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危険な恋の四重奏(カルテット)~ 4 ~

 「確か、こっちから伸びてた様に見えたんだけどなぁ...。まさかこの上って事は無いよねぇ...?」


 上の道へと続く斜面の岩肌に垂らされた太いロープを見上げながら、何故あの時追おうとか思ったのか、自分の思考回路に軽い怒りを覚える。

 先ほどの店のトイレで聞いた心の声(?)に、完全に踊らされて魔痕ヴォルグを追いかけて森の中に入ってきたのは良いんだけど、トリッキングコースっぽい所に迷い込んだ様だ。

 しかも、考えてみれば、ミームが浚われたって言う事は、恐らく一緒にいたあの子達も知っている筈。下手をすると彼女たちと鉢合わせる可能性が高い。


 「あの時の、どうして気付かなかったんだろう。ミームの事は愛流奈めるなちゃん達に任せて置けば良かったのよね。基本、あの子の家に住んでるみたいなんだし。」


 救出に来た彼女たちのキラキラの鈍器みたいなデコ武器に当たって、魔痕ヴォルグ共々2、3カ所凹まされる可能性も無きにしも非ずだけど。

 私的には、それもまた良し。ついでに色んな所をしっかり凹ませて欲しい。頭部とか心等がおすすめだね。

 そうと分かれば、早く二人の所に戻らないと。

 「まだ、あの店にいるかなぁ。」などと考えながらスマホを取り出した私の腕を、小麦色の手がガッシリと掴む。


 「おい、お前!!」

 「ギャアッッ!?」


 思わず悲鳴を上げて、捕まれた腕を振り払った為、スマホが手の中からすっぽ抜ける。


 「びっくりしたぁ~。もう、いきなり何!?」


 驚いて目をやると、そこには、見たところ12、3歳だろうか、目に鮮やかなエメラルドグリーンの髪をした少年が偉そうな顔で腰に手を当てながら指を突きつけて、こちらを睨んでいる。


 「驚いたのはこちらの方だ!!それより、二本足。お前今、『愛瑠奈メルナ』とか言わなかったか?」

 「ん?もしかして君、愛瑠奈メルナちゃん達のお友達?まさか、あの子たちもここに来てるの!?」

 「ふん、間抜けな奴等がここを突き止められる訳がなかろう。この場を突き止めたのは、優秀なオレ様1人のみだ。」


 えへんと偉そうに腕を組み、胸を反らす少年。

 セーフ!!どうやらこの少年一人のようだ。


 「おい、聞いているのか!オレ様をあんな愚かな二本足どもと友達などと呼ぶな!!」

 「あ~はいはい。一人はぐれちゃったて寂しかったのかな?」


 分かるよ。強がっちゃう思春期の男の子心理。

 しかも、気になっている女の子の名前出されて、恥ずかしくて暴言吐いちゃう良くあるツンも含まれてるんだよね。

 プイと横を向いた少年の顔に、思わずにやけてしまう。


 「フフ、気になってる女の子には今の内から素直になって置かないと、将来苦労するよ?大丈夫、大丈夫。愛流奈めるなちゃん達には、はぐれてたとか言わないから。」

 「うるさい!!そんな事よりお前、『ミーム』とも言っていたな!?」

 「ソイツハ、シラナイ。」

 「嘘付け!!オレ様の耳は確実にミーム殿どのの名を捉えたぞ!」


 清々しい笑顔で即答した私の言葉をバッサリ切り捨てる少年。

 しかも、ヤツの名前の最後にウサハムには似付かわしくない敬称ついけてるし。


 「フェアリーデン屈指の誉れ高き勇敢な戦士でもある、ミーム殿とも知り合いなのだな。」

 「あ~、えっとね....。は?」


 一瞬、耳からの情報を思考が拒否した。

 フェアリーデン屈指の戦士?もし私が考えてるのと同じ名前の奴なら、その誉れ高き勇敢な戦士さん、さっき魔痕(ヴォルグの蔦でぐるぐる巻きにされて運ばれて行くのを見ましたが。


 でも、なるほどね。今の話で分かったわ。

 つまりこの子は、初めて私の前にミームが現れた時の様な



 「やっと見つけたミュー!!

 その魂の香り!!フェアリーデンの女王様と同じ妖精樹エレメンタルウッドの同じ香りだミュー!!貴女こそ、妖精樹エレメンタルウッドから1万年に一度生まれる、ミームが探してた伝説の妖精乙女メイフェムだミュー!!」


 とかいう系の、訳の分からない嘘に言いくるめられて、第二の妖精使徒フェリーエンジェル妖精騎士フェアリーナイトっぽい存在になりかけてるわけね。

 あの妖精騎士フェリーナイトクラスまで悪化してたら駄目だけど、若い今ならまだ軽症で済む筈よ。なんとしても思い留まらせなければ。

 未来ある青少年を、見てるコッチが死にたくなる様な姿で、高笑いしながら夜の住宅街に登場させてはいけない。

 10年後とか絶対後悔する。今は自分に与えられたら『使命』って嘘に酔って、どんな痴態でも受け入れてるけど、その酩酊状態が解けたら確実に死にたくなる。

 ちなみに、結構いい大人だと思う妖精騎士フェリーナイトがあの状態から覚めてないのはきっとあれだ。いい大人になっても『〇〇みたいな彼女が現れた時のためにコミュニケーションの練習してるんだ』とかギャルゲーのコントローラー握ったまま真顔で語るのと同じ種類の、頭の中が楽しい奴(オブラート的表現)なんだ。


 「ふふん、ぐうの音も出ないか?オレ様にはウソは通じないとようやく認めた様だな。お前も愛流奈めるなとか言う二本足たちの仲間と言うわけだな。それで、お前もミーム殿どのの救出に来たのか。この場を突き止めるとは、二本足にしてはなかなかやるようだな。」


 後、何設定か知らないけど、その「二本足」も止めた方がいいよ。


 「君の為にも、私の為にも、頑張ってあいつにトドメを差すわ。」

 「お前がトドメを、だと!?身の程知らずが!この場に巣くう、あの魔痕ヴォルグは、お前の様な弱々しい二本足が敵う相手ではないぞ!」


 うん、何だか話がかみ合ってなかったみたいだ。

 私がトドメを刺したいのは、魔痕ヴォルグじゃなくてミームなんだけど。

 それにしても、いくらこじらせているとはいえ、この少年は初対面の、しかも年上に対して「お前」とは、口の聞き方を教えられていない様だ。


 「愛瑠奈めるなとかいう二本足達にも言ったが、脆弱な二本足が倒す等と寝言を抜かすな!

 あの魔痕ヴォルグは我がかたき!!その強さで数多の世界を滅ぼした魔痕ヴォルグ四天王が一つ、緑のギリガン!

 貴様など、海藻の陰に隠れて震えているが良い!!」


 何で、海藻?しかも、愛瑠奈めるなちゃん達にも同じ事言ったのか、この子は?


 「君ね、あのウサハムにどんな台詞で丸め込まれたか知らないけど、お友達にまで何てこと言ってるの!

 ミームの戯れ言から早く目を覚まさないと、将来後悔するわよ?

 君はいくつ?高学年か中学生にもなって、見ず知らずの人を巻き込んだごっこ遊びはそろそろ卒業した方が良いよ?

 それに、お友達でも知らない人にでも、乱暴な言葉で話しちゃダメでしょ。」

 「うるさい、うるさい!オレ様に指図するな!!」


 しかし、私の注意を一切聞こうとしないばかりか、逆に怒鳴り返してくる。

 そろそろこの未来の妖精騎士フェアリーナイト2号に拳骨の一つでも落としておくべきじゃないだろうか。

 この子の親が来る前に。(モンペだったら怖いからね。)


「ボク?いい加減にしないと...」

魔痕ヴォルグに侵されているとはいえ、海の大国アクアトピアの王子であるオレ様に向かって、無礼な二本足め!!」


 少年の言葉に、振り上げかけた拳がピタリと止まる。

 アカン、コレ、軽く末期症状出とる。

 きっと、この少年はミームのバカたれに


 『実はキミの魂は、魔痕ヴォルグっていう化け物に滅ぼされた、アクアトピアっていう国の王子様なんだミュー!!

 でも大丈夫、このフェアリーデンの戦士ミームの仲間になれば、アクアトピアを魔痕ヴォルグから取り戻す事なんて簡単だミュー!!』


 とかいう洗脳を施されたに違いない。

 つまり、先ほどからの生意気な言葉遣いも訳の分からない『二本足』っていう不思議ワードも、この子のアクアトピアの王子様★設定ってやつなのね。

 ミームの奴、幼気いたいけな少年になんて設定植え付けちゃってんの!?

 前途ある少年にとんでもない事しやがって。


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