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「何だ、これ」
タイキが言った。
しかし、誰も分かる者はいなかった。
『それ』は男の死体だった。
右腕は千切れて、血液や肉片が辺りに飛び散っていた。
顔は見るも無惨に潰れていた。
「嫌……」
サヤカが目を覆った。
「あっ……」
タイキが死体の左手を指差した。
「何かを、握ってるみたいです」
そう言われて、皆左手に注目する。
確かに、拳を強く握りしめていた。
サトシが近付いて、左手を懐中電灯で照らす。
「やってみるか……」
そう言って、しゃがみこみ、左手に手をかけて開こうとする。
しかし、相当強く握り締めているのか、開く気配がない。
「よくやれるね、そんなこと……」
サヤカが顔をしかめた。
「不謹慎か?」
サトシが立ち上がりながら言う。
「まさに、不謹慎」
サヤカが言った。
「で?何だ、あの死体は?」
マサトシが訊いた。
「さぁ、たぶんここに居る皆分からないと思いますけど?」
サトシが言う。
マサトシは何か言いたげな顔をしたが、なにも言わなかった。
「とりあえず、ここから出ましょう。真っ暗だし……恐いです……」
サキが控え目に言う。
「分かった。皆、ひとまずここから出よう」
サトシが言った。
タイキは考えていた。
あの死体は何なのか。
何であんな所にあるのか。
「タイキさん?」
サキに言われ、タイキは皆の後をついて、体育館の外に出た。
廊下の壁にサキはもたれかかっていた。
ふぅー、と溜め息をついた。
「大丈夫?」
サヤカがサキの肩に手をかけた。
「はい……」
サキが力なく答える。
「さて、これからどうする?」
サトシが言う。
「あんた、この状況を楽しんでないか?」
マサトシがいきなり言った。
「楽しんでる筈無いじゃないですか」
サトシが両手を上げた。
「何だと!?」
と、言うマサトシをサヤカがキッと睨む。
マサトシは「うぅ……」と唸り引く。
「あっ……」
サキが何かを思い付いたように呟いた。
「どうしたの?」
サヤカがサキの顔を覗きこむ。
「電話……」
サキがポツリと言う。
「携帯を持ってるのか?」
マサトシが言う。
「持ってません。ここの固定電話の事です。職員室に行けば有るでしょう?」
サキが言った。
「確かに」
タイキが言う。
「行くか?」
サトシが言って歩き始めた。
「職員室ってそっち?」
サヤカが訊いた。
「勘だよ」
サトシがぶっきらぼうに答えた。




