危険な恋の四重奏(カルテット)~ 11 ~
わたしの言葉で何か思い付いたのか、愛留奈がパチッと手を叩くと、おもむろに背負っていたリュックの中からピンクの本体に大小幾つものラインストーンでデコレーションされたスマホを取り出す。
「ライン!そうだよ、もしかしたらフェアリーラインだったら!」
「その手があったわね。」
「上手く行けば、女王様に繋がるかもですわ!」
愛瑠奈ちゃん、愛瑠奈ちゃん、ちょっと待ってください。なんですか、そのトンデモライン?あなた達も、スマホぶっ壊されて変な電波繋げられちゃった被害者仲間だったり?
後、初耳な情報が今日一日でポンポン連発されているんで、私としては戦々恐々としてるんだけど、そのラインって、身内だけで安全に使えるアプリだよね?大丈夫よね?こっちに飛び火してくる系の迷惑ラインじゃないよね。
「ちょっと待って、フェアリーラインって、なにそ..」
「ありがとう鈴木さん!」
はい、私の質問はブッチされました。
私の質問を軽やかにスルーして、満面の笑顔でカラフルなストーンでデコされたスマホをタップしていた愛瑠奈の手が止まる。
「アレ?ラインメンバーに新しい名前が増えてる...鈴鈴って誰だろう..。アクア君じゃなさそうだし。」
「ホントだ。鈴って文字が付くっていうと...。」
奏が愛留奈の手元を覗き混む。
...。あの『鈴鈴』って、もしかして、鈴木鈴夢で『鈴鈴』っすか...?
私、身バレ禁止って、ずっと言ってるよね!?何で正体半分言っちゃってんの!?バカなの!?わざとなの!?って言うか、奏ちゃんも、何で「鈴って言われて思い付くのは..」って呟きながら、此方をチラチラ見るのかな!?気付いてんの、気付いてないの!?
後、愛留奈ちゃん!?もしかして、今タップしようとしてる名前、『鈴鈴さん』じゃないよね!?何か疑われてるっぽい今、鞄の中でスマホ鳴ったら絶対疑われるよね!?
フェアリーデン電波って、相手の予定全く無視して電波乗っ取って
「愛留奈ちゃん待って、ここじゃ駄目ですわ!それに、ミームの事も有りますし。」
首を傾げながら『鈴鈴』の名前に触ろうした愛瑠奈の手を、星光が慌てて止める。良くやった、星光ちゃん!!あんた、ほんまに良い子!!
「あ、そうだったね!じゃあ後で調べよう!鈴木さん、また図書室にお喋りしにに行くね!またね!」
「いつも慌ただしくしてすみません。また遊びに行かせて頂きますね。」
元気よく手を振って駆けて行く愛瑠奈とぺこりと頭を下げてその後に続く奏と星光。
いつも言ってるけど、図書室は静かに本を読む所だから。お喋りしたり遊びに来る場所じゃないから。
あと、奏ちゃん、物言いたげな目で行くの、本当止めて。言いたい事有るなら、言ってほしいな。全力で否定するけど。
「なんかさっきも思ったけど、ハリケーンみたいな三人組だね...。」
「なんだかぁ、最近の子の話ってぇ、全っ然分かんなくなっちゃったよねぇ。」
呆然と遠ざかって行く3人の背中を見送っていると、美保と早苗がため息をつく。
分からなくても大丈夫だよ。アレは、常識と対角線上に生きてる、ごく一部な子達だから、言ってることが解らないのは当然なのよ。
因みに私も、彼女達と同じ様な世界には居るらしいんだけど、全く業務連絡しないウサハムのせいで、完全置いてきぼりにされてますけどね。
「ま、まぁ、二人共。宿に帰ってご飯にしようよ。」
この時の私は自分の手に在るべき存在を完全に忘れていた。
そして、これが後々の混乱へと繋がっていくという事に気が付かないでいた。
宿の自動扉を抜けたとたん、ソレは視界に飛び込んできた。
「鈴木さん!会えて良かった。」
一体何が起こっているんでしょうか。
キラキラエフェクトがかかった発光体が、満面の笑顔で手を振りながら近寄って来ております。因みに、周りからの視線も痛いです。
「うわぁ、凄いイケメン~。あれぇ、さっき喫茶店で見かけた人じゃない~?」
「あ、ホントだ!何だかリリの事呼んでるみたいだけど、もしかして知り合いだったの?」
「うん...まぁ...でも、知り合いというか、職場関係の人で、顔見しり以上、知り合い未満程度で...。」
っていうか、なんでここにいるんですか騎星理事!私、何かやらかした!?
「あ、あの、どうしてこちらに?」
「鈴木さんの宿泊先あっていて良かったよ。はい、コレ。忘れ物だよ。」
そう言って差し出されたのは、3本のワイン瓶が入った紙袋。
忘れてた―――――――――――!!!!!!!
どこで置いて来たっけ!?
..あ、携帯ショップ...
「す、すす、すみません!」
そういえば、カバンとスマホで両手塞がってて、ワインボトルの事、すっかり忘れてた。
あの店から宿まで、結構距離あったのに、重い荷物運ばしたって事!?フレンドリーにして貰っているとはいえ、職場のお偉いさんに!?
ちょっと仲良くして貰ったからって、人類皆兄弟。今日から親友。そっちもタメ口だし、こっちもフレンドリーに対応しちゃってオッケーだよね。とは思いませんよ。
うわぁん、思えたら良かったぁ!そう思えるアイアンハートが今すぐ欲しい!今更ながら、小市民根性が恨めしい。うわぁん、どうしよう!!
「気にしないで。それに、また鈴木さんの顔も見れたし。」
良い人、なんて良い人なんでしょうか!!申し訳ありません。いくらでも見て下さい。(土下座)
しかし、土下座せんばかりにペコペコと頭を下げる私の横で、美穂と早苗がキャッキャと騎星理事に話しかてけている。
「リリちゃん、リリちゃん!!イケメン!近くで見たら更にスッゴいイケメン!!」
「私達、リリの友達で、海原美穂と山吹早苗と言います。リリの職場の方ですか?あの、」
二人共、お願い。そちら一応、ウチの学校のお偉いさんだから。
でも直属の上司じゃないから、私の職場関係とか就業態度とか聞いても聞き出せる事少ないから!いい雰囲気の人とか居ないから!
って、騎星理事も分からない癖に、私と仲のいい先生名とか挙げないで下さい。その人たち、既婚者ですよね!?しかも、全員60代から70代の教授や準教授ですよね!?老け専な自覚ありますが、流石にソコまで首尾範囲広くないです..。
美穂も早苗も、私の小さい頃の暴れん坊っぷりを披露しないで。
ガキ大将相手にマウントしてボコボコとか、知らない人からしたらドン引きレベルのヤンチャっ子だから。
今まで頑張って作り上げた優しい司書さんイメージが、只今、早苗と美保にガンガン崩されております。
お願い二人とも。もう、その辺で勘弁してやってください。
「ふ、二人共、そろそろストップ。騎星理事ご飯の用意あるし、私達もご飯の時間があるんだから。」
「あ、結構時間が...お引き留めしてすみません。」
「え~、リリちゃんの職場の話もっと聞きたいよぉ~。」
早苗さんお願いします。止めて下さい。後、何度も言いますが一応その人ウチのお偉いさんなんです。
「はは、僕も鈴木さんの普段の話を聞けて楽しかったですよ。あ、そういえば鈴木さん。スマホはどうでしたか?着信があったみたいですが。」
「あれ?バキバキで通信壊れてたんだよね?」
ギクゥッ!!!
「はい..でも、ノイズが聞こえたのはあの一瞬だけで..。」
通常の電波は受信しないのに、フェアリーデン関係の(私にとっての)毒電波は受信するようになってるんです。なぁんて、そんな事口が裂けても言えないですよ。
「じゃあ、やっぱり新機種購入になるのかな?」
「この旅行の帰りにでも2人に付き合って貰って買いに行こうかと。」
「そっか、良かったら僕も参加させてくれないかな?丁度明日帰る予定だし。」
...............は?
「あ、もしかしてぇ、さっき森で見かけたぁ、職場の人ってぇ、彼の事ぉ!?」
「..そうね。しかも、追いかけて行っちゃう位なのよ、きっと...。」
只今、言い訳のために吐いた嘘という名の地雷が踏み抜かれました
早苗さん、目を輝かせながら、私と騎星理事の交互に見比べるのは止めて。
美穂さんもやめてください。さっきの嘘なんです!本当は、フェアリーデンの戦士に連れてかれたんです!!
「どうかな?僕も一緒だと、嫌かな?」
そして、アナタもどうかしてますよ。『どうかな』とか聞いてる場合ですか騎星理事。二人の視線一切無視して、なんでそんな台詞が吐けるんですか。
「い、いえ..そんな事...。」
そして私も、『NO!』と言えない駄目な日本人......
ハッ!いやまてよ。そうだ!旅行は一人出来てるんじゃない、皆で来てるんだ!!
one for all
all for one
一本では弱くても、三本なら!!
って言うことで、二人の意見を聞く感じで断る方向に持っていけば。
「でも、すみません。今回の旅行は二人と来ているので..」
「え~?私は全然良いよぉ。」
「そうね、私も構わないわ。大丈夫よリリ。そんなに不安そうな顔しないで。大丈夫分かってるから。」
ごめん、美穂さん。その『分かってる』の意味が何なのか、ちっとも分からない事が一番『大丈夫』じゃないの分かってますか。
「ありがとう。ではまた明日。楽しみにしてるね。」
そして、私の困惑した顔色には全く気づかず、騎星理事は二人と手早くライン交換をした後、爽やかに去っていったのだった。




