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3話

兵士を皆殺しにした後、俺は村を探索していた。それは村人から情報を得るためだ。

今俺は何もわからない状況だからな。


しかし生存者は0だった。う~ん。困ったな。となるとさっき逃げていった女に話を聞くしかないな。どこに逃げたんだ?

そう考えていると背後から足音が聞こえてきた。


「ねぇ…。」


振り返るとちょうど逃げた女が立っていた。




「あ!なんだ、自分から出てきてくれて助かったぜ。探すの面倒だったからな。」


「…。その聞いたこともない口調。あなた、誰?クロムじゃないの?」


クロム…。この体の少年の名前か。

どうやらこの女は少年と知り合いらしいな。まぁ、こんな狭い村じゃ当然か。


「悪いが、この体の持ち主は死んだ。俺はいわば、この体に憑りついただけの別人だな。」


「…そう。」


その話を聞いた途端、女は地面にへたり込み頭を抱えた。絶望しているといった所か。まぁ村人は全滅。唯一生き残っていると思ったクロムというガキは別人。つまりこの女は一人ぼっちだ。そうなっても仕方ない。




「あー、辛い所悪いんだが、俺は今言ったように別人なんだ。だから情報が欲しい。俺の質問にいくつか答えてくれないか?」


「…。いいわ。聞いてあげる。」


お。話が早くて助かる。ふむ、もう全部がどうでもいいと半ば投げやりな感じだな。




「では、今何年かわかるか?」


「何年…?ごめんなさい。わからないわ。」


小さな亜人の村だしな。年号という概念が存在しないのだろう。


「では、人間の社会について知っているか?」


「いいえ、それも…。ごめんなさい。」


なるほど、外の情報を全く知らない。つまりこの村は閉鎖的な場所にあるようだ。大分他の村や国と離れているという事になる。


となると聞ける情報はほぼ無いな…。う~ん。あ、そうだ。




「この村が襲われた理由はわかるか?」


その言葉を聞いた瞬間、亜人の女は顔を青ざめ、手を口で押えた。どうやら吐き気を催したようだ。それから少し落ち着くと女はゆっくり口を開いた。


「いいえ、明確な理由はわからないわ。でも、予想はつく。多分、私たち亜人を捕まえに来たんだと思う。実際女子供が何人か連れていかれたから。馬車に入れられて。」


ふむ、やはりか。実はさっき村を回った時、死体の数が少ないと思ったんだ。それともう一つの違和感。たった5人で村を壊滅させられるか?とも思っていたが。すでに何人かの兵士は亜人を連れ去っていたんだな。で、5人は残ってお楽しみをしていたわけだ。




「大体わかった。最後の質問だ。そいつらがどの方向へ行ったかわかるか?」


「…。えぇ。だって、馬車から私の親友や村の子供たちの悲鳴が聞こえてたからね。この村から東の方へ行ったわ。」


「…そうか。感謝する。」




ノアはそういうと、立ち上がり荷物をまとめだした。


とりあえず、何もわからない以上そいつらの後を追おう。なにせ今が何年かすらわからない。ひょっとしたらあの処刑から100年後で、復讐相手の5勇者らは死んでるかもしれないからな。


そしてノアが東へ向かおうと歩き出す。しかし突然彼は足を止め、女の方を振り返る。




「おい」


「…え?なに?」


「お前はこの後どうする気だ?」


「…。私は、もう終わりにするわ。皆死んじゃったからね。旦那も。息子も。」


「…それはつまらないんだよ。」


「え?」


「人間に好き勝手にされ、お前も自殺するなんて、まるで負けみたいで面白くない。」


その時、少年はゆっくりと笑みを浮かべる。遊び場を見つけた子供のように、心からわくわくしている顔だった。その顔に女は再び恐怖を感じる。


「ひっ!?」


「お前名前は?」


「え?あ…へ、ヘレン。」


「ヘレン。俺がお前の苦しみを、今回の襲撃に絡んでいる奴全員に味合わせてやる。

くくくっ。最高だろ?それを見てから死ね。いいな?」


そう言い終えると、ノアは静かに東へ歩き出した。




それは決して善意などではない。心の底から彼自身がそうしたいと思ったのだ。


だがヘレンには、それがまるで——人間に裁きを下すために現れた、冷酷な悪魔のように見えた。

恐怖に震えながらも、彼女はその悪魔に、深く感謝した。

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