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主人公殺しの結末


最後、一瞬の隙をついて攻撃を当て、服部を撃破した


服部を殺し、昔からライバルだったコイツをようやく倒す事が出来たのだ


ほぼ全てが引き分けだった服部についに勝つ事が出来た


ようやく、このRPGの世界で最強の主人公を殺したのだ


殺してやった・・・


のだが、なぜだ?


なぜなんだ?


今あるのは、清々しい達成感などではなく、空っぽの感情と虚しい何かだ・・・


何もない真っ黒な球体のような感情


無価値な球体


どうしてそう言う感情が生まれてくるのだ?


本来、もっと喜んでもいいハズなのに・・・


大笑いしてやってもいいハズなのに・・・


罪悪感?いや、そんな訳が・・・・・ない


・・・分からない


俺にはその理由が分からない


服部を見て達也はそう感じていた


血まみれで大きく地面にめり込んで動かなくなった服部を見ながら・・・


まるで乾いた風が今の達也の感情を表しているかのように


「俺は・・・」








             ------「主人公殺しの結末」------




「何の音だ?」


達也はすぐに異変に気がついた


達也が服部を殺して、考え事をしている矢先の事だったからだ


ドタバタと大きな音がしただけに


ボーっとして気がつかないような事はない


それにリアルに感じる痛みの強さにボーっとする事など出来なかった


現在、魔力の残量より、受けたダメージの方が深刻だ


魔力は残っている(それでも半分は切っているのだが)


しかし、傷の方は一刻も早く治療しなければ、危険な状態だった


そして、大きな音が段々と近づいてくるのが分かった


姿が見えてくるようになり、達也は決して良くない状況だと理解した


「あれは・・・」


砂煙を撒き上げながらやって来たのは他でもない


他の大勢の主人公達だ


恐らく何百、いや、何千といる主人公


服部の手先なのか、服部と戦う事を知っていてやって来たのかは分からないが


レベルスコープが四方八方からやって来る主人公に反応している


レベル1から高レベルまで様々な主人公達


武器、防具、装飾品、スキル、魔法の全てが違う主人公達がやって来る


確認している間に次々とレベルスコープの表示が変わっていく


「くそっ、今コイツらと戦う訳には・・・」


数が多すぎる!!


どう考えても自分の足で逃げる事は出来ない


四方八方からやって来る主人公達に死角は無い


ライズアップで大きくジャンプをする容体でもない


ジャンプをした瞬間、死んでしまいそうだ


それに、空中に居る際に遠距離魔法で狙われる可能性もあり得る


くそっ、どうすれば・・・


!!!


達也は思い出したかのように通信機を取り出す


通信機を魔王につなげる


「魔王!!ブラックホールテレポートを使ってくれ・・・!!」


だが、このセリフを言った直後に達也は思い出す


魔王は・・・


魔王は俺が・・・俺が殺していた!!くそっ逃げられねェ!!!


つい最近自分の手で殺したばかりじゃないか!!!


くそっ


ならば


「バハームート!!!」「・・・・」


いや、そうだった


バハームートはもう居ない


いや違う、バハームートはだけではなく、ミクシーやフローライトもいない


いない?


違うだろ!?



皆、俺の手で殺したんだ!!!


俺を


俺を助けてくれる味方が一人もいない!!


達也は段々焦り始める


突如、自分の声が聞こえた


それは闇に堕ちる前の自分の声


善良だった自分の声


(敗因は復讐にとりつかれ、仲間まで殺した事だ、達也よ)


それは服部にも言われた事だ


「くそっ、くそっ、くそォォ!!!!」「何で何だよ!!!」


俺は!


俺はただ父さんと一緒に居たくて・・・そんな父さんを殺した奴が憎くて・・・


誰かと一緒に居たくて・・・俺と同じような奴と居たくて・・・


・・・・


ああ、でもそうか・・・


ミクシー、フローライト、バハームート、魔女に魔王・・・


せっかく出来た仲間を俺は殺したのか・・・


復讐にとりつかれ仲間を殺したのか・・・


今更になって凄く後悔した・・・


達也はつぶやく


「ライズアップ・・・」


だが、最後まで戦おう


仲間殺しの前に、俺は主人公殺しだ


最後までその仕事を全うしよう


達也は向かって来る主人公達


様々な武器に、様々なスキルや魔法


それが一斉に飛び交う中、達也は一人一人を殴り飛ばしていく


ドカッ!!!


今のは恐らく、レベルの低い主人公


一撃で遠くまで吹き飛んだ


遠くで砂煙を撒き上げ、動かなくなった所を見ると絶命したのだろう


「主人公殺しを殺せーー!!!!」主人公達の声が大きく聞こえる


火の塊や水、風、雷が飛んでくる


それを体を傾け避ける


そして、その魔法使い達を殴る


次は目の前のレベルの高い主人公を殴る


他の主人公を殴る


ひたすら殴る


殴る!殴る!!殴る!!!


手を血に染めながら主人公達を殴り飛ばしていく


目の前の主人公の顔面を殴り飛ばした


時だった


嫌な感触が背中に伝わる


ズボッ!!!


主人公の剣が達也の背中に刺さる


ライズアップ状態なので貫通こそしなかったが、突き刺さった


「ぐっ・・・」熱い


ジンジンと背中が熱くなっているのが分かる


一瞬達也がひるんだのを主人公達は見逃さない


一斉に魔法が飛んでくる


それを両手を前に出しガードする


そして、また殴る


達也は主人公達を殴り飛ばす


パンッ!!!


今度は銃声がした


達也の太ももから血が出ている


遠距離から狙撃している主人公が居たのだ


ライズアップ状態で貫通したと言う事はレベルの高い主人公だ


「ぐあ・・・」


だが、達也は踏ん張って攻撃を止めようとしない


一人で何人もの主人公の相手をする


血を流そうが、骨が折れようが、内臓が破裂しようが・・・


そんな戦いを何十分かした時だった


ガクン!!!


ついに達也は膝をついてしまった


体が言う事を全く聞かない


魔力が底を尽きかけている!!


これではもうライズアップは発動できない


ガクガクと手足が震えている


使いすぎによる疲労と魔力不足による痙攣


目もかすむ中


動けなくなってようやく自分の怪我を確認した


酷いものだ


背中には剣が四本、ナイフが二本刺さっていて、両腕は殴りすぎによる骨折、足は銃弾や斬撃によりボロボロだった


見るも絶えない姿だが、実際には外部より内部の方が危険な状態だった


服部戦で無理をした体


その怪我が悪化し内臓は破裂し、ろっ骨も何本も折れていて臓器に刺さっているため、生きている方がおかしい状態だった


地面に散らばっている血のほとんどが自分のものだろう


「ゴホッ、ゴホッ・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・」


大きな血の塊が地面に落ちる


バタタッという生々しい音で地面を濁していく・・・


そして、本当に死ぬ間際になって後悔した


「ハァ、ハァ、ごめんな、皆・・・」「あの世に行ったら、また仲間になってくれるか?」


達也は空を見上げる


今にも泣き出しそうな空は、まるで今の自分の心の中のようだ


俺は、間違っていたんだなぁ


達也は心の中でそう思い目を閉じた


その姿は主人公達に観念したかのように見えた


「今だ!!!殺せぇぇぇ!!!!」その隙を主人公達は見逃さない


最後に聞いたのは主人公達のその言葉だった


色々な個所から痛みが走り、意識が遠退いていった


ハハッ


結局主人公達は勝つ運命なんだな・・・


達也は地面に倒れ、崩れていった


すでに大雨が降っており、大量の血を洗い流しているようだ


水と血がにじみ、地面に溶け込んでいく


乾いた土地に久しぶりに雨が降ったのだ


まるで、達也と服部の戦いを歴史に残すかのように


両者が死んだ戦いは今後も語られていく事だろう



・・・

・・・・





・・・

・・・・




白い世界


奥も、上も、下も全てが真っ白な世界


自分がどのような向きで立っているのかも分からない


それに、蛍のような光が飛びまわっていて幻想的だ


俺以外に誰も居ない、みたいだ


ここは死後の世界か?


「俺は死んだのか?」


死んだらここに来るのか?


状況がよく分からないが、急に不安になってきた


さみしい、こわい、なにもない・・・


「誰も・・・居ないのか?」


死後の世界ならば、なぜ俺以外の生き物がいないのだ!!


不安で押しつぶされそうになる


上下左右の分からない白い世界を達也は歩きだして行った


何もない


どこに行くのかも分からない


無だ


こんな所にずっと居るのか?


いや、これこそが仲間殺しの最大の罰なのか?


だとしたら仕方がない


俺はそれくらいの事をしたのだからな


一生独りで孤独を味わえって事か・・・


受け入れよう


・・・

・・・・


達也は座り込み顔を下に向ける


時間経過も分からぬこの世界にすでに精神はボロボロになっていた


その時だった


「たつやーー」


「達也!!!」


「達也」


「達也君」「達也君!!」


「達也」


遠くから俺を呼ぶ声がした


達也は顔を上げ、辺りを見渡す


すると、背後から彼らがやって来たのだ


「ミクシー、フローライト、バハームート、魔女、魔王」


達也は仲間の姿を確認する


いや、もう一人いた


親友の姿もあった


「・・・服部!!」


遠くに見える彼らの元に達也は駆け出して行った


「俺が間違っていた!!本当にすまなかった」


達也は皆にそう謝った


それ以外の言葉は思いつかなかった


ポン、と肩に手をやったのは服部


笑顔を達也に向け、彼は言った


「良い勝負だったな!!だが、ここではそんな争いをする必要は無いみたいだぜ」


達也は涙目になりながら「ああ」とうなずいた


皆は俺を温かく向かえてくれたのだ


ミクシー達も殺されてないかのように、接してくれている


もう一度、達也の肩をポンと叩いたのは服部


「もう一人いるぜ、お前に会いたがっている人が」


服部はそう言うと向こう側に指を指した


何も見えないその先に、誰が居ると言うのだろうか?


「行って来いよ」


達也は訳の分からぬまま、言われた通りの方向に進んで行った


進んでいくにつれ、懐かしい気分になった


まさか!?


姿が段々見えてくる


すぐに分かった


「父さん!!!」


「久しぶりだな、達也」「背ぇ伸びたな!!」


「あのね!!」


・・・

・・・・


決戦の地に降り注いだ雨は止み、雲の隙間から光が照らされていく


その光は達也と服部を照らし、彼らを明るく見守っているようだ


そして、二人の顔は安らかな顔をしていた


先程の争いなど、まるで無かったかのように、綺麗な顔で眠っていた


気持ちの良い夢でも見ているかのような、そんな顔をしていたのだった









はい、「主人公殺しの主人公」の本編はこれで最終回です


ですが、私なりにもう少し書きたいと思ったので連載終了にはなりません(笑)


とりあえず、9月15日(土)にデータファイル4と5を掲載予定です


魔物と主人公を収録していますので、攻略本のように読んで下さい^^




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