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「最強に遠回りね」
前方に見える職員室を前にサヤカが言った。
「そうカッカするなって。時間はたっぷりあるだろ?」
サトシが言う。
「貴方って人は……」
サヤカが呟いた。
「優秀だろ?」
サトシが微笑む。
サヤカが溜め息をついた。
職員室の扉を開けて、中に入る。
職員用の机が数台向かい合わせで並べられている。
書類が無造作に置かれている。
電話は全ての机に置いてあった。
「さて、どの電話を使いたい?」
サトシが言う。
「どの電話でもいいから早くしろ!」
マサトシが怒鳴った。
「分かりました分かりました。ちょっとふざけただけですよ」
サトシがそう言いながら適当に電話を手に取った。
「どこにかける?」
サトシが訊いた。
「警察よ。110」
サヤカが言う。
「りょーかい」
サトシが言った。
サキはその間に机の書類を見ていた。
運動会の予定表や、生徒会のメンバーの名前、クラス名簿等々がある。
「……ん?」
サキはある本を手に取った。
卒業アルバムだ。
2012年と書かれている。
おそらく、去年の物だろう。
サキはそう思った。
カバーから抜き取り、一ページ目を開いた。
「繋がらないぞ!」
サトシが言った。
「間違えてるんじゃない?」
サヤカが訊く。
「110だぞ!何で間違えるんだ?」
サトシが苦笑いで言う。
「もっかい、やってみてよ」
サヤカが言った。
「えっ……」
サキは卒業アルバムを見たまま固まった。
……何で……この人は……まさか…………そんな筈無い……。
サキは深呼吸をした。
「何で……」
今度は声に出して呟いた。
何でか分からなかった。
彼は裏切り者だったのか?
初めから知っていた?
ここがどこかも。
私達が誰かも。
どうしてここに居るのかも。
信じられない。
信じたくなかった。
しかし、目の前のアルバムが物語っていた。
『コロセ……』
サキの頭の中で女の声がこだました。
『コロセ……コロセ……コロセ……』
段々と大きく。
強く。
恐ろしく。
『コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ………アナタガワタシニシタミタイニ……』
最後は叫ぶような声だった。
『アナタガワタシニシタミタイニ……』
その声が耳から離れなかった。
……違う……私は何もしてない……。
ふと、掌に違和感を覚えた。
見ると、べっとりと赤い液体が付いている。
血だ。
血だ。
血だ。
……嫌だ。
『ヤッチマエ 』
また、聞こえた。
……嫌だ……嫌だ……。
私は何も悪くない。
『ヤッチマエ』
私は何もしていない。
『ヤッチマエ』
私は……私は……私は……。
いつの間にか、目の前に血塗れの女が佇んでいた。
サキを物凄い形相で睨む。
「何もしてない!!!!」
サキが叫んだ。
その瞬間、目の前が真っ暗になり、後ろに倒れこんだ。




