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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

リア充は異世界では生き残る事ができない。(サッカー馬鹿編)

作者: コウ

嘘くさい某自己啓発本とは一切関係ありません。

名前は適当で関係ありません。深読みは無しでお願いします。

「雨が降ればいいのに・・・」

体操服に着替えながら、誰にも聞こえないようにポツリと呟いた。


心の中と反比例するように、カラリと晴れた青空が窓から見える。

僕の名は「斎藤 一也」ラノベが好きなどちらかといえばライトなオタクの高校生。


僕の通う市立○○高校では、男女別の授業が多いが

希に体育教師の気まぐれで同じグラウンドでする事があるのだ。

今日の体育は2時間連続である授業だ。最悪の場合は女子は男子の「サッカー」の試合の応援をするだろう。つまり、「サッカー」に自信がある奴は目立とうと積極的に前に出て派手なプレイを心がける。


そして、僕のクラスにはJリーグを目指せるという呼び声の高く、それに伴ってプライドが異様に高い奴がいるのだ。


(ああ、憂鬱だ・・・)


そして始まった授業前半はしっかりと監視していた体育教師だったが、女子にはソフトボール、男子には「サッカー」の試合の準備をさせるとサッサと体育館に入っていった。筋トレをする「野球部」連中の指導の為に・・・


(いよいよ、残虐サッカータイムの始まりだ)


「おら、パスよこせ」 「サイド回れ!」 「キモオターーー 早くこぼれ球 前に回せ」

「何やってんだ、チビ」 「体を張って止めろーーーパスカットだーー」


女子の笑い声が罵声と共に聞こえてくる。全試合、フィールドに出ているメンツの中に僕はいたが特にサッカーが得意な訳ではない。「野球部の連中」と「スクールカーストの高くてサボり癖のある奴」の代わりをやらされているだけだ。パスを出せば、ボールを貰えなかった奴に怒鳴られドリブルをしようとすれば本気のショルダータックルで倒され女子に笑われる。地獄のような時間・・・


(後2分、このまま、ボーとしていればこの時間は終わるかな・・・)


じっとして突っ立ていると、ボールが転がってくると一緒に罵声が飛んできた。

「キモオターーーパス!パス!」「俺にパスだ。早くしろ」「トロいんだよ。パスパス!」

女子の笑い声も一緒に聞こえる。「キモオタだって ウケる」「きゃははは」「オタはしねー」


怒りを堪えながら、とりあえずは手を挙げてアピールしている自称日本代表「長谷川 佳祐」にパスを試みた。


が、相手チームにパスカットされてゴールを決められてしまった。

「きゃーー○○君 カッコイイ!」「スゴーーーい」と巻き起こる女子の歓声

そして、突き刺さる自称日本代表とその取り巻きの視線


痛みさえ幻覚してしまう中、響き渡る授業終了のチャイム

自称サッカー日本代表に選ばれる男の雪辱の場は失われていた。


おそらく美容院で整えられたであろうキレイに整えられた眉が盛大に歪むのを見ながら

「健全な肉体に健全な精神が宿る」はナチスドイツによる誤訳で「強靭な肉体に健全な魂があるように願う」が本当だったけ・・とかぼんやりと考えていた。


- = - = - = -




放課後、長谷川の取り巻きに監視されながら僕は正座させられていた。硬い教室の床の上で足の痺れが限界を超えていた。


1時間後、椅子に足を組んで尊大な態度を見せる長谷川に説教される。


『糞オタが人の足を引っ張るな。サッカーのできない(・・・・・・・・)ゴミはゴミらしく俺の人生に関わるな。わかったか ああ、わかったのか?』


「長谷川さんが質問しているんだよ。土下座して答えろよ」

罵声と共に取り巻きに押さえつけられて、無理矢理土下座させられる。


『おい、お前ら』   「「「「ハイ!」」」」

『わからないようにボコっとけ、顔と見えるところは殴るなよ』 「「「「了解っす」」」」

「あの~長谷川さん 中川と揉めたらどうします。あいつ実戦空手の黒帯ですよ」

『お前、馬鹿か?空手の黒帯は凶器として扱われて加害者はそれだけで不利なんだよ。奴も馬鹿じゃないからオタ一匹の為にムショに行くリスクを犯す訳ねえだろ』

「なるほど~」「さすが長谷川さん」


警察関係者が聞くと大爆笑する嘘を教えて犯罪教唆を行なってから、部屋から出ていく長谷川が視界に写ったが、僕は目の前が真っ白になり意識を失った。


- = - = - = -



「お・・・君」「おーい・・・・・」「起きているか」 誰かに呼ばれる声がして、我にかえった。


周りを見ると、友人の「中川君」と「秋野さん」がいる。あれ、僕はさっきまで教室にいて土下座させられていたはずなのに・・ココはどこ?


「ねえ、中川君 ココはどこなの?」「おい、正気に戻れ・・信じがたいが『召喚』だ」


『召喚』この言葉を聞いて僕の頭が回転し始める。今日は憂鬱な日だったのでとにかく何も考えないようにしていたはずなのにシャッキとしてきた。

周りをキョロキョロと見回すと見知った顔がかなりいるようだ。30人位いる、もしてして同じ高校生か・・

どうやら召喚した側らしい古代ローマ風の兵士と古代ローマ風のトーガを来たいかにも身分の高そうな人も同じ部屋にいる。


「中川君、この数を一気に召喚だと・・」

「ああ、おそらく軍隊か、奴隷目的かどちらにしろ録でもない可能性が高い」


ジッと観察していると兵士が下品で遠慮の無い視線で女子を見ていた。トーガを着た奴はまるで「長谷川」と同じ目だ。人を見下す事が当たり前の根性の腐った奴に特有の嫌な目・・・


そして別の奴はまるで、「商品」を見るような目だ。


「中川君、まずいよ。奴らの目が奴隷を見る目だ。脱出するほうが・・・」

「お前な~ 俺TUEEE小説じゃないんだから 武道を修めているからといっても限度がある。俺と秋野だけならともかくお前の護衛をしながらだとキツイ」

「情報が足りないわよ。一也君 とにかく様子を見ましょう」


パンパンと手を叩いた音がして、皆が一斉にそちらを向くと「長谷川目線の偉そうな奴」が大声をあげた。

満面の笑顔を貼り付け、さっきの嫌な目は嘘だったみたいに

「異世界の者よ。我が帝国へようこそ 我々は歓迎します」

「こちらの出入り口は謁見の間に通じております。偉大なる我らが皇帝の謁見を賜ります。皆様こちらへ」



「秋野さん、僕には言語チートはあるみたいだけど」「あら、偶然ね一也君、私もよ」「俺もだな」


言語チートはあるが、第一の選択肢は間違えるとあっという間にバットエンドみたいだな。


「人数がこれだけ多いと、○○のパターンは無しかな。」「そうね、後の展開は××の方じゃない。」

「ねえ、奴隷の首輪をされる前にゴマをすって下働きパターンが正解かな?」 「「了解」」

所謂、「オタ」だけに通じる会話で今後の行動を検討していった。




- = - = - = -




召喚された世界は文明レベルは低くて古代ローマ並、奴隷は当たり前

ドワーフ、エルフ等亜人は無し、ハンターギルドも無し 当然のごとく魔獣も無し

餓死者が冬にでる農業レベル、工業レベルは鉄製品まで、何故か建築レベルは異様に高い。

そして、貴族や富裕層の腐敗だけは異世界転移小説並だった。

テンプレは回避できたから「異世界小説様々」だな。


謁見の間で『皇帝』にゴマをすり、私たち三人は下働きだが他の人は、教養のあって優秀なエリートがいますよと、暗に獲物として差し出して帝国民の身分を手にいれた。

そしてチートな現代知識を駆使して始めた「ニホン商店」は順調に成長して富裕層の秘匿技術である「魔法」を手に入れようと画策している時に懐かしいが会いたく無い奴が夕食時にやってきた。


ボロボロの服で髪は整ってない上にシラミでもいるらしくしきりに掻いていた。辺りに漂う異臭・・

服の間から紅いボツボツが見え皮膚病にかかったどう見てもその辺りで寝転がっている物乞い。

僕たちとの共通点は黒髪、黒目のみ。他校の生徒にもきゃーきゃー言われていた容姿は見る影もない。


((自称日本代表選手))は言った。『斎藤さん 私を匿ってください。』


それから奴は顔を涙でクシャクシャにしながら今までの経緯を語り始めた。僕たちの予想どおりお客さん扱いされたのは一時期だけで、体力のある奴と認定された自分の取り巻きや「野球部」連中と共に軍隊に入隊させられた。そこで臭い飯とキツイ訓練に根をあげてなんと、軍団長の視察日前日に仲間と脱走してしまったらしい。

当然の如く、捕縛され罰として自分の手で仲間のうち一人を死ぬまで殴りつづけさせられたそうだ。誰を殺したかは言わなかったが、その後もイジメは続き野営地には入れてもらえずさらに食事の質が落ちて再度、脱走してきたらしい。



そういえば、図書室に古代ローマを旅するみたいな内容の本があったけ・・・読んでいれば「ローマ軍の実戦よりキツイ訓練」は有名だから回避する道を選ぶはずなのにね。いや、ここは異世界だったな。

空を見上げて懐かしい思い出に浸っていると


『同じ日本人でクラスメートじゃないか?助けてくれるよね?』

そう言いながら奴は料理している最中の食堂に警備担当が止める間もなく入り込んだ。


『ああ、夢にまで見たハンバーグ、四角い食パン、焼肉・・・』

奴に手を出される前に警備担当が取り押さえてくれた。


『放せ、放せよ あれは俺の世界の食べ物だ。つまり俺の物だ。俺の物なんだ。貴様ら奴隷の食事じゃないんだ』

押さえつけられても、涎を垂らして周囲に飛ばしながら喚きはじめた。


『俺は将来、日本代表になるはずだった。いわば貴族だ。まずい麦粥はふさわしくないんだ。なあ、秋野 今ならイケメンの俺が結婚してやるからな なあ、せめてその料理中の肉だけでもくれよ』

『なあ、中川くん 僕は君を尊敬していたんだよ。君の強さを尊敬して敬意を払っていたじゃないか』

『斎藤くんはサッカーの授業でよくコミュニケーションをとっていたじゃないか?親友だろう』


あまりにも聞き捨てならない言葉を吐くので、警備担当に目で合図した。

『こら 糞奴隷め、痛いだろ、俺様の手が折れるだろうが、痛い、痛い、イタタタターーー』

『お願いです。止めさせてください。お願いします。』


 一応、食堂にいる商店のメンバーに聞いてみる。「誰か、丸い球を蹴って取り合う運動について知っている?」

 「私、知ってますよ。確か蛮族が、戦で切り取った首を生贄の神に捧げる為にする儀式ですよ」

 

『ふざけるな!サッカーはボール一つあれば誰とでも友達になれる平和なスポーツだ!そんな野蛮な儀式じゃない』

取り巻きにボコっとけと命令する平和を愛するスポーツマンですか?笑える。




 しかし、ゲスに付き合うのも疲れる。僕は奴の耳元でハッキリと言ってやった。

 

「野蛮なサッカーしか出来ない(・・・・・・・・・)ゴミはゴミらしく俺の人生に関わるな。わかったか」




 警備担当に指示を出す。「捕縛して強盗として・・・いや待て奴の上司の百人隊長に翌日、贈り物として渡せ」

 「そこの袋に入れて荷物扱いにして他の兵隊に見つかるな」


 「一也くん・・・・」

 「一也よ、同じ日本人に騙されるかと思ってヒヤヒヤしたぜ。二度あることは三度あるってな」

 「さすがに、同じ日本人だからといって借金まで背負わされた経験があるなら三度目は無いよ」



 後日、奴の上司と思われる百人隊長が内密に処理をしてくれたお礼を言いに来た。

 奴の取り巻き連中も部隊内でキッチリと片をつけたらしい。幸か不幸か、軍の内部に人脈ができそうだ。



 異世界ではサッカーしか出来なくて、ラノベすら知らない人は生き残れなかった。


                            -完- 








 

初めての投稿になります。誤字、脱字があったなら優しく御指摘お願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「サッカーのできない~」からの「サッカーしかできない~」のブーメランな台詞。 嫌味なイケメンにかつては弱い立場だったオタクがやり返すというのが、皮肉が効いていて良かったです。 [気になる点…
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