの悪人面の人がやってきて、俺の姿を見て、困ったような顔をして部屋の外のメイドさんと話している。
会話からするに俺の状態が気に食わないのかな?奴隷にするなら早くしてくれ…
☆
(視点変更)
私はカイル、今しがた半年前に見つけたエルフの様子を見たが、あのエルフは全く変わらない、細くてすぐに折れてしまいそうな腕に、病人のような身体の細さ、アレでは王、さらには民に紹介ができない…
この国でエルフはいうなれば神に等しい、神聖なものとして扱われている。
なんでも初代国王がエルフに救われたのがきっかけだとか…
ここ50年、そのエルフがこの国にはいなかった、前にいたエルフは里に戻るといってさらっと出ていってしまった。
この国はエルフと共にあったのでこれは由々しき事態である。
そんな時、エルフを見つけたと連絡があり、そのエルフを引き取った。
公爵の地位を貰い受けている私は王と話し合い、あのエルフ様をどうにかして国にいてもらおうとしていたのだ。
そしてようやく、方針が決まり、いろいろな手続きがすんだのでエルフ様を見に帰ってきたのだが…
なんであんなに細いのだ、口調からするに男であろう方があれだけ細いと、皆に心配される上に私の管理問題にもなる、それでメイドを呼び話を聞いた。
「なぜ、なんで半年もあったのにあれだけ細いのだ?あれでは王や民にあの方のお姿をお見せできんぞ!」
「はい、毎日ちゃんと食べさせているのですが…あのエルフ様は身体が小さいので…」
「うーむ…とりあえずはリーシャと話してもらい、どうするのかを話してみよう」
その後すぐに、娘のリーシャの元へ向かった。
「さて、メイドから聞いていると思うが、あのエルフ様に話をつけてもらえんか?王や民もエルフがいなくなって50年、かなり焦っていてな…」
「構いませんよ、お父様、それと、あのエルフ様を私にくださいませんか…?」
(リアは素晴らしい娘ですし、なによりかわいい…あの笑顔を誰かにあげたくないし、あの笑顔を見てるとなんだか胸がキュンってしますわ…)
「おお!それはホントか!」
(リーシャの婚約者も決まっていなかったし、あのエルフ様がいてくださるようになれば問題ない!)
壮大な勘違いだった。
☆
そこから一月後、小綺麗な格好にさせられた俺は部屋から出て、馬車に乗っている。
この時が来たのだと、そう確信した。
小綺麗な格好にさせられたのは奴隷商人辺りに売る時に良く見えるからだろう、今まで売らなかったのは時期を見計らってたのだろうと、そう思う。
目の前の悪人面の人も何やらスーツのようなものを着ている。
覚悟は決まってたが、やはり悲しい、転生してすぐ捕まって何も出来ずに売られるのは悔しい。
だがどうにもならない、もしこの身体に力があっても
使い方は知らないし、試したが何も出来なかったから。
しばらくして、馬車が止まる。
手を引かれて馬車を降りると……
人が、大勢いた。
(え、なに……オークションかなんかに出されるのか……?)
目の前には真っ白い大きな建物がある。
建物まで道が作られておりそこを進んでくが、周りの人がジッっとこちらを見てくる。
(あぁ……もう……泣きそう)
そうこうしてるうちに建物に着いた、ドアが開く
(サヨナラ、まともな第二の人生……)
そこに入ると……
大勢の人
そしてリーシャがドレスを着てそこに居た。
「えっ?」
「リア!」
リーシャが小走りでこちらにやって来る。
「ど、どういうこと……?」
「リア!私と結婚して!」
そう言って抱きつかれた。
「は、はい……?」
困惑していると周りの声が聞こえてくる。
「エルフ様よ!」
「ああ、エルフ様だ……」
「やはりエルフ様は綺麗だね……」
と。
「え、あ、え!?」
頭が回らない、当たり前だ、売られると思っていたら結婚してと言われ、様付で呼ばれる、混乱しない方がおかしい。
リーシャが続けて言う。
「だーかーらー、私と結婚して?」
「う、うん?」
そう答えたのが間違いだったのか否か
「ほんと!?ありがとリア!」
「へっ?」
周りの人達も何やら喜んでいる。
が、俺の耳には入らない。
そのままリーシャに連れられ、式が始まったのだった。
☆
その後、混乱から回復した俺の眼の前には満面の笑みのリーシャがいるし、横であの悪人面の人が薄く笑ってるし、色々な人に囲まれて、エルフ様バンザイ!とか言われて、訳が分からない。
とりあえず、奴隷にされなくて済んだんだよね……?
主人公のその後はリーシャと幸せに過ごそうとするも国中から祝福され、表も歩きにくいから結局引きこもります。
ちなみにリーシャ父、カイルですが結婚するまでリアが女だと知らなかったので、リーシャがそれを知ってて結婚したことに大層悪人面を歪ませたそうです。
勢いだけでしたがどうでしょうか?