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スリル  作者: 会原 夏武
2/15

2

サキは階段を下りていた。

踊り場まで下りたとき、壁に取り付けられている大きな鏡に写る自分と目があった。

そこに写るサキの姿は冬の制服だった。

……私は、ここの生徒?でも何で……。

その時、頭が何かにぶん殴られた様な激痛がサキを襲った。

「うっ……!!」

サキはそのヨロヨロと壁にもたれかかった。

……何か……私は何かを…………

サキの目の前に、今までとは違う景色が広がる。

覚え出せないよ………

目の前には、学生服を着た人々が行き来している。

私は、一体………

激しい吐き気をサキは覚えた。

何かが擦れるような音が耳の奥で鳴り響き、元の景色に戻る。

……あれは、私の記憶?

サキは呆然と立ち尽くした。

私は何を見ようとしていたの?

しばらくその場から動けなかった。


階段の踊り場で学生服姿の女……いや、女の子が壁にもたれかかっていた。

女の子と目が合う。

「えっ……」

マサトシは思わず立ち止まった。

その後からタイキも追い付く。

二人の男は言葉も発せずにただ、立っていた。

「あの……」

女の子が口を開く。

怯えている様だった。


さっきから、二人がいる教室に不気味な音が響き渡っていた。

まるで、何かが崩れている様な音が……。

「ねぇ、これおかしいよ……」

サヤカがサトシに言った。

サトシは黙りこんでいる。

「ねぇ……」

サヤカがサトシの肩を叩く。

「あぁ、確かにな……」

サトシは静かに呟いた。

サヤカは「どうする?」とでも言いたげな顔でサトシの顔を見つめた。


男達の名前はタイキとマサトシと言うことが分かった。

やはり、彼らもサキ同様記憶を失っていた。

一人きりから二人増えて心なしか安心感をサキは感じていた。

「……で、気が付いたらここにいたんです」

タイキはさっきからずっと、喋り倒している。

「ちょっと黙っとれんのか!」

そんなタイキにマサトシが言った。

「すみません……」

タイキは黙りこんでしまった。

少し、歩くと靴箱が並んだ殺風景な玄関に出た。

しかし、出口はシヤッターが下ろされていて、外に出れる状態ではなかった。

「くそ……」

マサトシがシヤッターを荒々しく揺らす。

しかし、乾いた音が響き渡るだけで、びくともしなかった。

「どうするんですか?」

タイキがマサトシに訊いた。

「知るか!そんなこと!」

サキが見るに、マサトシはずっと苛々している。

……何かがあったのだろうか?


「どこにいくの?」

サヤカが前を歩くサトシに言った。

「出口だよ。学校だったら玄関とか……何かあるだろ」

サトシが振り向いた。

その時、サヤカは視線を感じ振り向いた。

立ち止まり、じっと、目を凝らして暗闇を見た。

「何やってんだ」

サトシがサヤカに言う。

しかし、サヤカは答えなかった。

サヤカは見ていた。

二人がいる所の反対側の廊下に、黒ずくめの男を。

表情はよく読み取れなかったが……不気味だった。

「おい」

サトシがサヤカの肩を揺らした。

サヤカは動じない。

何だ……あの人……。

「なぁ……おい!」

えっ……笑った……?まさか……。

「サヤカ!!」

サトシが怒鳴った。

サヤカはびくりと肩を震わし振り向く。

「どうしたんだよ?一体?」

サトシがサヤカに訊いた。

「ごめん……何でもない」

サトシとサヤカはまた、歩き始めた。

………サヤ……カ………

サヤカは振り向いた。

……名前を呼ばれた?

その途端、全身に鳥肌がたった。

男はもういなかった。

不気味な風が身体を撫でた。

不快な音が耳元で鳴った。

満月は最初の位置から動いていなかった。

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