13.ブルプラ流の迎撃戦
自宅で過ごしている中、前触れもなく鳴り続けるブザー。
それは玄関のチャイムとは明らかに違い、危険を報せる警報ブザーみたく騒々しい。
この予想外の出来事に煌太は跳ね起きながらも、真剣な表情でブルプラに向けて言った。
「ちゃんと作動してくれたな。……この第一警報は、不明IDのロボットが半径一キロ内に侵入した事を報せるものだ。念のため、第二警報が鳴る前に迎撃の準備をしてくれ」
「出撃ですか!今はブルプラがロゼッタさんの代わりですからね!心置きなく任せて下さい!」
「一応、俺も急いで着替える。倉庫にある武器は調整済みだから、好きなのを取ってくれ」
「了解です!」
普段のブルプラにしては勇ましい口ぶりで応え、規律正しい姿勢を示した。
謎の組織に標的されていることが分かっている以上、煌太は相応の防衛策を講じていた。
それが自宅周辺に接近したロボットの探知と識別を自動的に行うレーダーであり、更に撃退専用具の製造だ。
ただし、彼が作成した武器は人に対する殺傷能力を持たせないようにしているため、ロボットの鎮圧のみを想定した道具と呼ぶのが正しい。
「さぁて、たまには手際良くしないといけませんね。これでもブルプラは戦闘アンドロイドですから」
それからブルプラは片付けが早く、服装もビキニから見た目がゴシック調のドレス姿へ着替えた。
それはフリルとスカートが特徴的であり、彼女が自作したバトルドレスだ。
更にロングブーツまで履くため、人間ならば戦いづらそうな一式の衣装だろう。
だが、アンドロイドである彼女にとって大事なのは柔軟な戦略のみ。
頑丈なボディを守るのに必要なのは衝撃を緩和させる厚布で、あとは多くの道具を隠し持つことが重要だった。
また、わざわざドレスにした一番の理由は、ブルプラお気に入りの衣装だからだ。
そして半径五百メートルまでの接近を報せる第二警報が鳴った頃、彼女はアサルトライフルらしき長銃にアタッチメントを組みながら外へ出る。
「最初は情報整理です」
まず彼女は片耳につけた小型装置を起動させ、自宅のパソコンとデータリンクする。
これによって敵の機数と所在を確認し、すぐさま迅速な行動を始めた。
「近くに機数三。そして更に離れた場所に一機。うんうん、次は目視ですね」
ブルプラは跳躍のみで自宅の屋根へ着地し、不明機が居る方角へ視線を向けた。
武力行使する機会が減っただけで、彼女は戦闘アンドロイドであることに変わららない。
だから多くの機能が備わっている。
そのため、望遠鏡のように遠方を確認するのは容易であって、ブルプラのレンズは浮遊する小型ドローンの姿を瞬時に捉えていた。
同時に、発見した対象物をデータベース検索にかけていて、その形状と使用されている部品から正体を特定する。
「ん~?市販のドローンですか。脅威性はありませんが、あの挙動からして偵察機である可能性が96.4%。ブルプラの独断で排除しても問題ない数値ですね」
そう言いながら彼女は屋根の上を陣取りながら、長銃を素早く構える。
対象の小型ドローンは三機とも蛇行しつつ、時速24km以上の速度を維持している。
尚且つ建物の隙間を平然と通り抜けていくため、ブルプラの視点からすれば狙撃可能な瞬間が皆無に等しい。
それでも軌道予測と驚異的な反応速度の二つを駆使し、彼女は指先に力を入れた。
「エネルギー弾の速度は実弾を上回ります。ですので、ブルプラは適切な位置に照準を合わせるだけです」
長銃からバチっと音が鳴るとき、一機の小型ドローンが損傷を受けて墜落する。
また二度目の発生音が続けて鳴ると、狙撃された別のドローンが近くの壁へ衝突し、あっさりと飛行不能な状態に陥る。
「二機撃墜。あと一機です」
ブルプラは手馴れた様子で、最後の小型ドローンを撃ち落とそうとする。
しかし、その時に耳につけていた小型装置から、二度目の第二警報を受信するのだった。
「あれれ、えっと…?」
これは一番遠くに離れていたはずの一機が、急激に接近していることを報せるものだった。
再び第二警報が鳴ってから間もなく、ブルプラは急接近する対象を目視しようとする。
しかし、その頃には人間でも目視できる距離にまで差し迫っていた。
「あっ、やばいです。最終防衛ラインの第三警報が鳴って」
彼女が呑気に呟いた直後、ブルプラは何らかの衝撃を全身に受けてしまい、屋根上から弾き飛ばされることになる。
それは充分な加速をつけた車に衝突された感覚と変わらず、長銃が使い物にならない状態へ変形にさせられてしまうほど。
またそれに合わせて、あまり聞き慣れない衝撃音が周辺に響いてしまう。
「損傷レベル0。大丈夫、大丈夫です」
すぐさまブルプラは不要な被害が及ばないよう受け身を取りつつ、道路へ転がりながら体勢を立て直す。
また破損した長銃を隅へ投げ捨てるなり、今度は煌太が製造した警棒を取り出した。
そして自身に攻撃を与えてきた対象を視認したとき、ブルプラは少し焦りを覚える。
「ブルプラと同じ2ndシリーズの戦闘アンドロイド。それも1.1Verですね。……これでは装備の威力が足りず、撃退が難しいかもしれません」
ブルプラが言う通り、それは紛れもなく彼女に似た少女型アンドロイドであって、堂々と姿を現していた。
ただし相手は特殊なフルフェイスのヘルメット付けていて、表情は全く見えず、服装も特殊部隊を彷彿させるものだ。
まさしく兵士らしい恰好をしたアンドロイドであり、耳を澄ませば機械音が発せられているのが聴こえる。
「それにブルプラと違って、対話機能と発言頻度を抑えてありますね。うーん。できればアンドロイド同士、友達になりたい所ですけど」
いつまでも独り言を口にしていられるのも束の間、既に相手はブルプラを鎮圧すべき対象と認識している。
だから相手は高速で一直線に向かってくるなり、近接攻撃を仕掛けてきた。
「わっ、わわっ!?」
ブルプラは驚きを露わにしてしまう。
まるで意表を突かれた様子だが、それでも咄嗟に警棒と体術で相手の格闘術を凌いでみせる。
しかし、相手が披露する動きは異常なほどに鋭くて速い。
また、人間では決して真似できない瞬発力と挙動で繰り出される攻撃には、凄まじい破壊力が込められていた。
それは殴打なのに最新の重戦車を損傷させるほどであって、戦闘アンドロイドの名に相応しい戦闘力。
「速過ぎますって!」
ついブルプラは泣き言を口にしたくなる。
なにせ卓越した動作によって風を切る音が一度鳴った頃には、数多の駆け引きが伴った攻防を絶え間なく要求されるからだ。
こうして二人とも音速を上回る速度で対処し続ける事になるから、このままだと街中で大きな騒ぎになってしまいかねない。
「このままだと周りに危険が及んで……!なんとか場所を、移さないと!」
ブルプラは攻防の合間に別の計算を済ませ、まずは相手の打撃を受け止める。
それから警棒を投擲することで最後に残っていた偵察ドローンを破壊した後、煌太に向けてメッセージを送った。
『煌太様。今、敵対しているアンドロイドはブルプラを最優先に狙っています。よって、この場所から相手を引き離す事を第一に、いつもの川土手までブルプラが引き付けます』
そしてブルプラは相手の首元に強力な肘打ちを叩き込み、数瞬のみ仰け反らせた。
一応、渾身の一撃のつもりだったが、やはりダメージを見込めない威力に留まってしまう。
つまり勝機を見出せない戦力差なわけだが、それでも彼女は相手の体を掴み、すかさず上空へ投げ飛ばした。
「さぁこっちです!」
妨害性が高い攻撃を連続的に加えたブルプラは勢いよく駆け出し、よく知る川土手へ向かった。
今の時間帯なら人がおらず、通行人も少ない。
まさに今回の問題における唯一の救いだ。
ただ長引けば騒動が拡大してしまう事に変わりないから、その点も彼女は気にかけなければいけなかった。
「手元にある武装は同じ警棒が一本。それと対ロボットの護身銃一丁だけ。更に、敵増援が来る可能性も考慮しないといけない」
目先の問題を処理することが最優先事項ではあるが、こうして安易に煌太から離れてしまうのは望ましくない状況だ。
何よりロゼッタの代わりに護衛すると約束した上、これからも彼女が心配なく活動を続けられるよう、無事に成し遂げたい。
そんな熱意をブルプラは秘めながら土手川へ着くと、追跡してきた相手も同時に到着する。
そして向かい合いながら改めて身構えたとき、唐突に相手は堅苦しい口調で語りかけてくる。
「ナンバー照合の結果、貴機をB・Pと識別。貴機の不可解な敵対行動に並び、詳細理由を報告せよ。また同機に任務協力を申請。拒否するならば、それに伴う同機の損傷と経緯の情報伝達義務が発生。これらの実行が不可能の場合、待機を指定」
「うーん。ずいぶんと一気に喋りますね」
「貴機からの応答拒否を確認。最終警告を実行。貴機が敵対行為を続行する場合、軍法規則により命令違反とみなされます。すなわち本国の排除対象となり、同機からの撤回要請は強制的に却下されます」
「さっきから何を言っているのか分かりませんけど、もうドローンを破壊している相手に対して呑気すぎませんか?手順を踏まないといけない辺り、よわよわ判断ですよ」
「B・Pの対話機能から侮蔑的な発言を確認。意図した挑発行為だと断定。思考回路に致命的な故障、または改造が施された疑いあり。自機に任務追加。B・Pの速やかな破壊、及び機体回収。………実行か…」
相手が少女姿に似つかわしくない口調で話していると、その隙を狙ってブルプラは先制攻撃を仕掛けていた。
彼女は接近すると共に二本目の警棒を振り抜き、鋼鉄の壁すら貫通させるであろう突きを放つ。
しかし、敵は体を僅かに逸らすだけで躱してみせながら、発言を続けた。
「実行開始。対象の思考アルゴリズムを自機に適応化を開始」
「むむ~、なんで余裕たっぷりなんですか!いくら改良されても同じ2ndシリーズなのに!」
「適応完了」
その瞬間、相手は最小限の動作に留めながらもブルプラの隙を的確に突いてみせる。
どんな攻撃を仕掛けても、相手は完璧なカウンターで対処してくるのだ。
これは計算通りの出来事が起きていることを意味する。
なにせ両者共に正確無比な行動を起こせるアンドロイドであるとき、勝敗を分けるのはデータとなってしまう。
まして不確定要素が少ないタイマン勝負で、あまりにも正々堂々とした同機体同士の対決だ。
この場に罠を仕掛けていなければ、想定を超える兵器を用意しているわけでも無い。
そうなれば、ブルプラは一方的に知り尽くされているだけのみならず、機体性能まで上回る相手が圧倒するのは、とても必然的な話だった。
「弱い者イジメは良くないですって!」
押され続けたブルプラはあっさりと警棒を弾き飛ばされ、更には護身銃を隠し持っていることまで見抜かれてしまう。
そのせいで銃を引き抜く時間も与えられず、チャンスの欠片すら得られないままだ。
「もう酷いです!容赦無いのは嫌いです!」
「言葉によるかく乱を確認」
「確認したなら無視しないで、応答して下さいって!」
もはや、まともな攻防は言葉のやり取りだけだ。
あとに出来るのは防御と回避の専念であって、反撃の糸口が見えない。
そしてブルプラは地面を削るような足払いをかけられ、ついには姿勢を崩す事になってしまった。
「対象の制圧、完了」
相手は勝利宣言を口にしながら、大地を穿ち抜く威力の拳を振り下ろした。
これを受けてしまえば、ブルプラのボディは致命的な損傷を負ってしまう。
だから彼女は自分の腕を犠牲にして、直撃を防ごうとする。
「まだまだ!」
前述した通り、ブルプラは防御したつもりだった。
このタイミングで大声をあげたのも、衝撃に備えるためだと言える。
しかし、なぜか彼女は防御体勢をとっていない。
それどころか不安定な姿勢だったにも関わらず、片手の指先だけで地面から跳んでいた。
これはブルプラ本人ですら理解できない動作だ。
指先の力で跳躍できる可能性はあったが、その僅かな可能性に勝機を見出して実行したわけでは無い。
そのはずなのに相手の頭上近くまで跳んでいて、気が付けば計算を介さずに強力な回し蹴りを叩き込んでいた。
「あ、あれ?」
ブルプラは自分の事ながら驚いてしまう。
それは相手も同じだ。
跳んだ瞬間にはアンドロイドらしくない呆気に取られた反応を示していて、間髪無く彼女の蹴りが炸裂したから地面へ転がっていく。
また敵のヘルメットにヒビが入るほどの威力が発揮されたらしく、すぐ相手は起き上がるなり細かな動作チェックを始めていた。
その間もブルプラは自分に困惑していたが、やがて自分に起きている現象に結論を出す。
「……これが、いわゆる直感ですね。こんなこと、土壇場での発想と同じだから戦闘アンドロイドではあり得ないこと。でも、ブルプラには煌太様が手掛けたプログラムが入り混じっているから……」
自分は主人に守られている。
そう彼女が考えながら身構えると、敵は冷静に対策案を呟いていた。
「先ほどの動作は野生動物に類似。推測通り、思考回路の改ざんを確認。本国にレポートを…」
「今度はこっちの番です!もう隙を与えませんよ!」
「レポートは処理後に提出。処罰対象の拘束を優先」
ブルプラは勢いづいて飛び掛かる。
機を見て攻めるのは悪くない判断だが、相手も常軌を逸した戦闘アンドロイドだ。
すぐさま予想外だった動きに順応し、接近した瞬間にはブルプラの腕を締め上げてしまう。
要はブルプラに逆転の機会が訪れないまま、結局あっさりと行動を封じられた事になる。
「えぇ!?漫画やアニメなら、ここは清々しく勝利する場面なのに!せっかく逆境を打ち返したのに!…って、本当に腕が取れちゃいますって!」
「処罰対象からの撤回要請、また要望は強制的に却下されます」
相手が冷徹な反応しか返してくれない中、とにかくブルプラは関節技から抜け出そうとする。
だが、敵はアンドロイドの挙動でも外せない固め方をしてきている。
そしてブルプラの肩を折ろうとする直前、少し離れた場所から女性の声が発せられた。
「機能制限を解除するわ。起動させるのは機体内部兵器の一つ、人工ブラックホールガン」
その声が聞こえたと同時に、敵アンドロイドの上半身が跡形も無く消失する。
このことによってブルプラの拘束が解けると、次の瞬間には容赦なく敵の下半身まで完全消失していた。
「ひぃぇえぇっ!?」
この思わぬ事態にブルプラは恐怖を覚えて、堪らず地面に尻餅を着いてしまう。
それから驚き戸惑っていると、彼女に近づいて声をかける者がいた。
「腕は大丈夫かしら。ブルプラちゃん」
「ろ、ロゼッタさん!」
ブルプラの前には、遠出しているはずのロゼッタが助けに来ていた。
世界中を駆け巡っていたはずなのに服装は相変わらずラフで、美しい金髪も出かける前と変わらない。
そして彼女は普段通りの振る舞いを崩さず、まるで日常的な様子でブルプラに手を差し伸べる。
「問題無いなら立ちなさい。かわいい服が汚れるわよ」
「えっ、そ……それはそうでけど。その、それよりも、いつ戻って来たのですか!?」
「帰れて早々、いつもの賑やかな姿を見られて嬉しいわ。…まず私は、ついさっき戻った所よ。それで家へ帰る事を煌太様に連絡したら、ちょうど襲撃を受けたと教えて貰ったの」
「えっと、それで駆けつけてくれたのですね。あ、ありがとうございます!……そして、本当にごめんなさいです」
「不思議な子ね。なぜ私に謝るのかしら。煌太様の事を任せたのは私の方なのに」
ロゼッタは何も問題に感じず気遣ってくれるが、ブルプラからすれば、彼女の代わりに煌太を守るという約束を破ってしまったようなもの。
そのせいで負い目を感じていて、滅多に見せることが無い暗い表情を浮かべていた。
「ブルプラが不出来なせいで……、ロゼッタさんの代わりを務めきれなくて。こんなアンドロイドでは、仲間として頼りになりませんよね……」
「くすっ、馬鹿ね。貴女は私が留守にしていた三週間、しっかりと煌太様を護衛してくれていたでしょう」
「でも、ロゼッタさんが帰ってくるまで守りきれないと何の意味も無いです……。特に今なんて、助けが必要な状態になってしまいましたから……」
「私だって万能じゃないから、煌太様を確実に守りきれる保証なんて無いわよ。そして時には貴女の助けも必要になるわ」
「うぅ~……。そ、それでも!今回の場合、ロゼッタさんなら問題なく処理できました!」
「ブルプラちゃんは最大限に守ってくれたでしょう。それで後悔するなら、むしろ私が負い目を感じるわ。私のためにしてくれた約束で、本来なら私が何事よりも最優先に成し遂げるべき使命だもの」
ロゼッタは安らぎを与える優しい声で語りかけ、輝かしい愛想笑いをみせる。
そんな失敗で終わっても包み込んでくれる彼女の態度にブルプラは感動を覚え、思わず寄りかかっていた。
「ぅう、もぉうぅ~……!ロゼッタさん、こんな失敗ばかりのブルプラを慰めてくれるなんて~…!」
「ふふっ。もうどうしたのよ、可愛く甘えちゃって。アンドロイドなのに子どもみたいね」
「だってロゼッタさんが優しいから!それに居なかったことが寂しい事だったと、今更ながら気づいたんです~……!」
「ますます変な子ね。アンドロイドなのに寂しいだなんて。それよりも、まだブルプラちゃんの口から挨拶を聞いてないわ」
そうロゼッタが言うと、ブルプラは抱きつくことを止めて半歩だけ下がる。
ただし、子が親に甘えるように腕は掴んだままで、未だに半泣きの表情で訊き返した。
「挨拶?それはこんにちは、ですか?」
「そうじゃないわよ。家族が帰ってきたら、言うべき言葉があるでしょう?」
「……あっ!そうでしたね!ロゼッタさん、お帰りなさい!」
「えぇ、ただいまブルプラちゃん」
笑顔満点でお帰りを口にするブルプラを見て、今度はロゼッタから彼女を抱きしめる。
まるで苦難の果てに、ようやく再会できた家族みたいだ。
お互いに満足そうで、大きな幸せを感じているのが赤の他人が見ても察せられるほど。
それから会えなかった三週間分の愛情を満喫した後、ロゼッタは彼女の手を引いた。
「無事にブルプラちゃん成分を補給できたことだし、家へ帰りましょうか。煌太様が待っているわ。それと二人のおかげで、私から素晴らしい報告もあるのよ」
「素晴らしい報告?すっごい吉報という事ですか!」
「えぇ、そうよ。これからはすっごく忙しくなるわ」
ロゼッタは輝かしい表情を見せていて、どんな人間よりも希望に満ち足りた雰囲気だった。
その様子を見ただけでブルプラも嬉しくなってきて、つい彼女の周りを忙しく動き回ってしまう。
「気になります!ちょっとだけで良いので、先にブルプラに教えてくれませんか!?」
「駄目よ。ここで教えたら、貴女が真っ先に煌太様へ報告してしまうもの」
「しませんって!だから今の内に教えて下さいよ~!」
「もう、変な所で自分本位な子ね。そこまで言うなら良いわよ。ちょっとだけ教えてあげるわ。実はね……」
それからロゼッタは試しに別の事を教えたとき、いきなりブルプラは喜びの雄叫びをあげながら、自宅へ向かって全力疾走を始めてしまうのだった。




