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サキは階段を下りていた。
踊り場まで下りたとき、壁に取り付けられている大きな鏡に写る自分と目があった。
そこに写るサキの姿は冬の制服だった。
……私は、ここの生徒?でも何で……。
その時、頭が何かにぶん殴られた様な激痛がサキを襲った。
「うっ……!!」
サキはそのヨロヨロと壁にもたれかかった。
……何か……私は何かを…………
サキの目の前に、今までとは違う景色が広がる。
覚え出せないよ………
目の前には、学生服を着た人々が行き来している。
私は、一体………
激しい吐き気をサキは覚えた。
何かが擦れるような音が耳の奥で鳴り響き、元の景色に戻る。
……あれは、私の記憶?
サキは呆然と立ち尽くした。
私は何を見ようとしていたの?
しばらくその場から動けなかった。
階段の踊り場で学生服姿の女……いや、女の子が壁にもたれかかっていた。
女の子と目が合う。
「えっ……」
マサトシは思わず立ち止まった。
その後からタイキも追い付く。
二人の男は言葉も発せずにただ、立っていた。
「あの……」
女の子が口を開く。
怯えている様だった。
さっきから、二人がいる教室に不気味な音が響き渡っていた。
まるで、何かが崩れている様な音が……。
「ねぇ、これおかしいよ……」
サヤカがサトシに言った。
サトシは黙りこんでいる。
「ねぇ……」
サヤカがサトシの肩を叩く。
「あぁ、確かにな……」
サトシは静かに呟いた。
サヤカは「どうする?」とでも言いたげな顔でサトシの顔を見つめた。
男達の名前はタイキとマサトシと言うことが分かった。
やはり、彼らもサキ同様記憶を失っていた。
一人きりから二人増えて心なしか安心感をサキは感じていた。
「……で、気が付いたらここにいたんです」
タイキはさっきからずっと、喋り倒している。
「ちょっと黙っとれんのか!」
そんなタイキにマサトシが言った。
「すみません……」
タイキは黙りこんでしまった。
少し、歩くと靴箱が並んだ殺風景な玄関に出た。
しかし、出口はシヤッターが下ろされていて、外に出れる状態ではなかった。
「くそ……」
マサトシがシヤッターを荒々しく揺らす。
しかし、乾いた音が響き渡るだけで、びくともしなかった。
「どうするんですか?」
タイキがマサトシに訊いた。
「知るか!そんなこと!」
サキが見るに、マサトシはずっと苛々している。
……何かがあったのだろうか?
「どこにいくの?」
サヤカが前を歩くサトシに言った。
「出口だよ。学校だったら玄関とか……何かあるだろ」
サトシが振り向いた。
その時、サヤカは視線を感じ振り向いた。
立ち止まり、じっと、目を凝らして暗闇を見た。
「何やってんだ」
サトシがサヤカに言う。
しかし、サヤカは答えなかった。
サヤカは見ていた。
二人がいる所の反対側の廊下に、黒ずくめの男を。
表情はよく読み取れなかったが……不気味だった。
「おい」
サトシがサヤカの肩を揺らした。
サヤカは動じない。
何だ……あの人……。
「なぁ……おい!」
えっ……笑った……?まさか……。
「サヤカ!!」
サトシが怒鳴った。
サヤカはびくりと肩を震わし振り向く。
「どうしたんだよ?一体?」
サトシがサヤカに訊いた。
「ごめん……何でもない」
サトシとサヤカはまた、歩き始めた。
………サヤ……カ………
サヤカは振り向いた。
……名前を呼ばれた?
その途端、全身に鳥肌がたった。
男はもういなかった。
不気味な風が身体を撫でた。
不快な音が耳元で鳴った。
満月は最初の位置から動いていなかった。




