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11.賑やかグループ集結

※ちょっと今更キャラ総括


煌太(こうた)・天才のロボット工学研究者で生真面目。

・ロゼッタ・金髪の女性アンドロイドで何事にも真剣で最善を尽くす。強い。

・ブルプラ・銀髪の女性アンドロイドで巨乳。天然で人が良い。

・オメメ・赤髪の女性アンドロイド。見た目に反して子どもじみてる。大勢の親友が欲しい。

優羽(ゆう)・煌太の恋人。破天荒で運動神経抜群。愛想が良い女子高生。

月音(つきね)・煌太の後輩でロボット工学の研究員。カップリング好きなオタク。中学生くらいの女子。

・チサト・元引きこもりの女性配信者。根暗なところはあるが、いわゆる配信芸に優れてる。

・天川ヒバナ・生徒会長を務めてる女子高生。オカルト好きで、方向性がズレた自尊心が凄まじい。

・ポリス・ロゼッタが飼っているメスの黒毛チワワ。翻訳機を付けている上、理解力と好奇心が並外れてる。


ある晴れた日の朝。

煌太の自宅前にはキャンピングカーが止められており、そこには大勢が集合していた。


「この素晴らしい日にキャンプへお誘い頂き、大変ありがとうございます!本日はお日柄が良く、絶好のUFO日和ですね!そして生徒会会長、また超常現象研究部の部長として、我が校生徒の監督をお任せて下さいですわー!」


高らかに大声をあげるのは、日本最大規模を誇る高等学園の生徒会長ヒバナだった。

彼女は優羽と同等にマイペースで、誰よりも独特な世界観を持った女子高生だ。

そして彼女の個性が強いことは優羽から見ても同じ認識らしく、ケタケタと楽しそうに笑いながら応えた。


「あっははは~!なにその付け足した口調~!それに今日はUFOじゃなく、肝試しがメインだよ!」


「えー、そうなの?てっきり全員で宇宙人と交信するために、スペシャリストの私が呼ばれたと思ったのに。あぁ残念だわ」


「でもでも、幽霊も超常現象みたいなもので研究テーマの一つなんでしょ?そして肝試しに幽霊は付きもの!となれば、やっぱりスペシャリストであるヒバナちゃんの力が必要だよ!」


「確かにそうだわ!それに幽霊と宇宙人、そして未確認生物の関係性も曖昧なまま!しかも肝試しの最中、宇宙人とうっかり出会える可能性も捨てきれないわ!俄然(がぜん)、気持ちが盛り上がってきたわね!」


もはや全力投球同然の会話を、優羽とヒバナはずっと繰り広げている。

これほど朝から元気が有り余っている女子高生なんて、滅多に見かけることは無いだろう。

そんな日常的に騒がしい二人の傍らで、ロゼッタは黙々とキャンピングカーへ荷物を運び入れていた。

その一方で、同じく居合わせていたアンドロイド組であるオメメとブルプラの二人は不思議そうな顔を浮かべて、優羽達の会話に少し驚くのだった。


「あれあれ?ブルプラはUFOと肝試しも初耳ですけど、そういう予定でしたっけ?」


「オメメもキャンプするとしか説明を受けてないので、もしかしたらあるのかも。あたし個人としては、超巨大キャンプファイヤーをみんなで囲んで踊りたいな」


「ブルプラは天体観測がしたいですね~。夜空の神秘的な輝きが大好きなので。そして好きな人と手を繋ぎながら星を眺めるなんて、とってもロマンチストです!」


「えっ、ブルプラさんは好きな人が居るのですか?」


「はい!ブルプラは全員のことが大々だ~い好きですよ!ということで、全員で手を繋いで星を見上げましょう!場合によっては腕組みも有りです!」


「それだとUFO交信の儀式になりそうな…………。どうなんだろ。あと、今日のブルプラさんのコスプレがトレジャーハンターみたいで凄い。冒険でもするのかな」


そうして各々が話している中、煌太の後輩である月音研究員は一人感動していた。

どうやら彼女は誰かが仲良さそうにしている姿を見るだけで、幸福感に満ち溢れた気持ちになれるようだ。

要するに、いつものオタクモードが既に暴走しているらしく、相変わらず妙なことばかり口走るのだった。


「ヤバイ、この光景だけで月音のお腹がいっぱいになるんですけど?限界化して脳が溶けそう。ヒバ×優羽、ブル×オメ。あぁ……新しいカップリングで無限においしい。ありがとうございます」


この発言は相手に気持ちを伝える意図は含まれてないが、他者からすれば若干の不気味さが滲み出ているのは疑いようが無い。

少なくとも妄想が爆発しているのは確実で、この調子であれば周りの目を気にせず妄想に(ふけ)ることだろう。

そんなオタクっぷりを披露する月音に対し、たまたま隣に居た配信者チサトは困惑した様子で呟く。


「うわぁ。私と同種……とは違うけど、似たタイプの子が居るなんてね。ちょっと安心感があるよ。でも、こうも客観的に見せつけられると節度を弁えたくなるぁ」


「えっ!似たタイプ!?たしかゲーム配信者のチサトさんでしたっけ!?もしかして私と同じ趣向をお持ちなんですか!?同じタイプのOTAKU(オタク)!!」


「すっごいグイグイ来るなぁ。仲間を見つけたらシュバってくる感じ、よくネットで見かけるやつだよ」


「その言葉選びのセンスからして、私の同種族と見受けられました!勝手ながら仲間認定させて頂きます!語録とか好きそう!」


「んー?もしかして今、さりげなく煽られた?なんかオタク同士特有の低反発エナジーが発生している気がする。でも、いいよー。ここは歴戦の配信者らしくプロレスしてあげるよ」


「プロレス……?はっ!これからお泊りキャンプするので、夜のプロレスに備えろってこと!?誰と!?もしかして全員でプロレス大会!つまり枕投げ!?なんて野蛮!でも陽キャっぽいから良いかも!」


「す、すごい。言葉は分かるのに、何も意味が分からない……。会話が一方通行過ぎて、さすがの私でも付いていけない。う~、助けておくれ私の数少ない親友達~」


まだ出発すらしてないのに、早くも全員が会話一つで盛り上がっている様子だった。

ちょっと居合わせているだけで賑やかになると煌太は思っていなかったため、愛犬ポリスを入れたキャリーケースをどうするか悩み始める。


「なんかポリスをキャンプへ連れて行くんじゃなく、ペットホテルに預けた方が無難な気がしてくるな。もうこの時点で、一人一人に保護者を付けてやりたいくらい落ち着きが無さそうだし」


出発前から不安を抱えているようでは、キャンプを思いっきり楽しめなくなってしまう。

だが、煌太の考えはリスクに備えていて冷静なものだ。

羽を伸ばすための娯楽目的であれ、やはり安全に対する心構えは必要不可欠だろう。

しかし、そんな心配性の彼の言葉をロゼッタは聞き、それとなく返事をする。


「心配せずとも大丈夫よ。もしもの場合が起こらないよう、私が全てヘルプするから」


「そりゃあロゼッタに一任した方が安心できるのは事実だけど、俺的には頼りっきりなのも忍びない気持ちになる。俺のつまらないワガママかもしれないけどさ」


「私としては遠慮なく甘えてきて欲しいわ。何より最近は家事にまで手が回らないことが多いから、久々に頼られたいもの。そもそも人に必要とされるのがアンドロイドの生き甲斐(がい)よ」


「ははっ、そこまで言われたら頼むしか無いな。それにしてもこんな世話好きになるなんて、出会った頃のロゼッタが懐かしくなる」


「その頃については、今でも恥ずかしくなる思い出だわ。最初は人間の感性を理解するのに手間取って、料理もあまり褒められたものじゃなかったもの……」


「料理が実質レーションだったからな。保存が効いて災害時も安全っていう主張が、如何にも護衛のアンドロイドらしい判断だった」


そう言って煌太は軽く笑う。

出会ってから経過した月日は決して長くないが、つい懐かしめるほど今と大きなギャップがあったのは事実だ。

出会った頃のロゼッタは一瞬の隙も許さず、警戒態勢は万全かつ完璧で堅苦しいものだった。

その行動に付き合う苦労を煌太は思い出しつつ、楽し気に語る。


「個人的には、事前に立てたスケジュール通りに活動して欲しいと言われた時が一番ビビったな。食事や入浴時間とかも決まっていて、今にして思えば囚人だ」


「……その、ごめんなさい煌太様」


「いや、別に当時のことを責めているわけじゃない。あの時は窮地に陥った直後で、どんな脅威が他にあるのかも不明だったからな。当然の備えだ。ただブルプラが再起動してから色々……っと、いつまでも話してないで、そろそろ出発するか」


当時から今に至るまでを語ろうとするものなら、それこそ一晩かかってしまうため、煌太は強引に出発を促した。

それから間もなくして八人と一匹はキャンピングカーへ乗り込み、移動中も賑やかな雰囲気が続くことになる。

ちなみに運転するのはロゼッタであり、その慣れた手つきにチサトは関心を寄せていた。


「へぇ、ロゼッタさんって車の免許を持っていたんだ」


「持って無いわよ。私アンドロイドだから自動運転扱いとなってセーフなだけ」


「え?」


「嘘よ。今のはアンドロイド式ジョーク。本当は取得していて、他の免許や資格も取っている最中なの。この前は宇宙飛行士の資格も取ったわ」


「唐突にスケールすご。相変わらず何でもありだねぇ」


もはやチサトはロゼッタの実績等に対して、さほど驚くことは無くなっていた。

彼女ならそれくらい余裕なんだろう、という認識に収まっているらしい。

だが、まだ彼女と交流が浅いヒバナ生徒会長は大きなリアクションを見せる。


「それ凄すぎ!しかも宇宙飛行士ということは、宇宙人との交流が認められているのよね!?」


彼女は、宇宙飛行士を地球代表の親善大使だとでも思っているのだろうか。

その考えにツッコミを入れても良かったのだが、ロゼッタは軽い気持ちで悪ノリをする。


「えぇもちろん。だから地球を宇宙人達にアピールする際、まず私の『ロゼプラ』チャンネルを紹介することに決めているわ」


「わぉ。いずれ宇宙進出が約束されているなんて、さすが全世界からの注目を浴びているだけあるのね。そして地球産コンテンツを無事に受け入れてくれるかどうか、人類代表の私にとって気になるところよ」


「あら、ヒバナ様は人類代表とやらに抜擢(ばってき)されていたのね。知らなかったわ」


「なんたって私は世界の未来を担う重要人物だもの!それで私とのパイプを作らない節穴な宇宙人はいないわ!」


一切の根拠なく堂々と言いきる様には思いきりの良さを感じられるが、同時に自分の夢を語っているばかりで足元がふわふわ浮いているように思える。

そもそも彼女の自信がどこから湧いているのか不思議なもので、つい煌太は真面目な態度で会話に入った。


「なんだ?宇宙人は超能力でも持ってるのか?仮に存在するとしても、人類の事情や文明に詳しいとは思えないが」


「ははーん?たしか優羽ちゃんの恋人、煌太さんでしたっけ?研究に没頭しているから知らないだけで、実は宇宙人は何千年も前から地球を調査しているのよ。そして時には干渉することで、長い年月を経て人類はコントロールされ続けているの」


「その話だけ聞くと、まるで都合良く扱われているみたいだ」


「コントロールと言っても、滅亡しないために調整している説が濃厚よ。いくら宇宙人と言えども、無から奇跡的な確立で成り立つ有を生み出すのは不可能。だから存続させることで、有事の際に備えているの」


煌太からすれば、誰も否定できないことを良い事に空想を語られている気分が少なからずあった。

それくらい飛躍した推測で、どれほど熱弁されても突飛な言動にしか聞こえてこない。

だから深掘りしたくなる話でも無かったが、いきなり無下にするほどでも無いため興味ある姿勢で訊き返す。


「その有事の際って言うのは、例えば何だ?宇宙戦争か?」


「まだ推測の域でしかないけど、銀河規模の環境変化ね。そして地球だけじゃなく、他の惑星の助力があれば種の滅亡を避けられるわ。更に、独自の文明を持つ宇宙人だけでも全1兆を超える種族が居て……」


そこからヒバナの宇宙人トークは長く続くことになる。

そして彼女が何らかの説を出す度に煌太は感心して知識を褒めるせいで、彼女の熱意は留まることを知らない。

より多くの言葉が紡がれていく一方であり、気が付けば端末を取り出してまで説明を続けている。

そんな熱心に語るヒバナの様子を見て、優羽は気楽に笑っていた。


「なんだかヒバナちゃん、()()きとして楽しそ~。煌太と馬が合わないかもって心配があったけど、仲良くなってくれて嬉しいなぁ」


優羽としては、二人の親友が仲良くなってくれるのは純粋に喜ばしいことだ。

こうして気兼ねなく接せる関係へ発展するのは望ましく、大切な友人関係になって欲しいと心から願っている。

ただヒバナは熱が入るほど煌太との距離を無意識に詰めていくため、こうも眺めているだけだと少し歯痒い気持ちがあった。


「でも、すぐヒバナちゃんと仲良くなれる煌太に対してムズムズするし、生真面目な煌太と打ち解けるヒバナちゃんにもムズムズするかも。うーん、やっぱり私も構って欲しいな!寂しい!なので突撃!」


そう優羽は自分に向けて景気づけた後、ほんの少し噛み合ってない二人の話題に力技で交じるのだった。

一方でオメメはポリスに噛まれていて、ブルプラはチサトや月音と最近ネットで話題になったコンテンツについて語り合っていた。

それから本題であるキャンプについての話題へ移るのは、目的地である山が見えてきてからのことだった。


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