会話
1日目16時28分
俺達は相変わらず2列になって歩いていた。順番は変わっていない。
ハル・カナ
俺・エリ
ケン・マミ
ノリ・ユイ
エミ・シン
「エリ、大丈夫?お腹は空いてない?」
エリの後ろからマミが話しかける。
「…うん…」
「顔色、よくないな。また吐き気きたら、遠慮なく言えよ」
俺はエリの顔を覗き込みながら言った。
「…うん…」
エリは相変わらず呟くようにしか返事をしない。先ほどから、エリの左手の人差し指には、白色布切れのマスコットがついている。大きな頭に短い手。目はない。
「ねぇ、それ何のキャラクター?」
マミが聞いた。
「…ミイラ」
…怖ぇよ。
「…可愛いでしょ」
いやいや…怖ぇよ。
「ねぇ、あんたって、頭いいのね」
ユイがノリに話しかける。
「んぁ?そんなコトねぇよ」
「生徒手帳見りゃわかるって」
「そういうお前も賢いくせに」
「あたしの学校知らないじゃない」
「……まぁな」
へぇ、そうなんだ。B班は頭脳系とバカの差が激しいのな。
1日目も、半日が経とうとしている。まだ誰ひとり欠けてはいない。いや、これからも欠けないさ…。
「…ねぇ、これはゲームよね…」
突然エリが呟いた。
「主催者はそう言っていたな」
ハルが答える。
「…じゃ、これは…現実じゃない…」
「…?」
「…現実じゃない…」
「エリ…」
「…ふふっ」
エリは何を考えているんだ…?
ヘーックション!!
「うわぁ!」
変な空気の中、突然の大きなくしゃみにマミが声を上げた。
「やめてよケン!バカ!」
「え?そんなにびっくりした?ごめんごめん」
「も〜!」
このくしゃみには確かに驚いたが、変な空気は直った。
俺は隣のエリを見た。下を向いて、フリルで大きく広がったスカートで歩いている。せっかくのレースやリボンも、昨夜の野宿や今までの道などで汚れてしまっている。
「煙草吸いたいなぁ」
カナがそう言って欠伸をした。
前の二人は、どちらもスタイルがいい。ハルは俺より頭ひとつ分背が高く、カナは俺より頭ひとつ分背が低い。どちらも痩身で、足が長く、ふたりとも黒と赤を基調にしたロックな服を着ている。その背中はどことなく似ていて、初対面の二人とは思えないように見える。
それで俺の横のエリは、カナよりもずっと背が低く、今は下を向いて歩いているため、もっと小さく見える。その後ろには、一番背の低いマミが続く。
1日目16時49分
カナの鼻歌が聞こえる。




