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「おっ!懐中電灯めっけ」
サトシが壁に手をかけて非常用懐中電灯を五つ取り出した。
「ご都合主義のハリウッド映画みたいだな……」
と、呟きながら全員に手渡す。
五人は懐中電灯の明かりを灯して、これぞ、真っ暗。
と、言うような体育館を探索し始めた。
サキ、サヤカ、サトシが一塊。
タイキ、マサトシが一塊となり。
床を照すと、バレーボールやバスケットボールに使用される、色とりどりのラインが引かれていた。
壁には換気用の窓があった。
サトシがそれを開けようとする。
「手伝いましょうか?」
サヤカが訊いた。
「あぁ、頼むよ」
サトシが力を入れながら答える。
サキとサヤカは顔を見合わせて頷いた。
サキは懐中電灯を床に置いた。
光が体育館の中心を照す。
その時、サキは見た。
光に照らし出された何かを。
「ちょっと、待ってて下さい……」
サキは二人にそう言い残し、懐中電灯を拾って、見た場所に歩いていく。
「どこにいくんだ?」
サトシの問いかけには答えなかった。
段々と距離が縮まる。
身体中の全神経が行ってはならないと警告した。
暑くもないのに汗が出た。
生唾をごくりと飲み込む。
その音が耳に反響した。
心臓や身体中の脈拍が信じられない程、大きく動いた。
派手な動きは一切していないのに息がきれた。
手足が震えた。
そのせいで、懐中電灯の光が小刻みに震えて、何かが何かは分からない。
「サキちゃん、どうしたの?」
サヤカが明らかに行動が奇妙なサキを心配して声をかけた。
しかし、サキは振り向かずに一心に何かに向かった。
見てはいけないような気がした。
見たくもなかった。
だが、見なければいけないと言う矛盾がサキの心を支配していた。
「はぁ……はぁ……」
汗が滴となり、頬を伝い、顎から床に落ちた。
……恐い……恐い……恐い……
サキは涙を流した。
何故かは自分でもよく分からなかった。
心臓の音が耳に届いた。
何かが段々と見えてきた。
……見たくない……見たくない!……見たくない!!……
だが、止まらない。
止まれない。
止まってくれない。
止まりたい。
……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……
その時、何かが照らし出された。
その瞬間、「お前のせいだ!!!」
と言う、女が男か分からない、憎しみに満ちた声がサキの頭の中に響いた。
頭の芯を掻き回すような……とにかく、気持ち悪い。
「お前が、お前らが……許さない!!!」
また。
「やめてぇぇぇぇ!!!」
次の瞬間、サキは叫んだ。
髪をボサボサにかきみだしながら。
掌に数本の髪の毛が絡み付いた。
「大丈夫か?どうした?」
見かねた四人が駆け寄ってきた。
しかし、直ぐに『それ』に気付いた。
「何だ……何で……」
タイキが『それ』を見て、呆然として呟いた。
サキは咳き込んだ。
不意に口内に違和感を覚えた。
口に手をやると、血が出ていた。




