表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/17

危険な恋の四重奏(カルテット)~ 9 ~

「う~ん...。繋がらないですね。やっぱり内部アンテナがいかれちゃったのかなぁ?水没とかじゃなくて、落としただけなんですよね?」


 若い女性店員が蜘蛛の巣が張ったように画面がバキバキになったmyスマホを操作しながら首をひねる。


 「落としただけでなんですけど...。やっぱり買い替えになりますか?」

 「う~ん、そうなりますね。」


 あ~でも、やっぱり買い替えかぁ~。

 今月旅行やら欲しい書籍の発売日が重なってたりで出費多いのに、スマホまでとなると結構いたいなぁ~。



 「通信機能だけが駄目だという事は他のアドレス帳なとの機能は無事なのかな?」

 「はい、もちろんです~」


 ...おい、女性店員。声ワントーン上がってるぞ

 私の隣に座り話を聞いていた騎星理事の質問に、女性店員が頬を染めながら満面の笑顔で答える。


 「じゃあ、新しいスマホ購入したらお店でライン情報とか移してもらえますか?」

 「できません。皆さん機種変更の時などはアプリにデータ預けられかパソコンでみなさんされてますよ。」


 一気に声トーンダウン!?急降下したね、アナタのご機嫌メーター。

 ついさっきまできらめく笑顔で対応してたのに、一瞬できり変わる表情スイッチに脱帽だよ。

 気持ち分からなくも無いですが一応客商売なんだから、騎星理事おとこまえと話してる所に割り込んだからって、一瞬舌打ちせんばかりに顔しかめるのは、お客様わたしとしては如何なものかと思うよ。


 「通信機能死んでるのにアプリ使えないし、かといってパソコンかぁ~」


 我が家のパソコン、去年の猛暑で調子悪くてから使ってない。私の部屋って、夏はサウナ並みに温度上がるからなぁ。

 パソコンの大きい画面も好きなんだけど、無かったら無いでスマホで大半、事足りちゃうから、修理に出さなかったツケがこんな所にでるとは。


 「もしかして家にパソコン無いのかな?」

 「いえ、あるには有るんですが、最近ちょっと調子が悪くて。」

 「それは困ったね。」

 「実家に帰れば有るんですが、う~ん。データコピーコピーとか難しいですそうで。前に、失敗してラインの情報消えちゃったって話も聞いたこと有りますし。一人でやるには心許ないんです。」


 実家で教えて貰おうにも、両親共に出来る事と言えば、YAHOOに繋ぐか、メールを送るだけで精一杯。まあ私も同じ様なもんだけどね。しかし、こんな事ならもっと勉強しとくんだった。

 あ~、本当にミームの関係者に関わると碌な事ないわぁ。


 「そうだ鈴木さん。コテージにパソコンあるんだけど、良かったらこの後、」

 「簡単ですよ!!ほら、やり方の紙お渡しするんですよ!それに、過去通信不良で相談に来られたお客様もいらしたと聞いた事ありますよ。旅先という事もありますし、購入しないで様子見たられたらどうです?」


 騎星理事の言葉を遮り、店員が割れたスマホと一緒にA4の紙をつきだしてくる。あれ、新機種購入を勧め無いとか、結構良い店員さんだったのかな。声の浮き沈みは大きいけど。


 「それよりも、そちらの男性のお客様にオススメな情報があるんです~。」


 と思ったら、突然満面の笑顔に切り替わり、騎星理事へ身を乗り出す。

 ...あ~、ハイハイ。女性心理としてはそうなりますよね。でも、店員としては如何なものだよ

 など等、内心苦笑しながらもらったA4用紙と割れたスマホを鞄に仕舞おうと手にした瞬間、スマホのマイクからノイズ音が届く。


 『ザ..ザザ...り..リリ...』

 「!?」

 『リリ...すず....きこ...。』


 なんか、スマホから聞こえるんですけど!?店員さんが言った通り、もしかして治った?だとすれば、コレは連絡が取れずに心配した2人からの着信だ!


 「も、もしもし!?」


 バキバキの画面に指を滑らせながら、耳を近付ける。


 『リム...べる....かなで..む.....ザザ.....』


 しかし、聞こえてくるのはノイズ音混じりの途切れ途切れの声。

 画面は暗いままで発信者の表示がないが、何処かで聞き覚えのある女性だと言うところまでは分かる。

 しかし、それ以上聞こえるのはノイズ音のみ。


 「もしもし?美穂?早苗?もしもし!?」

 「鈴木さん?もしかして回線回復したのかな?」


 女性店員にかぶりつきで話しかけられていた騎星理事が、こちらに顔を向ける。

 その向かいでは、女性店員が疑惑の目で此方を睨んでいる。


 「はい、ノイズ音に混じって声が聞こえたんですが。」

 「ノイズ音?上手くアンテナをキャッチ出来てないのかな?」


 そう言って騎星理事が伸ばした指がスマホに触れた瞬間、先ほどまでノイズしか聞こえなかった音が鮮明になる。


 『リリム..聞こ...すか?』

 「聞こえた!!」


 そして、聞こえてきたのは、やっぱり何処かで聞いた優しげな女性の声。

 やった、回復した!!浮かれて立ち上がった私は、続いて聞こえてきた言葉に全身の血がひく。


 『ああ、リリム。精霊樹から産まれた愛しい妹姫よ。フェアリーデンと人間界を守る鈴の音を持つ乙女よ。』

 「...は?」


 なんか今、聞き捨てならないワードが聞こえてきたんだけど。スマホを耳に当てたまま固まる私。

 隣では、騎星理事がこちらのやり取りに耳をすませている。


 『貴女に伝えなければならない事が有ります。精霊杖エレメンタルワンド魔痕ヴォルグに奪われたの。早く取り戻さなくては大変な..』


 女王様ラスボスから通信入りました。


 「あ~ハイハイ。業務連絡ですね。」


 ミームが居たら無礼だとか騒がれそうだが、それどころじゃありません。隣で騎星理事いっぱんじんが聞いてるんです。

 って、何で女王様ラスボスから着信来るの!?何で私の番号知ってんの!?

 ミームか、ミームなのか!?あのやろう、私の個人情報垂れ流しやがって、今度という今度は、許さん。帰ったら毛をむしって実際の堆積を明らかにしてやる。


 「すみません理事。せっかくここまでご一緒して頂いたのに着信入りまして、ここで失礼させて頂きます。」


 『鈴木さん!?』とか騎星理事の困惑声が聞こえたが、構っている場合ではない。

 万が一音が漏れ無いよう、力いっぱいスマホのマイクを押さえつけ、じりじりと後退しながら店を出た瞬間、力いっぱいダッシュする。

 一刻も早く人気のない場所へ行かねば!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ