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五人は廊下を歩いていた。
まだ、調べてない図書室を目指して。
「あの糞アマ、薬でもやってんのか?」
マサトシはさっきから、サヤカの悪口を言っている。
「止めてくださいよマサトシさん……また彼女の気に触れたらどうするんですか?」
そんなマサトシにタイキが言った。
「知るか、そんな事……」
マサトシが鼻で笑う。
「次は、殺されますよ」
タイキがマサトシの耳元で囁いた。
「ホントに名前だけ?」
サトシがサキに訊いた。
「そうですよ」
サキが頷く。
「ホントに?」
サトシはしつこく訊いてくる。
「疑ってるんですか?制服を着てるから?」
サキが両手を広げた。
「いや、別に」
サトシが素っ気なく言う。
「ただ……」
サトシが言葉を続ける。
「やっぱり、制服を着てるから、ここの生徒なんじゃ?」
サキはうなだれた。
「止めてください。本当に何も覚えてないんです」
サキがサトシに言う。
しばらく、間ができる。
「だけど、性格は変わって無いみたいですね」
サキがサトシに言う。
しかし、サトシは「そうかなぁ……」と、言った。
「何でです?」
サキが思わず訊く。
「こう考えられないか?」
サトシがサキの方に顔を向けた。
「ここに連れてこられる過程において、何者かに記憶を改ざんされているとか」
サキはしばらく考えた。
……確かに、そうかもしれない。
もしそうなら今、ここに存在しているサキと言う人物は存在してないのかもしれない。
「でも、そんな考え方だと、何もかも疑わなければならなくなります」
サキが言う。
「と、言うと?」
サトシが訊いた。
「だから……つまり……今、私達が存在しているこの場所は、現実世界じゃなくて、仮想現実かも」
サキが言った。
「仮想現実か……難しい事を言うね」
サトシが言った。
どことなく、楽しんでいるようにも見えた。
「映画の『マトリックス』は観たこと有るかい?」
サトシが言った。
「観たこと無いです……何で今、『マトリックス』何です?」
サキが不思議そうにサトシを見た。
「あの映画も、仮想現実を舞台にした映画だったからな……カッコいいぞ。キアヌ・リーヴスとかキャリー=アン・モスとかなぁ」
サトシが懐かしそうに言った。
「それは、覚えてるんですね」
サキが言う。
「あぁ、ローレンス・フィッシュバーンとか。個人的には脇役のスウィッチとか、結構好きだったんだけどな~スウィッチはベリンダ・マクローリーがやってたな」
そこで、サキは考えた。
……何でそんな事を覚えてるんだ?しかも、脇役の名前まで。
記憶を消されたなら、『マトリックス』の事など忘れている方が自然だ。
やはり、改ざんされたのか?
いくら考えても答えは見えて来なかった。
「ついた」
サトシが言った。
二階の図書室とプレートが貼られた部屋の前に五人は立っていた。




