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夜だ。
今に始まった事ではない。
五人が目覚めた時から既に。
空には、気持ち悪い程の大きな満月が輝いていた。
雲一つ無い空に、一つだけポツンと浮かぶ大きな月は『異様』としか言いようがなかった。
不気味な風が廊下を通りすぎた。
吹く筈がない風が校舎中を駆け回った。
部屋の全てに風は流れ込み、カーテンを揺らした。
鈴の音が何処からともなく聞こえてきた。
「風……」
サトシが呟いた。
五人は非常口の前から動いていなかった。
一階から順番に調べていったから、ここは最上階の三階。
生暖かい風が、突き当たりの壁に当り、砕けた。
「風が吹いていると言うことは、脱出口が有ると言うことでしょう?」
サヤカが言った。
「さあ」
サトシが首を傾げる。
しかし、出口は見つかっていない。
見落としているだけなのだろうか?
「これから、どうするんだよ?」
マサトシが訊いた。
「さぁ?どうしよう?」
サトシが他人事の様に言った。
「サトシさん、真剣に考えてます?」
タイキが言う。
「考えてるさ?それとも他にいい考えでも?」
サトシにそう言われ、タイキは黙りこんでしまった。
「まだ、全部の部屋を見て回ったらわけじゃないから、全部調べてみませんか?」
サキが提案した。
「そうだな、そうしよう」
サトシが頷く。
「駄目だ!ここに居る方が安全だ!」
マサトシが怒鳴った。
「ちょっと、黙ってて下さいよ」
サトシが言う。
「何だと!?」
「落ち着いて下さい」
タイキが二人に言った。
「貴様は黙ってろ!!」
そんな中、サヤカの様子が明らかに変わってきた。
頭を抱え込んで、顔を真っ赤にさせて……。
「うるさい!!!糞男共!!!!やくたたずの馬鹿野郎!!!」
サヤカが怒鳴った。
「喋るばっかりしてないで!!!少しは考えてよ!!!!糞野郎!!!」
サヤカは頬を真っ赤にさせて喉が裂けるのかと思うほどの声で叫ぶ。
「次にゴチャゴチャぬかしたら、捻り潰してやるから!!!!!!!」
サヤカは肩を上下させている。
その場の空気が凍り付いた。
「悪かった。と、言うことでまだ調べてない部屋を調べるけど、それで良いな?」
サトシが言った。
誰も、反論する者は居なかった。
それは、当然だった。
こうして、五人は歩き出した。
歩いているとき、サキは最後尾を歩いているサヤカに話しかけてみた。
「あの……サヤカさん……」
「ごめんね。私ったらつい……ね」
サキが言い終わらない内にサヤカが言った。
まだ、顔が赤い。
いつものサヤカに戻っていた。
そこで、ふとサキは考えた。
……性格は、忘れてない?
性格を忘れると言う言葉は妙だが、そう言うべきだろうか?
全員、恐らくだが性格はそのまま。
しかし、それも定かではなかった。
何れにせよ今のサキには何も分からなかった。
ふと、後ろを振り向いた。
視線を感じた。
そこには、人が居た。
月明かりに照らし出されて。
じっと、サキ達を見据えていた。
ただ、素直に、怖かった。
サキはそう感じた。
サヤカがきれる所は書いていて楽しかったです(笑)




