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自転車あらわる

里の外れに、自転車が積み上がったことがある。

外の世界で放置された自転車がまとめて流れつき、絡み合って小山になっていた。二つの車輪が一直線に並び、前のほうに取っ手と籠、腰置きを備えた妙な道具である。


使い方を想像して乗ってみた者もいるが、すぐにふらついて転んでいた。誰も乗ったことがないし、砂利道や段差が多い里では走りにくい。車輪の空気が抜けていたら尚更だ。


荷車の代わりに押してみても、籠が小さくてたいした荷物が積めないし、車輪が横に並んだ大八車のほうが良い。自転車は里の鍛冶屋や荒物屋に持ち込まれ、部品の軸や鎖などがあちこちで活用された。


────


香霖堂の玄関の脇に、一台の自転車が停まっている。珍しいものに目がない店主が、解体される前に譲り受け、油を挿して手入れしたものらしい。


店主は練習して乗れるようになり、遊び半分に跨っていることがある。先日はどこに行くわけでもなく、跨って片足を着き、拾い物の紙巻き煙草を吸っていた。


こちらは木の根や石が多いため、普段使いすると傷んでしまう。あまり乗り回さず、気分を味わう程度がちょうど良い、との話だった。


魔理沙は泥棒稼業に熱を上げているが、自転車を盗もうとはしない。箒で空を飛べる魔法使いには不要な品だろう。妖夢が店を訪ねた折には、店主から自転車についての長話を聞かされたと言う。箒も日本刀も、自転車で運ぶのはどうにも不便である。


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