イーストエデン
魔王城で修業してから三日目の朝、達也は魔王の部屋で目覚めた
相変わらず奇妙な部屋の天井を見て目覚める
デン、と投げっぱなしにしてあるスキルの杖を触った瞬間倒れたのが昨日
魔料を使い果たした後にスキルの杖に興味本位で触れたら、体の力が抜けていつの間にか朝になっていた
恐ろしいものだ
魔王がしばらく触れられなくなる、と言っていたのが分かった
こんなものを扱う魔王が化け物なのだ
とはいえ、今は魔力が回復しているのでもう1度触ってみたいという気にならなくもないが無駄な魔力を消費するので止めた
ふわぁぁ~と大きなあくびをして達也は起き上がる
頭をボリボリかいてベッドから出る
奇妙な本やホルマリン漬けを見た後、部屋を出た
変な趣味だな、魔王って・・・
「達也君、よく眠れたか?」
すでに魔王の椅子に魔王は座って、側近魔女が付き添っている
魔王は自分の部屋を達也にとられたためどこで寝ていたのか分からない
ていうか目にクマをつけている時点で眠れていないんだな
自分の所じゃないと眠れないタイプなんだな・・・ごめんよ(笑)
「ああ、アンタの所でよく眠らせてもらったよ」
「・・・うん、ワシ昨日、寝てないからね?」「とそれは良いとしてそろそろ出発した方がいい」
「そうだな、四天王の間で騒がれる前に次の場所に行かないとな」
「四天王が次に集まるのが明後日という事が分かっておる」「それまでに、うーむ、次はイーストエデンが近いかの・・・うむ、イーストエデンに行く事だな」
「そうするよ」「じゃ、世話になった!じゃあな」
「無理はするなよ、達也君」
達也は後ろ姿で手を振り、分かってるよ、という合図を送った
イーストエデンは魔王城からノースエデンに行き、さらに進んだ所にイーストエデンがある
というか1日で行けるような距離ではない
間に合うのかな・・・
まあ、四天王召集が明後日みたいだから普通に寄り道さえしなければ大丈夫か・・・
達也達は魔王城から出てすぐにある草原を歩いていた
この場所自体見つかりにくいから主人公達は大変だな
魔王は今まで何人の主人公達を返り討ちにしてきたんだろうな・・・
主人公には結局やられる運命とか言ってはいるが、まだ負けなしだろう
・・・
・・・・
「魔王城」
魔王と側近魔女は話していた・・・
「魔王様、達也君の次の相手誰でしょうかね?」
「うむ、アランを倒したとなると、リオンかカーティスじゃないのか?」「昔ワシが殺してから変わった残りの四天王の名前は知らないけどな」
「リオンかカーティス・・・どちらも一筋縄ではいきませぬ」「魔王様も向かわれた方がいいのでは?」
「ワシはそんなに過保護ではないぞ?それに最終目標は人間界から来た、白銀服部とか言う奴だからな」
「しかも、今の魔力が少ないワシが行けば足手まといだな・・・多分お前より弱いぞ?今」
「そうですね・・・!!」
魔女がキッパリ言う
「いや、否定してよ!嘘でもいいから、魔王様の方が強いって言ってよ」
「いやいや、魔王様がダメな時くらい、あちしがこの城をお守りします」
「頼もしいけどさ、何?ダメな時って?しかもワシじゃなくて城を守るのな・・・魔王は二の次なのな・・・」
魔王は少しだけ涙目になってそう言った
しかし・・・リオンにカーティス、どちらも強敵だ
ワシも昔、戦った事があるが・・・2人同時だったら負けていたかもしれない
達也君・・・くれぐれも無理はしてはいかんぞ!
・・・
・・・・
マイペースにゆっくりなペースで達也達は歩いていた
天気の良い日くらいゆっくり歩いてもいいよな?
魔力が最大値の60%くらいだから主人公に出会ったらこの2人に任せる必要があるな・・・
もっとも、レベルの高い主人公の場合、俺が戦わないといけないが
「今日、主人公と出会っても基本お前達に任せるから、頼んだぞ」
「うんーーー!まかせて」
「達也は温存しなきゃね」
「ああ、だが、ピンチになれば俺も加勢するから大丈夫だ」
そんな事を言いながら達也達はゆっくり進んで行く
サクサクと草を踏みながら歩いていて、達也は昨日の主人公や少し前のパーティー主人公を思い出す
この草を血まみれにしたんだっけ?
今更、主人公を殺すのに抵抗はないが・・・なんだかな
いやいや、四天王殺しを迷っている訳ではないが、休息が欲しいな・・・
精神的に回復がしたい
アランとの戦いで常に死が隣合わせなのが分かったからな・・・
次の戦いもきっとタダでは勝てない・・・
それどころか気を抜くと墓の中だ
気を引き締めないとな
と達也は晴れた空を見上げながら考えていた
「達也、あまり思い詰めるのはよくないわよ?キスしてあげましょうか?」
「ブッ、・・・なんでそこでキスになる!?」
「いや、私のキスには精神回復の作用が含まれているのよ!ハグでも得られるけど」
コイツ、ワザと俺にキスって言っているんだな、ハグではなく・・・
「たつやーーきすしてあげようか?」
お前もかよ!
「ミクシー、そういうのは大人になってからしなさい」
父親かよ、自分!
・・・・
俺を気遣ってくれているんだな・・・ありがとうな
その気持ちだけで十分だ
・・・
・・・・
「ノースエデン」
たった数日間、目にしていないだけなのにどこか懐かしい
アランとの激闘で変形した土地はそのままだ
アランという1人目の四天王をここの草原で倒し、今から次の四天王を倒そうとしているんだ
その前に、達也はノースエデンに寄り道することにした
目的は一般人の安全確認
数日前、アランを倒した後ネオゴブリンと言う魔物にこの町に手を出すなと言っておいた
それがきちんと守られているのか確認する必要がある
もし一般人が1人でも死んでいるようならそれなりにオトシマエをつけてもらう必要がある
・・・・
ノースエデンに入ったがこれと言った変化はない
普通の人々も生活しているし、数日前となんら変わりない
近くに居た老婆に、ここ数日で変わった事はあったのか?と聞いても、何も、と答えた
安心したよ、魔物も案外律儀なものだ・・・
俺が殺したいのは主人公であって、人間ではない
ましてや一般人など殺すなどただの人殺しだ
ノースエデンに数十分ばかり寄り道をして、草原に出て行くと魔物がいた
「達也様、久しぶりです」とこの間のネオゴブリン
そういや俺、名前教えたんだっけ?まあ、どうでもいいが
「ああ、お前達がきちんと約束を守っていて安心した」
「そりゃそうですよ!別れ際に貰った金貨のおかげで食糧には困りませんから」
いつから敬語になったんだ?と思ったがまあいいか・・・
「そうか、俺達はもう行くから、よろしくな」
「行くって、四天王を倒しにですか?」
「ああ、2人目の四天王を殺しに行く」
「気をつけて下さい、ここ数日で調べて分かった事があります」
どこで調べたんだと感心した
「なんだ?」
「達也様が倒された四天王アランは、四天王の中でレベルが1番低いです」
なん、だと!?
あの強さで1番低いレベルとは!!
「それは本当か!?」
「間違いありません、ですので、くれぐれも無茶をなさらないよう」「本当は手伝いたいところなんですが、我々ネオゴブリン程度では足手まといになるだけなので・・・」
「いや、情報助かった・・・恩に切る」
「では、気をつけて下さい」
ネオゴブリンが深々と頭を下げているのを見て、つくづく礼儀をわきまえた魔物だなと思った
最近の若者より良いんじゃないのか!?と心で少し笑った
達也はくるりと向きを変えてイーストエデンに向かった
しかし・・・あれだけ苦戦して倒した四天王アランが1番レベルが低いとは・・・
もちろんレベルが全てではない事はよく分かっている
聖属性魔法を使うカルヴァンもレベルこそ21だったが、実際には30代主人公とも引けを取らないだろう
いや、近距離主人公であればレベル30代でも敵わなかったかもしれない
だから、レベルなど目安でしかない
ないのだが・・・
考えても仕方がないか・・・
「日が暮れてきたな」
「そろそろ休む?」
「やすみたいーー」
「そうだな、今日は野宿だな」
達也は岩の陰に腰を下ろす
ここなら見晴らしがいい上に岩で姿が隠れるため安全だ
主人公ならレベルスコープが反応する(そもそも主人公である人間が人間を襲う事は無いが)
魔物なら夜は活動が鈍くなるものが多いので大丈夫だろう
達也はしばらく流れ星を眺めながら横になった
スッと目を閉じていたら、いつの間にか眠りについていた
・・・
・・・・
次の日
珍しい事にいつもお寝坊さんのミクシーがもう目覚めていた
フローライトも起きているようだ
荷物に入れた食料を食べ、早々に出発することにした
明日が四天王が集まる日なら、今日中にイーストエデンの四天王と戦う事になる
ふんどしを締めなおす必要があるな・・・
魔力も全回復している、準備はバッチリだ
・・・
・・・・
そろそろ昼になる頃
時間にして4時間以上は歩いたか・・・
大きな街が見えてきた
ノースエデンとは大きさの違う街
そして綺麗に装飾されたような街だ
女の子だけが集まっているような所だな・・・男だけでは凄く入りづらそうな・・・
「もしかすると、ここがイーストエデンか?」
達也は通信機のマップを確認する
・・・やはり、ここがイーストエデン
確かに、女の子からすれば楽園だな、と達也は笑う
デコレーションだらけのシャレた街だ
「あら、綺麗な街ね・・・ここがイーストエデンなのかしら?」
「ああ、着いた」「気を抜くなよ?ミクシー、フローライト」
「すごいおしゃれなまちだね!!」
本当にこんな所に四天王が住んでいるのか?
そう思わずにはいられないほど装飾されている
だが、近辺には魔物の姿すらないから、そうだろうが・・・
とりあえず街に行くか・・・
街の中に入るととにかく女性の姿しかなかった
もしかすると、女性しか入ってはいけないのか?
近くの若い女性に聞きこむ
「すいません、ちょっと聞きたい事が」
「はい?何が聞きたいの?」
優しそうな人で良かった
「ここは女性だけしか住んでいないのか?」
「そうよ、ここイーストエデンは女性だけの街で、男性の方は立ち寄ることは出来ても3日以上滞在する事ができないのよ」「それ以上滞在すると天罰が下るわ」
天罰って・・・殺されるって事か?
「そんな事、滞在期間などどうやって分かる?」
「あら、それは四天王リオンさんが管理しているのよ」「魔法なのか何でかよく分からないけど」
四天王リオン!!!!次の相手は女か!!!!!
「だから、アナタもこの街に入った瞬間からリオンさんに管理されているハズよ」
しまった!!!それはすなわち、敵の大将の陣地に堂々と乗り込んだようなものじゃないか!?
フローライトに偵察に行かせるべきだった!!!
その瞬間、その後悔は的中する
ストン
後ろからハイヒールがコンクリートに当たる音がした
!!!!!!!!
達也は振り返る
四天王、リオン!!!
「フフフ、アナタが勇者狩りの人ね・・・カッコいい顔してるじゃない?」
リオンは達也と話している女性を手で「向こうに行ってなさい」と合図する
それを見た女性は、この男が危険な人物と判断し、慌てて逃げ出す
・・・・
寒気がした、こんな女初めてだ!!
この口調は絶対の自信があり、俺の事を今から「確実」に殺すと言っている
「アンタこそ四天王の1人なんだろ!?」
「ご名答!私は四天王で最強の魔法使いリオン、以後、お見知りおきを・・・と言ってもこれから私に殺される運命だけどね」
って事は、四天王で最強の魔法使いってほぼ全世界で最強じゃねーか!!!
「あ、でもね!ここでやると私の造ったイーストエデンがめちゃめちゃになるから外で戦うの!」
一方的だが言うとおりだ
「だな・・・一般人に被害が及ぶといけないからな」
なんて悠長に四天王と会話してんだ・・・
「いやいや、一般人より私の造った街が壊れる方が問題なの!!!」
コイツ、アランと違い頭がおかしいのか!?
主人公を殺す立場の俺でさえ、一般人に気を遣うというのに、本来人間の味方である勇者がそんな事を言っていいのかよ?
そんな事を思いながらイーストエデンを出ていった
周りの女性は陰から、何事なの!?と言う風に覗いていた
・・・・
達也達とリオンは数日前と同様、草原に出る
「カーティス、悪いわね!コイツ私が殺しちゃうから!!」
「さあ、行くよ!!」
そう言いリオンは杖を上にかざした
恐ろしく強力な魔力が込められているのが分かる!
ヤバい!!!
ピピ
「リオン レベル66
武器 ソーサリーロッド スキル 魔力消費半分 追加属性付加
防具 魔反射の美服 魔法 全属性上級魔法 メテオレイン
装飾品 ソーサリーピアス 」
「来るぞ!!ミクシー、フローライト!!!!」




