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テイワズ5

愉快な仲間達追加です(^▽^)ノ




『光!!!』





・・・・・・またアンタか。


なんだ。

何故俺の名を呼ぶ・・・?





『これ以上は無理だ!!行け!!!俺達が時間を稼ぐ!!』



『いや!!!私もここに―――――――』



『バカ野郎!!!早くそいつを安全なところに!!!!』





なんの話をしてるんだ?


ここはどこだ。何故暗いんだ。

何を急いでる?

何故地面が揺れてる?


俺は何故こんなにも苦しいんだ?





『・・・必ず戻ってくるわ。待ってて!!!』





みんな叫んでる。

近くからも、遠くからも聞こえてくる。



さらに揺れが大きくなると、声達は遠ざかっていった。


ただ一つ、細く荒い息づかいを残して。










“ピピピピピピ――――”



「ヒカちゃぁ〜ん!!目覚まし時計鳴ってるよぉ〜!!二回目だよ〜!!!」



遠くで美月が叫んでいる。

そうか、一つ目には気がつかなかったのか。昨日は夜更かししたからな。

林檎が夕方に帰ってから渚にからかわれて、いつも通り取っ組み合いして・・・美月に吹っ飛ばされて。

夜中は渚と反省会・・・という名の呑み会。(※お酒は二十歳をすぎてから!!)


二日酔いのせいか頭が痛いが、早く起きなければ美月がうるさいのでとりあえず着替える。ネクタイを首にかけたら洗面所へ向かい、支度をすませて朝食を食べ始めた。



「ヒカちゃん、なんかイライラしてない?」


「・・・なんで」


「眉間にシワ寄ってるよ?」


「・・・別に」




心配そうに顔をのぞき込む美月だが、あまり話したくはなかった。


確かにイラついている。

最近妙な夢を見るのだ。その夢を見た朝は心臓が潰れそうなほどに悲しく、不安になる。その度にタンスの上の小箱を見る。そうすると少し落ち着いて、やっとベッドを出られる。

夢は人の感情を素直にあらわすと聞くが、あの夢は何なのか。

考えようとするが、何故かそれが怖い。


考えたくない。



「行ってきます」


「行ってらっしゃい。気をつけてね」


「うん」



何かを察したのか、それ以上は聞かないでいてくれるようだ。美月は近くにある私立の小学校の教師をしている。だからなのか、子持ちでもないのにたまに見せる表情はまるで本当の母親のようだ。



「・・・母親・・・か」



ある日目が覚めると、そこは小さい孤児院だった。

俺は両親を捜そうとしたが、院長や先生達は外に出してくれない。理由を聞くと、「危ないから」と言うだけ。仕方なく両親の事を聞いてみると、困ったように黙ってしまう。しかしあまりにも俺がしつこいので、院長は二人っきりの時に教えてくれた。その手に持っていたのは新聞。それを広げて一枚の写真が載っているのを指差す。



「あなたのお母様とお父様はね、悪い人に襲われて亡くなってしまったの。光君はお兄さんだから、この意味分かるわね?」



あぁ、分かるさ。

今なら。


当時の自分は、なんで?と思うばかりで、泣くことしかできなかった。


パパとママは悪いことなんてしてないよ。

なんで会えないの?

ボクがいい子にしてなかったから?

じゃあもういけないことしない。

イタズラだってしないよ。

だから・・・パパとママを返して。



・・・帰ってくるわけないじゃないか。

殺されたんだ。もう二人はいない。

いい子にしてたって、意味はない。殺人者はそんなの関係なく二人を殺しただろう。


森の中の開けた場所で、五人の遺体が発見された。全員に刃物で切りつけられたらしい傷が身体中から見つかったが、特に二人は、顔では身元がわからない程だったと言う。

何の意図があってそうしたのかはわからない。そいつは捕まらなかった。まだ時効ではないが、これだけ時間がたっているんだ。もう捕まることはないだろう。


光は無意識に右手を固く握りしめていた。




「――――っ!?」



突然背筋に突き刺さるような殺気感じて、後ろを振り向いた。


誰もいない。


気のせいだと思い直してまた足を踏み出そうとしたその時。



「よう、元気そうじゃねぇか」



目の前に十数人の男達が飛び出してきた。

他校の男子生徒のようだ。殺気は感じない。



「久しぶりだなぁ!!俺達、覚えてるか?」


「・・・誰」



全く覚えていなかった。だが身に覚えはある。・・・ありすぎるほどに。



「誰だって!?1ヶ月くれぇしかたってねぇのに覚えてねぇって?元南中のトップ、坂下 南だ!!!」


「南中の・・・南・・・それってダジャレ―――――」


「言うなぁぁあ!!!!!!」


「バカヤロォ!!!坂下さんは真剣に悩んでんだぁ!!」


「名前のことでどれだけ苦しめられたことか!!」


「・・・知らねぇよ」


「知らねぇはずねぇだろ!!?前に会った時にも言ったじゃないかぁぁあ!!!!」


「だから、覚えてないんだけど」


「いや、いいんだ。コイツはそういう奴なんだ。人をいじめた上に見下してあざ笑い、涼しい顔して去っていくんだ!!!だから俺はおまえが嫌いだ!!」



最後の決め台詞だったらしく、ピシッと光を指差して泣き始めた。



「誰がいつあざ笑った」


「この期に及んで貴様というヤツは!!」


「学校遅れるんだけど」


「おのれ!!坂下さんよりも学校が大事なのかお前は!!」


「だから、誰だよ坂下って」


「うわぁぁぁあん!!!」


「「坂下さぁぁぁぁん!!!!!」」



なんだかとてつもなくめんどくさい。

もう行っていいだろうか。



「さすがだな・・・東中の猫目・・・この俺をここまでひしぐとは・・・」



そういえばそんな呼ばれ方をしていたかもしれない。中学の時に他校の奴らに絡まれまくったおかげで、変な通り名がついてしまった。仲が良かった奴に聞くと、文字通り猫のような目で人を睨む東中の生徒という意味らしい。


たぶんコイツも中学の時に俺に絡んできて返り討ちにした奴の1人だろう。



「坂下さん、拉ぐってなんですか?」


「・・・知らん。どっかで聞いたのだ」



うん、アホなんだな。



「・・・勢いをそぐ。または押しつぶすって意味だよ」


「なんだお前!?さては頭がいいな!!!だから俺様をいじめて見下して、あ、あざ笑っ・・・うぅ」


「マジめんどくさい。お前」


「や、やっぱりそうなんだな!!そうやって楽しんでるんだ!!!ま、待て!!行くな!!」



この時間だともう遅刻だな。

また林檎に怒られる。



“ガシッ”



「!?」



坂下 南が最終手段に出たようだ。

光よりも頭一つ分大きい坂下に首を取られ、持ち上げられた。



「俺は仕返しに来たんだぞ?黙って帰すかよ」


「んっ・・・くっ!!」



思いきり肘鉄を食らわしてやった。

すると思ったより効いたらしく後ろ向きに吹っ飛んだ後、子分達の群に突っ込んだ。



「・・・え?」



よろける程度だろうと思っていたので、拍子抜けしてしまった。

今までの経験では腹を抱えて倒れ込む奴はいても、何メートルにもわたって衝撃が続いた奴はいなかった。

坂下達も予想外だったらしく、目を見開いてこちらを見ている。



「ね、猫目・・・どこで修行してきたんだ」


「してねぇよ」


「じゃあ何だ!!脳ある鷹はってヤツか!?実はオレなんか指一本でひねり潰せるとかか!?」


「なんでそんな興奮してんだ」


「・・・お前―――――友達をほしくはないか?」


「・・・は?」



お願いだから日本語をしゃべってくれ。

話に脈絡がなさすぎる。



「お前!!坂下さんが聞いてるんだぞ!!返事をしろ!!」


「じゃあお前達は今コイツが何考えてるかわかるか?」


「・・・さ、坂下さんは宇宙のような人なんだ!!」


「・・・」



光の中で不思議人物となりつつある当人は、じっと光を見つめてくる。その姿は、まるで試験の結果発表を待っている少年。今か今かと心配そうに震えていた。



「なんなんだ・・・」



何がしたいんだ?コイツは。

さっきまで仕返しがどうとか言っていたくせに、いきなり遠回しな友達発言。

実はオレ、ヤバめなヤツの地雷踏んだのか?



「・・・よくわからないからイヤだ」



なんだか逃げ出したくなったので、そう言って学校に向かって駆け出した。

こうすればとりあえずは離れてくれると思ったからだ。


しかし、甘かった。


数秒もしない内に、後方から何かがものすごいスピードで近づいてくる音がした。

まさかと思って恐る恐る振り返ると、鬼の形相の坂下がすぐ後ろに迫っていた。



「ひっ!」


「待てゴルァァア!!!」


「じゃあそっちが止まれよ!!!」


「わかった」・・・ホントに止まってるし。

なんだ?怒ってるのか?

じゃあ何故止まる。


・・・意味がわからねぇ!!!!



「よくわからないと言ったな?」


「あ、あぁ」


「じゃあ説明してやる」


「・・・どぉぞ」


「オレは自分が認めた男のことしか友達と呼ばないことにしている」


「・・・はぁ」


「お前は見ての通り、男らしい顔をしていない」


「あ゛?」



・・・殴っていいのかな。



「だが、そこらへんの悪ガキなんかとは段違いに強いと見た。オレはそんなお前に男気を感じた。そしてオレの認めるべき野郎だと確信した」


「・・・そりゃどぉも」


「だから友達と呼びたい」



なんだか筋が通っている分、さらに子供に誘われているような気がしてくる。

めんどくさい事に変わりはないが、とりあえず悪いヤツではなさそうだ。


一つ小さいため息をついて、仁王立ちでピクピクしている坂下を座らせた。地べたに。



「言いたいことはよくわかった。でも、俺と友達になったところで得なんて何もないだろ?」


「ある!!友達が増える!!」


「・・・そうか、お前の頭の造りが何となくわかってきたよ。・・・まぁ、拒否する理由もないから―――――」



そう言ったとたん、坂下の瞳が輝きだした。



「・・・えっと・・・はぁ・・・。好きにしな」


「好きにしていいのか!?」


「・・・え」


「じ、じゃあじゃあ!!!親友!!親友はどうだ!!!」



・・・コイツの中身は小学生なんだろうか。

親友って、「今から俺達は親友です」って言ってなるもんじゃないと思う・・・。



「・・・好きにしろ」


「聞いたか!?今の!!オレは親友が出来たぞ!!!」


「やりましたね!!坂下さん!!」









どうでもいいが、俺はいつになったら学校に行けるんだろう。

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