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名無しのメイドたち

霧の湖の畔に、悪魔の棲む館、紅魔館がある。

内装は見た目以上に広く、メイド長の十六夜咲夜の指揮下で、大勢の妖精メイドが働いている。


住み込みの妖精メイドには、軽食と紅茶、制服が支給される。やめるのも新しく入るのも自由とあって、知り合い同士で連れ立って入ってくることも多い。希望や適性を見ながら、料理、お掃除、警備補助などに振り分けられる。


食事は朝夕の二回で、薄焼きのパンやスープ、果物が供される。日によってはオムレツやハム、川魚のソテーなどが出ることもある。量がかなり少ないが、紅魔館にはもともと少食の者が多く、量についての不満は聞いたことがない。


これは余談だが、料理担当の妖精が、夜の厨房でメイド長を見かけたという。余り物のパンを鍋に入れて煮込み、大皿に移し、流し台に立ったまま貪っていたらしい。

時間を止める能力を考えれば、実働時間がかなり長く、表向きの食事量だけでは足りないのだろう。特に変なことではないが、面白がって言いふらせば命の保証はない。



妖精メイドの寝泊まりする階に、共同の風呂がある。

壁と床は白色のタイル張りで、一度に大勢が入ることができた。車輪付きの大きな洗濯かごがあり、脱いだ服は洗濯担当のメイドがまとめて回収する。


脱衣場の棚には、洗濯の済んだ下着と靴下、タオル、予備の制服が畳んで入っていた。湯上がりには棚から適当に取って使っている。


メイド長いわく、皆が私物を持ち込んでいた頃は、紛失や取り違えの騒ぎが多かったという。悪意があるわけではなくとも「洗濯に出した靴下が見当たらない」といった相談を一日に十数件も受けていては、他の業務に支障をきたす。


妖精メイドは身だしなみとして風呂に入っているが、人間のように汗で汚れることもなく、体格も似たり寄ったりである。きれいに洗った共用品を多めに補充することで、洗濯をめぐる揉め事はほぼ聞かれなくなった。妖精は総じて所有意識が薄く、服が揃っていて大きさが合っていれば、不満を言う理由はないらしい。



持ち物には名前を書いてほしいところだが、彼女たちの間で、名前を書く習慣はあまり根づいていない。そもそも本名という概念が薄く、メイドとして雇い入れるときにはほとんどが名無しである。識別が必要なときは、髪や羽の色、担当する仕事で呼び分けられている。


妖精メイドの正確な数は判らないが、千匹とも言われている。

数が多くて入れ替わりも激しいので、雇う側も顔と名前を把握していない。長く居ついている者、目立った功績や芸がある者、大きな失敗をした者は記憶に残っているが、それ以外は集団として扱っている。


最近では、料理担当の妖精が連れ立って仕事を抜け出し、裏庭でナイフを投げ合って遊んでいたという。メイド長に発見され、危ない遊びが好きなようだからと、数匹まとめて地下室に送られたらしい。「妹様の遊び相手」を命じられたとも聞くが、詳細については定かではない。


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