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1-④


 ・・・・やっぱり始まるんですね。


 席替えが終わり、あとは帰りのHRまでの時間は「適当に交流でもしとけ!」っていう投げやりな言葉だけを残して、ライガーは去っていった。

 せっかく心も暖かくなって、こんな高校生活なら悪くないかもって思ってたところに、こやつらは、何がしたいんだ!と。さぁ、始まる弱肉強食、優劣順位競争!元ヤンかなんか知らないけど、もう標的を見つけたみたいだ・・・。


(は・・・はぁあ。ボク・・・じゃなくて良かった。ほっ・・・)


 で・・・でも、シリアルはいらないよね!シリアルはっ!!って思いながら、こっそり見てた。もうシリアスと言えない動揺を隠しながら。変なトラウマが発動しそうになりながら、席で覗き見てた。


 「何だよ、おめぇ!ぶつかっといてそりゃないじゃん?」

 「ゴ・ゴメン。悪かったよ・・・。」

 「ゴメンって謝ればすむって思ってんのかよ、あぁん?それで済むならポリスはいらねぇよな?バカかお前?」

 「どうすればいいかは、分かってんだよな?」


 「・・・・・・・・・・ふひゅ~・・・」


 ・・・・・・ぽっ、ポリスだって・・プフッwwwだ・・めだ。耐え・・・っろ!!耐えろっw必死に笑いを耐えたんだが、腹筋が押し出す空気がちょっとだけ出ちまったじゃん。言ってるお前の方が、バカみたいなんだぜ? 

 そして、俺は思った。


 ・・・・・・・・・コレは、コントですかww


 率直に思ったのが、この感想だった。教室に残ってるクラスメイト達が、一斉にドン引きしてた。強そうなヤツが残ってないってのもあるんだろうか?豆戸もいないし、チャラ雄もいないし、残ってるのは友達が少なそうな・・・オレを含む貧相な男子と女子が十数人。男子はおよそビビってるし、女子はおよそ無視を決め込んでる。

 交流でもしとけってライガー言ってたのに、他のクラスに行ってるヤツもいるとか・・・

 なんて自由な高校なんだw


 ・・・・・・・・・・。


 これは・・・自分の力を誇示するために、ヤラレ役を事前に仕込んでたんじゃないかと。

 強そうなヤツがいない今の内に、前々から仕込んでたコントを突然発動させたのかと。


 そう・・・・。


 そう思うしかないだろぉーーーーーーっ!って叫びたかった。ぶつかったヤラレ役。ぶつけられたさらさら髪の元ヤン?その①。天パでリーゼント風のフォロー役の元ヤン?その②。そんな配役なんだけど・・・

 つうか、なんで元ヤン『?』って思えたのか。不思議だろ?

 だって、さっき「あぁん?」って語尾に付けてたしwwwだけど、一応ここ進学校だから、こんな所まで来て、ヤンキーはやらないかな~とかw

だけど、こいつら・・・覇気がねぇwww

 本物のヤンキーって、もっと!こう・・・オーラが違うだろ?俺の経験上なんだが。

 そんなことを思いながら・・・でも現実はそう甘くなかった。

 ヤラレ役の男子(この時点では名前覚えてないw)は、若干涙目になってる。元ヤン?は、ニヤニヤ汚い微笑みをしながら、ヤラレ役の返答を待ってる

 嫌な沈黙に耐えられなくなったのか、ヤラレ役の男子が弱弱しくこう言った。


 「わ・分かんないよ・・・・。」


 ゴッ!!!!


 「ヒッ!!」


 ・・・っああぁぁああ!

 鈍い音がした!


 マンガやアニメとかの、「バキッ」とか「ドカッ」とか分かりやすい擬音を想像してたのに、リアルではこんな音も出るん・・だ・・。骨と骨のぶつかり合い、決して気持ち良い・・・音じゃ・・ない。なんかこっちまで緊張してきた・・・。正直怖い。そして、みんな目を見開きビックリしてる。だって、人を殴る音なんか、そうそう聞くもんじゃないし。

 「ヒッ」って小さな悲鳴を上げたのは、女子の一人。初めて見聞きする人もいるよね・・・。


 「っ!!!い・・痛い・・・じゃんか・・・」


 もう半分泣きかけてるんだけど、なんか流石っていうか・・・ガン泣きはしてない。

 ちなみに、この男子もそうなんだけど・・・。いきなり殴られると「ぐぁああ!!」とかって叫び声上げないし、上げる余裕もない。およそ、ビックリして声も出ない。しばらくして、痛みがやってくるんだ・・・・経験談なんだけどなwww←笑えねぇ。

 

 「分かんないなら、教えてやるよ。そりゃ、倍返しでしょ?サンドバックでいいんじゃん♪」

 「いいねぇ、じゃあ俺が抑えておくから、好きにやれば?ハハッ♪(はぁと)」


 うわぁ、すげぇ軽く言っちゃうんだなぁ~。語尾に「はぁと」が付いてるみたいだ。だけど、人ごとになると・・・こんなにも余裕が出るんだなぁ。

もう元ヤン?って言えなくなって昇格したヤンキー1号2号は、そう言って殴りつづける。一発・・・・、二発・・・・。楽しむために力を抜きながら殴ってるみたい、こいつら・・・


 「や・・・やめなよぉ!!」


 とある女子が叫ぶ。そこを皮切りに、男子顔負けの男らしい女子軍団が口々に・・・


 「もう、その辺にしたら?」

 「キモいんだけど、やめてくれる?」


 あぁ、すげぇ!こいつ本当に女なのか?やっぱリアル女子は怖いってことでFAだなwここで、キモいって言えるのは、本当に凄い!やっぱ2次元が至高だなっ!!そんなKYな事を考えていたら、流石と言うかなんと言うか。そこは、きちんと?ヤンキーだったというか。


 「はぁ、うっせぇよ。お前こそ、キモいんだけど・・・。それともお前が変わりにやるの?女だからって容赦しねぇからな。ほら、こうなりたいのか?クククッ!!」


 言いながら、また一発。「ガッ!」って嫌な音がする。この嫌な音のお陰か、キモい宣言をした女子も口をつぐむ。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・

 ・・・・・これは、主人公フラグなんじゃないだろうか?


 あぁ、やめてっ!ホントやめてっ!!何?こんな時に??

 そりゃ、これで治められたら最高にエクセレントな高校生活を送れるだろうよ。でもね?これは、無理ってもんじゃんよ!どんだけだよ?他人事だと思って、勝手言ってんじゃねーーっ!っつうか言ってるのも俺なんだろうけど・・・俺じゃねぇーーwwwいや、笑ってる場合でもねぇ!そもそも、目立たないようにしようって心に決めてたじゃねぇか!でも、ヒーロー物だとココは行くべき所じゃねぇかっ!!

 そんな一人問答を脳内で繰り広げてる中、やはり誰一人として救いの手を差し伸べる人はいなかった。


 さ・・・さぁ、どうする?

 どど・・どの、カードを引く?

 ぼ・ぼぉ・・・おぉぉお、俺に用意されたカードは、3枚。

 「行く」「逝く」「逃げる」

 ちょ、ちょっと待て!逝くってなんだ?どこに召されるんだよ!

 でも、ヒーローになるならココしかない!この、いじめられっこからの脱出劇を繰り広げようぜ?

 

 ・・・・

 

 他人事だと思って、もう!おまいらにもあるだろうがよっ!!

 トラウマという4文字が!そのトラウマのお陰か、既に・・・震えてます、ハンド。燃え尽きてます、ハート・・・。行こうにも、足も震えて、口もワナワナなりだした。

 僕は、ずっと憧れていたんだ。正義の名の下、戦うヒーローに。ずっと見てたんだ、日曜日の朝の特撮ヒーローものをっ!!

 高校になったら、人生を変えると決めた。

 中学までの、あの地獄のような日々も終わって、これから人生のベクトルを捻じ曲げようと思ったんじゃないか!

 言ってたじゃないか!!あのヒーローは・・・

 

 『男なんだろ?』

 (・・・・・・ぐずぐずするなっ!)

 『胸のエンジンに・・・』

 (・・・・炎をつけるぜっ!!)

 『若さ、若さってなんだ?』

 (振り向かないことだっ!!)

 『愛ってなんだ?』

 (ためらわないこーとーさーーーっJAPANっ!!!)

 よろしく勇気ぃ!!ひゃぁっはぁあああっ!!!


 ・・・・・・・・


 ・・・お前、コレ朝のヒーロータイムじゃないぞーーーーっ!!!

 だが、問題ない。俺は今、もーれつにパイレーーッツ!!

 行けってことだろ!

 目立つとか、目立たないとか、そんなものは・・・もはや、どうでもいいっ!!

 震える心も、手も、足も、総動員でやぁってやるぜぇ!!

 流行らなくなった高校デヴューを飾ってやるぜっ!!!!

 弱弱しい勇気を振り絞り、3人に足を向けたその時・・・

 

 はっ!?


 「ふっ・・・んふぷぇっっきしゅっ!!!」


 ちょっ!?

 

一斉に視線を集めてしまった!あの、コントをやってる3人組のお笑い芸人もっ!←

 あぁあああ、俺!・・・・ちょっとは、空気読んでくれよっ!!ここで!?

 ここで、クシャミするかぁ?俺の勇気は?炎が灯った胸のエンジンは?


 「ぷっ!」


 その吹き出し音を皮切りに、教室内で大爆笑が沸き起こった。もう、女子軍団が涙を流しながら・・・ある意味感動しているwwwま、まぁ確かに少しだけ変わったクシャミではあったと俺自身も思ったけど・・・なぁ?


 ・・・・・酷い。

 

 1号と2号も、指を指して笑ってる。ヤラレ役は、唖然としてる。


 「あっ、はっはっは!・・・はぁはぁ。あぁ、冷めたわ。もういい。ジュース買いに行こうぜ!」


 1号はそう言って、最後にショルダーアタックをかまして、2号と共に教室を去っていった。


 ・・・・・。


 アレ?パシリに使わないんだ・・・。なんか、あいつらも高校デビューに近いのかもしれん。それか、ガッツリヤンキーではないのかもしれない。オーラもそうだが、目つきもそんなに恐いものでもなかったような気がするし・・・・まぁ、良かった。

 

 ・・・・・


 えっ?これで、良かったのか?全くもって、格好いいヒーローではなかったよな?無様にクシャミを披露した、似非ヒーローじゃんよ・・・はぁ。もうヒーローじゃないな・・・、こんなんじゃ。


 そう。これが・・・・現実リアルなのよねんwwwという、がっかりヤンキーとがっかりヒーローコント?実は俺もコントの一員だったのだっていうオチになったこの一幕。

 

 結局、主人公にはなれなかったという(泣)


 『いい最終回だったなwww』


 という神の声を聞いた気がした。



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