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スリル  作者: 会原 夏武
9/15

9

「おっ!懐中電灯めっけ」

サトシが壁に手をかけて非常用懐中電灯を五つ取り出した。

「ご都合主義のハリウッド映画みたいだな……」

と、呟きながら全員に手渡す。

五人は懐中電灯の明かりを灯して、これぞ、真っ暗。

と、言うような体育館を探索し始めた。

サキ、サヤカ、サトシが一塊。

タイキ、マサトシが一塊となり。

床を照すと、バレーボールやバスケットボールに使用される、色とりどりのラインが引かれていた。

壁には換気用の窓があった。

サトシがそれを開けようとする。

「手伝いましょうか?」

サヤカが訊いた。

「あぁ、頼むよ」

サトシが力を入れながら答える。

サキとサヤカは顔を見合わせて頷いた。

サキは懐中電灯を床に置いた。

光が体育館の中心を照す。

その時、サキは見た。

光に照らし出された何かを。

「ちょっと、待ってて下さい……」

サキは二人にそう言い残し、懐中電灯を拾って、見た場所に歩いていく。

「どこにいくんだ?」

サトシの問いかけには答えなかった。

段々と距離が縮まる。

身体中の全神経が行ってはならないと警告した。

暑くもないのに汗が出た。

生唾をごくりと飲み込む。

その音が耳に反響した。

心臓や身体中の脈拍が信じられない程、大きく動いた。

派手な動きは一切していないのに息がきれた。

手足が震えた。

そのせいで、懐中電灯の光が小刻みに震えて、何かが何かは分からない。

「サキちゃん、どうしたの?」

サヤカが明らかに行動が奇妙なサキを心配して声をかけた。

しかし、サキは振り向かずに一心に何かに向かった。

見てはいけないような気がした。

見たくもなかった。

だが、見なければいけないと言う矛盾がサキの心を支配していた。

「はぁ……はぁ……」

汗が滴となり、頬を伝い、顎から床に落ちた。

……恐い……恐い……恐い……

サキは涙を流した。

何故かは自分でもよく分からなかった。

心臓の音が耳に届いた。

何かが段々と見えてきた。

……見たくない……見たくない!……見たくない!!……

だが、止まらない。

止まれない。

止まってくれない。

止まりたい。

……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……

その時、何かが照らし出された。

その瞬間、「お前のせいだ!!!」

と言う、女が男か分からない、憎しみに満ちた声がサキの頭の中に響いた。

頭の芯を掻き回すような……とにかく、気持ち悪い。

「お前が、お前らが……許さない!!!」

また。

「やめてぇぇぇぇ!!!」

次の瞬間、サキは叫んだ。

髪をボサボサにかきみだしながら。

掌に数本の髪の毛が絡み付いた。

「大丈夫か?どうした?」

見かねた四人が駆け寄ってきた。

しかし、直ぐに『それ』に気付いた。

「何だ……何で……」

タイキが『それ』を見て、呆然として呟いた。

サキは咳き込んだ。

不意に口内に違和感を覚えた。

口に手をやると、血が出ていた。

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