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9 平和な日々

ちょっとだけ光が“ドS”モードに突入します。

とりあえず邪魔をしないように小声で「ごちそぉさまぁ・・・」とささやき、キッチンに使った食器を持って行く。

なるべく音を立てないようにソファーに座ると、光が怪訝そうに見てきた。



「・・・おい」


「なぁに?」


「何でそんなに離れて座るんだ」


「“ドS”らしいから?」



なんとなく隣に座ってはいけないような気がするのだ。

様子をうかがうと、あからさまにショックを受けた顔をしているではないか。なんだかこちらが焦ってきた。

慌てて光に駆け寄り、右隣に座る。


ん?

なんか光が笑ってる・・・ニコニコしているというよりは・・・勝ち誇ってニヤリ、みたいな。

――――あれ?やっちゃった?



「いい子だ・・・」



そう言って私の後ろから背もたれに手をかけ、左手で顎のラインを撫で始めた。

大変だ。また“ドS”モードに突入してしまったらしい。

逃げようとしたが逆にソファーに押し付けられ、更に危険な体勢へと持って行かれた。上に乗られたのだ。

光は尚も耳や頬を撫でてくる。とてもくすぐったくて右に顔を背けると、そのまま光の指がゆっくりと下へ降りていく。鎖骨のあたりを右へ左へと優しく撫でられだんだんと危機感が薄れて、替わりに自分のモノとは思えない甘い吐息が漏れ始めた。



「・・・んっ、やぁ・・・ふ・・・」



光はまだ愉しそうに顔を歪めたままだ。

今度は顔を私の首筋に寄せると・・・


ぺろっ



「ひっ・・・!!??な、舐めた!?」


「へぇ・・・そんな反応すんだ。・・・フフッ・・・驚いた?」


「そりゃ驚くよ!!ほら、もう気が済んだでしょ!!そこどいて!!!」


「・・・やだ」



・・・今、なんて?

やだって言った?



「こんなに愉しいこと、そうそうないよ?」


「いやいやいやいや!!あるってば!!!さっきやってたゲームの方が楽しいよ!?やろ!!ね!」



必死の説得。

段々と光のイメージが崩れていく。まぁ元々学校の光は光ではなかったわけだから、まだほとんど本当の光を知らないのだが。少なくともこんなに強引だとは思わなかった。



「ゲーム・・・?」



なにやら考えているようだ。

一度体を離してテレビ画面を見つめ始めた。その隙に体を起こし、急いで座り直す。

光はというと、何故かうずうずしている様子で落ち着かないようだ。10秒ほどそうしていると、いきなり立ち上がって叫び始めた。



「オル゛ァア!!!渚ぁ!!続きやんぞぉ!!!!」



・・・一体なんなんだこの人は。


美月はまだ顔が赤いようだが、食器を片づけるために立ち上がるところのようで、テーブルに手をついて半立ち状態だった。その横で渚が椅子を傾けて座っている。2人とも驚いてこちら・・・いや、光を凝視しているが、動こうとはしない。



「げ・え・む!!早く来い!!」



その言葉にムッとしてブツブツ文句を言いながらも、渚がゆっくり歩いてきてカーペットの上にどっかりと座る。



「なんでそんなにテンション高ぇんだよ」


「楽しいゲームの時間だからだ」


「・・・素直なこって・・・」



これは・・・本当にゲームの方が楽しいと判断したのだろうか。それはそれで失礼だが、とりあえず安心して良さそうだ。

所詮は15歳。最近まで中学生だったのだ。男の子とはこんなものだろう。



「林檎。見てろよ。俺はこんな奴には負けねぇからな」


「・・・渚さん頑張って♪」


「え?」


「おぅよ!!こんなガキには負けてらんねぇぜ!」


「なんだよそれ!!俺は!?」


「ガンバレェ〜〜」


「うわっ、絶対応援する気ないだろ!!お前も笑ってんじゃねぇよ!!」




本当に平和な1日だ。












平和な休日を過ごす、周りよりも少し大きな家の前に1人佇む男がいる。

フードを深くかぶり両手をポケットに入れている。



「・・・肴山・・・光―――――――」



そう小さくつぶやくと、裂けるように口角を上げ狂喜して目を見開く。



「みぃつけた・・・♪」

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