2話「お守り」
朝がきた。
重い体を起こしながらも、意識を覚醒させていく。珍しくもうナヤは起きていたのか、隣のベッドにはあるはずの友の姿がない。
自分も急いで支度をして、すぐ外へとでる。
……やはり今日も雪が積もっていた。凍えるような風が体を冷やす度に、また戻りたくなるが、なんとか抑える。
動きたくなかったが、ちらっと時計を見て溜息を吐く。もう行かなくてはいけない。
柔らかい雪を踏みながら、待ち合わせの〝大きな木〟の元へと歩いて行く。本来ならみんな寝ている時間なので、孤児院からは物音一つしない。
しばらくすると、木が見えてきた。
その下にはにこにこと優しい笑みを浮かべる院長先生と、引きつった様な笑みのナヤがいた。
ナヤの目は腫れぼったくなっている。
院長と挨拶を交わし、ナヤとも少しばかり話す。
しかし、やはり自分の中にある〝何か〟が拭えない。
何か、それが何かは分からないのだが、確実に何かある。
「……まぁ気にするほどでもないか…」
ぶんぶんと頭をふってそんな思いを消し去り、今、に集中する。
今は院長に言われて馬車の荷台に座っている。業者の人に同行させてもらう形だ。
ナヤは違う馬車で、何やら院長先生と喋っている。
その光景をこっそり見ていると、ナヤとの話が終わったのか院長先生がこっちにやってくる。
「レイ、ナヤが話をしたいらしいわよ。時間ならあるから最後にいってらっしゃい」
いきなりの院長の言葉に目が点になる。
「え?…わかりました」
少し不思議に思いながらも、素直にナヤのいる馬車へ向かう。
「ナヤ?」
布をまくって奥にいるであろう友に声をかける。
すると入って、と、か細い声が返ってくる。
おそるおそる中に入り、辺りを見渡すと角の方にナヤはいた。
「ゴメンね、いきなり呼んだりして。実は渡したいものがあって……手、出して?」
「?」
首を傾げながらも、言われたとおり手を伸ばす。
するとナヤは袋の中からミサンガ、を出す。ぎこちない手つきで俺の手首につけ、ナヤも同じように自分の手首につける。
そして人差し指を口に当て、お守り、と言って笑う。
俺は、俯くことしかできなかった。
少し短めです!次はナヤ視点ですv