テイワズ
コレは光目線のお話です。本編ではわからなかった事が多数書いてあります。
[!!注!!]光目線なので、少しエロくなっております。
(まいったな・・・)
光は今、学校の教室のド真ん中に座り込んでいる。
膝にはうなり声をあげながら気絶している林檎がいた。
(ずっとこのままっていうわけにもいかないし・・・林檎の家だってしらないし・・・あ、でも明日学校休みだから、俺んちでもいっか)
と、勝手に納得して声を出して頷いた。
当然返事が返ってくるはずもなく、羞恥でほんのりと耳を染めながら立ち上がる。
林檎を背負った瞬間、驚いて思わず声をあげてしまった。
「うぉ!?」
林檎の体は想像以上に軽かった。
そういえば女の子をかついだのは初めてだ。
そう考えると、無意識に林檎に触れている部分に意識がいってしまう。あたたかくて、全てがやわらかい。
そして、シャンプーだろうか。とてもいい香りがする。
全身で林檎を感じて、光の顔が火照ってくる。
その時、自分の肩に乗っている林檎の頭が動いてさっきよりも強く林檎の香りを感じた。
林檎の方を見ると、こっちを向いて寝息をたてている。
あまり直視できずに目をそらすと、首に林檎の息がかかった。
(長時間この体勢でいるのは無理そうだな)
光は小走りで自宅へ向かった。
「ただいま!!!!!!」
玄関に飛び込み、急いで靴を脱ぎ、林檎の靴を脱がせ、急いで部屋に走って行った。
(ヤベェ!!!限界だ!!)
あと三歩が耐えきれずに、林檎をベッドに投げ出した。そのまま床に倒れ込み、息を整える。
林檎の方は少し唸って寝返りを打っていた。
「部屋が一階でよかった・・・」
「ヒカちゃん?どうしたの、そんなに慌てて」
声の方を見ると左の手の甲に縦線模様のルーン文字、アイサーを持つ私立小学校教師、平河 美月28歳と、そのコンフォーマーの山口 渚20歳がポカンと立っていた。しばらく部屋の様子を見ていたが、光のベッドの上にいる少女を見てすぐに光に駆け寄ってきた。
「よくやったぞ光!!!」
「ついに彼女ができたのね!!ヒカちゃん!!」
そう言って2人は光を撫でまわした。
一方光の方は、動けるようになるのを待って2人を部屋から出してドアを閉め、今までのことを話した。
「へぇ、コンフォーマーを見つけたのか。光」
「ん」
「なぁんだ。彼女じゃないの?」
「いつそうなったんだよ」
「で?なんでそんなになるまで走ってきたんだ?」
「いや、それは・・・」
さすがに答えられなかった。
女の子に免疫がなくて長く触れていられなかった、なんて言ったらからかわれるに決まってる。
「寒かったから運動したかっただけさ」
光は適当にはぐらかして、いつもの3倍かいた汗を落とすため風呂に向かった。
「はあぁぁ。疲れた・・・あのキャラやめたいな・・・」
学校では世間体が悪いという理由で元気な少年を演じているが、本来の光はそうではない。
元気なことに変わりはないが、笑顔を振りまくなんてことはしないだろう。
しかし最近は体力がもたず、気を抜くといつものしかめっ面になってしまう。
ルーンを持つ者は一度コンフォーマーと接触してしまうと、能力を得る代わりにエネルギー消費が激しくなりコンフォーマーからエネルギーを吸収しなければいけなくなる。
最近、林檎が話しかけても反応が乏しかったのはそのためだ。
(林檎が起きたらもらっておこう)
風呂からあがり部屋へ戻ると、林檎はまだ寝ていた。
(朝まで起きそうにないな)
光はため息をついてリビングへ向かった。
今晩のメニューはオムライスだった。
オムライスの上にはケチャップで“おめでとう”の文字が書かれている。
「今日はヒカちゃんが初めてコンフォーマーを見つけたお祝いだよ。だからヒカちゃんが好きなオムライスにしたんだ」
光の目が心なしか輝き始めた。
「お前本当にオムライス好きだよな」
渚がニヤニヤしながらビールをジョッキで飲んでいる。
「うるせぇ!!」
口ではそう言いながらも光はオムライスから目を離していなかった。
(林檎に持ってこうかな・・・)
しかしその後も林檎が起きる気配はなく、諦めて寝ることにした。ベッドには林檎が寝ているので、光はソファーだ。部屋にあるのは二人用なので足がはみ出してしまうが、林檎を引きずり落とすわけにもいかないので泣く泣くソファーに体を埋めた。
「ったく渚のやつ・・・一晩くらいベッド使わしてくれてもいいのに・・・子供みたいに文句言いやがって」
さっき渚の部屋を訪ねたとき「なにが悲しくて男と寝なきゃなんねぇんだ!!」と門前払いされてしまったのだ。
林檎は相変わらずぐっすりだ。その間も光のエネルギーは減っていく。
「人の気も知らないで・・・」
“ゴン”
「っ!?」
光は鈍い音を聞いて目が覚めた。
(なんだ!?)
辺りを見渡すと、林檎がうつぶせで床に落ちていた。
「・・・」
しょうがなく体を起こして林檎をベッドに戻した。
その時、また林檎の体温を感じた。そしてまたベッドに投げ出す。
光はベッドの横にしゃがみ込み、赤く染まっているであろう自分の顔を両手で覆った。
「こんなんでこの先どぉすんだよ・・・」
「んん・・・」
「!?」
林檎の寝言だ。ビックリして軽く飛び上がってしまった。
林檎の寝顔を見ると、ぶつけた額と鼻の頭が赤くなっている。
「・・・かわい・・・ぃ」
自分で口に出して恥ずかしくなってしまった。
その時、光の体がふらついた。
どうやらエネルギー切れのようだ。
耐えきれずに光は林檎に覆い被さる。そして林檎のワイシャツの襟を広げ、右の鎖骨にあるテイワズのルーンにキスをした。
エネルギーはこの状態にしばらくなっていれば吸収される。
基本的には食事と同じ原理なのだ。
ある程度吸い取ると、外で鳥が鳴き出した。
“チュンチュンチチチ”
そのせいか、林檎が起きてしまった。
光は急いで唇を離した。
そのままだとあとが面倒だ。
「あ、起きた。おはよう、お嬢さん」
朝の挨拶をしただけなのだが、なぜか林檎に突き飛ばされてしまった。
「きゃあ!!!」
「のわ!?」
“ゴン”
頭を棚の角にぶつけてしまった。
「いってぇ・・・」
地味に痛かった。
「だだだだだ誰!?」
「ヒドいなぁ林檎。何するんだよ」
「え!?ウソッ!?光?なんでこんなとこに?」
「なんでって、自分の家だモン」
「は?」
林檎はキョロキョロと部屋中を見始めた。
「光の家?」
「そう」
「へぇ・・・光って金持ちなんだ」
「そうでもないよ。家が無駄に大きいだけで」
「ふ〜ん・・・・・・・・・・・・・・って!!そうじゃなくて!!!なんで私が光の家で寝てたの!?」
「だぁってぇ。林檎、あのまま寝ちゃうんだもん。林檎の家知らないし、次の日休みだから大丈夫だろうと思って――――」
「大丈夫なわけないでしょ!?」
光は怒鳴られた意味がよくわからなかった。
何か林檎に不都合なことがあっただろうか?
「なんで?」
「なんでって、女の子が男の子の家に泊まるなんてそんなに気軽にする事じゃないでしょ!!」
林檎の言っている意味がまだよくわからなかったが、とりあえず光に非があるらしい。
「っていうか光!!人の寝顔覗き込んで何してたの!?」
なんだか恥ずかしそうだ。
こういう表情は嫌いではない。むしろ好きな方。
だからもう少し羞恥を掻きたてる言葉をプレゼントしようではないか。
「いや、カワイイなぁって」
「な!!!!!!!!!!」
自分でもこんなに恥ずかしいことをよく言えたなと思ったが、林檎の反応が面白くてさらにからかった。
この時、光は自分がSだと初めて知った。