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みそ汁

作者: 芋姫

「今日はシジミか・・・。」


朝の食卓に着いて、ひとこと、つぶやく。


味噌汁の香ばしい匂い。 日本人に生まれて本当によかったと思う。


「では。」とお椀を口元に運び、ひと口、すする。


ずずず・・・。


そして箸をもつと、シジミの殻をつまみあげ、中の身を頂いてみる。


いただきまーす、口の中に入れる。


がりっ。


案の定、口の中に若干の砂が入ってきた。 想定内ではあるが。


あらかじめ、用意しておいたティッシュをつかみ、砂をペッと吐き出す。


恒例行事だ。なんてことはない。


・・・それにしても、あいかわらず身が小さい。美味しいけど、やっぱり、一回り大きいアサリのほうが食った気になるな。


と、心の中で個人的な感想をもらしながら。


そして味噌汁をすすったり、中の身をつまんだり、時々砂を吐いたりしながら、私は朝食のひとときを優雅に堪能していた。


「む」


そのような中で、事件は起こった。 ・・・よくあることだが、開かない貝がひとつだけあった。


おそらく火にかける前にすでに死んでいるのであろう。


いつもならスルー。 しかし、その時の私は生来の貧乏性のためか、なぜか悪あがきとも思われる行動に出てしまう。


他の貝は全部、食べたんだよ。これだって食べたい。今日は久しぶりに食べるシジミがやたらと美味しく感じられるせいか、とても小さな貝をこじ開けるために、私はいったん、箸を置いた。


うんうん言いながら悪戦苦闘する私を、台所から冷ややかに眺めているであろう妻の視線を感じたが、もう誰も私を止めることなど出来やしない。 


出来やしないのだ!


そのときだった。




『いつもいつも、アサリばっかり食ってんじゃねえよ!』


!?




・・・どこからともなく声がしたかと思うと、ぱかーん!と勢いよく貝のふたが開いた。



貝の中身は、空だった。


・・・・・・・・・。 


?????????????????


「何、騒いでいるのよ。」妻のあきれた声がした。「い、いや・・俺じゃない。何も言ってない。」


「さっさと食べてよ。片付かないから。」「あ、ああ・・・。」



なんだったんだ、さっきの声は。


私は空の貝をそっとティッシュの上に置くと、また味噌汁をすすりだした。


























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