バージョンアップパーティー
闘技場受付
「こんにちは、こちら受付カウンターです」「ファイター希望の勇者さんですか?」
ニコニコと満面の笑みで受付嬢はそう言う
こういうのが女性なのは戦いの前に緊張をほぐすためなのか?
「いや、違う」「ただの観戦者だ」
仮にファイター希望と言って登録されたら名前が残るからな
ディーアイを殺した時に証拠になりかねない
「運営者ってどこにいるんだ?」
流石に質問がマズイか?
「そのような質問にはお答えできません」
受付嬢はスパッとそう答える
やっぱりそうなるのか・・・
「じゃあファイターになった時に控室とかはあるのか?」
「はい、ファイターに登録していただくと第2部室からスタートしていただきます」
「その後、ランキングが上がるにつれ第1部室へと昇格できます」
なるほどな・・・
「へぇ~、ま、ファイターじゃないから関係ないけどな」
「分かりました、では観客席の番号は207、208、209です」「お間違えのないようご注意ください」
「どうも」
そう短く言い達也達は受付カウンターを後にした
ミクシーもフローライトも怪しまれずに突破
受付嬢は笑顔だったからバレてはいないだろう
さてさて、まずは闘技場でどのような戦闘が行われているのか見るか・・・
結構高い場所の席に座る事になった
ドアを開けても誰もこっちを見ない
これから始まる試合に観客全員が魅了されている感じだ
馬鹿馬鹿しい・・・
しかしまあ、周りの様子が良く見える
結構広いな・・・改めてみると
「今日はディーアイさんが特別に審判をするそうだぞ」
「あの運営者のディーアイか!?」「凄いな!!」
という会話が耳に入った
ディーアイが審判?
どうやら俺は運がいいみたいだ
上手く行けば今日中にでも殺せるかもな
ピピ
レベルスコープが頻繁に反応している
それもそうか、観客にも主人公がいるみたいだから
達也は試合が始まるのを他の主人公を観察しながら待っていた
ヒュルルルル、ズドォン!!!!
なんだ!?
大きな花火のような音がした
胸を大きく叩きつけられたかのような振動が響き渡る
それと同時に試合場に人が登って来る
「本日の試合は勇者レイVS牙獣ドッグファングだーーーー!!!!」
「本日の審判を務める運営者のディーアイだ!!!よろしく!!!」
アイツがディーアイ・・・
観客はディーアイが出てきて、試合よりそっちの方に歓声が上がっている
この闘技場の運営者だからそんなもんか・・・
「じゃあ、早速試合を始めるぜ」「レディ、ファイ!!!!」
ゴオォン!!
大きなゴングが鳴る
ったくこんなもん見ても不快なだけだな
ミクシーやフローライトもいい顔をしていないし
違う種別の魔物とは言え、不快なんだろうな
達也達はあまり見らずにいた
むしろこの後のディーアイに注目しておかないと
数十分間戦った後
カンカンカンカンーーー
ゴングが鳴る
「勝者、レイ!!!」
ワァァ~~と観客がわきたつ
くだらん・・・
「ディーアイを追うぞ!!」
審判を退場したディーアイを追跡する
多分闘技場観客席を出て、控室がある廊下へ向かった
社長室でもあるのか?
速足で怪しまれないように追いかける
ピピ
レベルスコープが反応している
ディーアイのだ!!
これで追跡できる
ディーアイは倉庫のような部屋に入って行った
好都合、というか本当に俺は運がいい!!死神でも憑いているのかもしれない
密室で殺せば誰かに見られるという事もない
そのまま達也達は倉庫のような部屋に追いかけるような形で入って行く
バタン
「おや、観客がこんな所までどうしたんだい?」
ディーアイは動じる様子もなくそう言う
「ディーアイ、アンタを殺す」
「ハハハ、この俺を?」「そんな事が出来ると思っているのか?」
「出来ると思わなければそんなこと言わないだろ勇者さんよ!」
「ん?お前、もしかして噂の勇者狩りか??」
「・・・いいだろう相手をしてやる!!」
話の早い死にたがりで助かる
ピピ
「ディーアイ レベル30
武器 ハーベスト スキル 威嚇、パワージェム、ライトフットワーク
防具 アイアンシリーズ 魔法 パワーライズ、捕獲弾
装飾品 ハイパワーリスト 」
完全なパワータイプか・・・
「逃げ出すなよ?勇者狩り!!」
ハッ、そのままそのセリフ返すぜ
ディーアイはダッと駆け出し達也に斧で切りかかる
まずはわざと喰らってみるか
もちろん斧なんかをモロに喰らうと死ぬから、かする程度に
スパン
達也は腕にわざと斧をかすらせた
もちろんこうしたのには訳がある
フローライトのキュアキスの治癒力を確かめたかったのだ
まあ、コイツを殺した後でいいか
「ハハッどうした?いきなり攻撃を喰らうようじゃ俺には勝てんぞ?」
雑魚は黙って俺に踊らされていればいい・・・
「ミクシー、分裂してくれ」
「はいよ!」
初めて見るミクシーの技
本当は事前に見ておきたかったがまあいい
ミクシーの体がみるみる分裂していく
「ハハハ、そこのチビはスライムだったか!!魔物を従える能力があるのか?」
分裂をするがミクシーの大きさは変わらない、分身と言った方が近いだろう
中々便利な能力だ
その隙にフローライトは地面に潜る
ボイン、ボイン、ボイン
複数の分裂ミクシーがディーアイに向かって来る
「甘いわ!!」
ディーアイは斧であるハーベストを振り回し分裂を消していく
耐久力はないな・・・ほぼ一撃で分裂した分身体は消えるっと・・・
達也は戦闘データを叩きこんでいく
もちろん、今後の戦いに生かすための
ディーアイは実験体でしかない
スッとディーアイが分裂ミクシーに気を取られている内に背後にフローライトが現れる
そして、球型の水を首から上にスッポリと覆う
「ぐボッ!?」
当たった!!こうも容易く当たるとはカルヴァンより弱いんじゃないのか?
「フローライト!!」
「分かってるわよ」
フローライトは大きく力を溜める
中級魔法から、バージョンアップで上級魔法になったフローライト
「喰らいなさい」
フローライトの大波を思わせるかのような水魔法にディーアイは潰される
ドシャァァン
今の内に分裂ミクシーに手榴弾をありったけ持たせる
死ね!!!
「くそっ!!なんて規模の魔法だ!!!」
ディーアイの顔にはもう球型の魔法は解除されていた
ミクシー分裂体が一斉にディーアイに向かって来る
「何を持って向かって来るんだ!?」
「!!」「手榴弾!!!」
気がついた時にはすでに遅い
「さようなら」
ズドォォォン!!!!
複数の分裂体に持たせた手榴弾が一気に爆発する
ディーアイは跡かたもなく消えて逝った
「・・・・あっけねぇ・・・」
「所詮目立ちたがり屋の糞だったって訳か・・・」
なんだかレベル30だというのに拍子抜けだったな・・・
さて、騒ぎが起こる前にこの街を出るか・・・
運営者を殺したから、しばらくは闘技場は休みになるだろう
また今度闘技場本体を潰してやるから覚悟しておけ!
「なんだかあっけない戦いだったわね!」
「うんーー、よわかったね」
「そうだな、だがレベル30程度の主人公でハシャギすぎるなよ?」
「それとフローライト!!さっきのこの傷をキュアキスで治してもらっていいか?」
「ええ、もちろんよ」
そう言いフローライトは達也の頬にキスをする
「キュアキス!!」
チュッ
わぁぁお!!
やわらかい唇!!
彼女のより3倍くらいいいぜ(嫌みとかじゃねーよw)
するとみるみる腕に付いた傷が治っていく
普通に放っておけば一週間くらいの傷でもキュアキスは治す事ができるのか・・・!
便利な魔法だな
「助かった!」
「いいえぇ、キスが欲しかったらいくらでもしてあげるわよ?怪我をしていなくても」
何か飲み物を飲んでいたら吹き出していたな・・・
「いや、いいよ・・・」
魔王の気持ちが分からんでもないな
ん?通信機
魔王からだ!噂をすればだな・・・
「達也君、ワシの魔力が回復した」
まさか!!
「2つ目のスキルを会得できるぞ」「どうする?」
ついに来たか!!達也の心が躍る
「もちろん、会得するから」「ブラックホールで迎えに来てくれ!!」
「もうスキルは決めてあるのか?」
「ああ、もちろんだ!!」
これで俺もさらに強くなれる
このスキルがあれば四天王とも戦える!!
達也は子供のようにワクワクしながらブラックホールを待った




