表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

危険な恋の四重奏(カルテット)~ 2 ~

 「美味うま~っ」

 「美味しすぎぃ!ねぇ~こっちも食べてみてぇ。」

 「この季節のマンゴーって神だわ。」


 植物型魔痕ヴォルグや三色ロリータ少女、自称☆フェアリーデンのウサハム戦士を見なかった事にしたまま、土産物屋等が並ぶ中心街へと繰り出した私たち。

 目当ての店もすぐに見つかり、それぞれに注文したジェラートを手に、カップルや家族連れで賑わうお土産屋等を冷やかしながらウィンドウショッピングを楽しむ。

 はい、告白します。結構油断してました。

 先ほど見た人物とか考えたら、宿でのんびりするっていう選択肢もあったと思います。


 「あれ、もしかして鈴木さん!?」


 その声を聞いた瞬間、頭の中で私のたのしいショッピングタイム終了のブザーが鳴り響いた。


 油の切れた超合金ロボットの様に、ギギギギ...そちらに首を向けると、頭に『疫病』と名のつく神に繋がれた、私の運命の相手かもしれない、視界に痛いピンクの頭髪・フェアリーレッドこと、花園はなぞの愛流奈めるなが、嬉しそうに大きく手を振りながらこちらにかけてくる。


 「すごい、奇遇ですね~。」

 「花園...さん。」


 満面のキラキラ笑顔で、子犬のように駆け寄ってくる愛流奈めるな

 ええ、可愛い女の子に懐かれて、嫌な気はしないんだけどね。

 あんたの肩に乗ってる、一般人には見えないウサハム(ウサギ&ハムスター)までが、あなたと同じ顔でこちらを見てくる姿には、嫌なドキドキとイライラを抑えられないわ。


 「ウン、ソウダネ。偶然グウゼンダネ。」

 「やったぁ、こんなところで鈴木さんに会えるなんて凄いラッキー!鈴木さんたちは今日はこれからどこに行く予定ですか!?

 私たち、あっ!実はキララちゃんとカナデちゃんも一緒なんですけど、この先のジェラート屋さんに...あぁっ!それ、『ジョリーボーン』のジェラートですよね!?やっぱり美味しそう~、鈴木さんたちも行ってきたんですね!?うわぁ、やっぱり美味しそうだなぁ。」


 アナタはちょっと落ち着いた方がいいよ。


 「ハハ・・・」


 愛留奈めるなの肩の上で此方をガン見しながらピョンピョン跳び跳ねて猛アピールしてくるミームを絶対見ない様、死んだ魚のような目をしながら遠くを見る私に全く気付きもせず、花園 愛流奈めるながハイテンションのままマシンガントークをぶつけてくる。

 悪い子じゃないことは分かっているんだ。

 わかっているんだけど、肩に載ってるウサハムともども、一度ゆっくりと説教したい。高校生らしい落ち着きと言うものを。


 「ああ、やっと追いつきましたわ。愛流奈めるなさんってば、いきなり走り出してどうしたんですの?」

 「も~愛流奈めるなったら!一人で行かないでよ、びっくりするじゃないの。」


 苦しげに肩で息をしながら、妖精使徒フェアリーエンジェルの残りの二人、肩につく位にカールされた金髪の天宮あまみや 星光きららと明るい青みがかった髪をポニーテールに束ねた七海ななみ かなでまで駆け寄ってくる。

 愛留奈めるなの肩に乗るミームを含み、日常で出来るだけ会いたくないカルテットが、目の前にそろってしまった。


 「ははは、ごめんごめん、二人とも。でもでも、鈴木さん見つけちゃったんだもん☆」

 「え?鈴木さん?あら本当に。こんにちわ、お会いできて嬉しいですわ。」

 「もう、愛流奈めるなちゃんってば、鈴木さんの事大好きなんだから。でも、ここでもお会いできるなんて、本当に奇遇ですね。」


 二人を置いて突っ走って来たことに、全く悪びれた様子無く笑う愛流奈めるな

 慣れているのか、かなで星光きららは笑いながらこちらに笑顔を向ける。

 ミームのせいで、単独行動取らされてる私が言えた義理じゃないが、あなた達、心広いね。


 「リリちゃんってば、モテモテだねぇ~。」

 「あ、もしかして、さっきの森の遊歩道のところで、知り合いっぽい人見つけたって言ってたの、この子達の事?」


 何気なく言ったであろう美穂の言葉に、私だけでなく、愛流奈めるなかなで星光きららの三人の空気までもが、ビシリという音が聞こえそうな程凍りつく。


 「え、私何か変な事言った?」

 「さ、さぁ...?」


 一瞬にして固まった愛留奈めるな達に、能天気だった早苗と美穂の空気までこわばる。

 しかし、二人をフォローする余裕は私もなかった。

 美穂の言葉に動揺した3人が、コソコソと私の日常に優しく無い方向の新情報からだ。


 「え‥でも。妖精使途フェアリーエンジェルの姿って、普通の人間には見えないってミームが言ってましたわ。ねぇ?」


 フェアリーデンの住人が一般人の眼に見えない様に、変身後の妖精使徒(フェアリーエンジェルの姿は、普通の人間には見えないのである。

 そして、先ほど森の遊歩道にいた三人は、妖精使徒フェアリーエンジェルに変身していた。それが見えたなんて事になれば、フェアリーデンの関係者であると疑われかねない。


 「その通りだミュー、妖精使途フェアリーエンジェルの姿が見えるのは『特別』な存在だミュー。えっと~た~と~え~ば~・・・」


 しかも、愛流奈めるなの肩に乗っかったままミームが、含みを持たせた言葉と共に、無駄にキラキラした目を私に向けてくるではないか。

 今すぐ。コイツの顔面に拳をめり込ましてやりたい。


 「え!?じゃあ、あの森での私達の姿が見えたとしたら、鈴木さんって!?」

 「そうー」

 「ゴホンっ」

 「め"っ!!...」


 振り上げそうになる拳を懸命に押さえながら、愛流奈めるなの言葉に嬉々として答え様とするミームへと殺気を込めながら、咳払いを一つ。

 私から滲み出す殺気を感じたのか、口をひらいたまま、ミームが青い顔で凍りつく。

 普段から『妖精乙女メイフェムの秘密は漏らすな。』と精神と体へ刻み込んだかいがあった。


 「べ?べってなに?」

 「ミーム?どうしたの?」

 「凄い汗ですわよ?」


 セリフの途中で、いきなりぬいぐるみの様に動きを止めたミームを、3人が不思議そうに眺める。

 よしよし、ミームが怯えて口を閉じているうちに、何とか話を逸らす方法をひねり出さなくては。


 「でも、残念~てっきり男の人だと思ったのにぃ。」

 「もう。早苗ってば、そればっかり。」


 何か、確実に疑われない嘘が無い物かと、懸命に頭をひねっていた私の耳に、何気ない早苗と美穂の言葉が飛び込んでくる。

 それだぁっ!


 「いやいや、私が見たのは、この子達じゃなくて男性。」


 大袈裟に照れた表情を作りながら、照れ隠しを装いながら、わざとらしく手をブンブンと振る。


 「やっぱり男性なのねぇっ!?呼び止めようと追いかけたりするくらいだからぁ、もしかしてぇ、イケメンだったりぃ?」

 「へっ!?う、ううん...フツ―じゃないかな?同じ職場の人と会うなんて珍しいなぁって思っただけだし。」


 思い切り食いついてくる早苗に、私がしどろもどろになりながら返事をしている後ろで、愛流奈(めるなたち三人が、小声で会話を続けている。


 「良かった..見られたんじゃ無かったのね。」

 「えー、ガッカリ~。てっきり鈴木さんが四人目だと思ったのにぃ。」


 私の言葉に、先ほどまでコソコソとしていた奏が安堵の表情を浮かべたのとは対象的に、あからさまにガッカリした顔をしながら、愛流奈めるなが不吉な言葉を呟く。


 「え..四人?あなたたち三人だけじゃないかったの!?」


 もしかして、妖精使途ゴスロリって、まだ居たの!?

 うまく話を逸らす事出来て安堵しかけた私の耳に、危険な言葉が届く。

 しかし、私が質問する前に、かなで星光きららの二人が、愛流奈めるなの言葉をさえぎってしまう。


 「愛流奈めるな、シー!!」

 「いえ、何でもないんですわ!!申し訳ありません、せっかくのレジャーなのに、お引き留めしました。私達はこの辺で!!」


 うん、さっきまではさっさと別れたいと思ってたけど、ちょっと待って。

 その「四人目」って話をもうちょっと詳しく聞かせてくれないかな、君たち。


 しかし、引き留めるために声をかけようとした私を振り切り、不満顔の愛流奈めるなを引っ張りながら、固まって動かないミームを小脇に抱え、あわてて別荘の立ち並ぶ区画へと去って行く二人。

 そんな三人の後姿を、茫然と見送りながら、帰ったら物理的にでもミームをひねり上げて、『四人目』という恐ろしい言葉の意味を聞き出してやろうと、強く心に誓ったのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ