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7 新感覚

今回は林檎目線ですが、後半にほんのちょっと性的な描写が含まれています。今後、さらにそういう場面が増えていくと思われますので、それでもいい!!という方のみお進み下さい。m(_ _)m

光は私と目が合うと、すぐに手を離して後ろを向いた。



「光?」



不思議に思ったので顔を覗き込んでみた。



「うわっ!!」



慌てて顔を隠して後ろに下がる。


どう見ても怪しい。

そんなに私と目を合わせたくないのだろうか?

そう考えるとちょっと悲しくなってきた。


そんな私の様子に気づいたのか、すぐに顔を隠すのをやめて私の両肩をつかんだ。

そして軽くひざを曲げ、目線をあわせてジッと見つめ合う。



「な、何?」



「・・・林檎」



心なしかさっきより顔が近いように感じる。


いや。気のせいではない。

確実に近づいてきている。

しかもだんだんと速くなり、あっという間に息がかかるところまできてしまった。



「え?ちょっ、どうかしたの?」



あ、光、まつげ長い・・・。


それに、いつもの可愛らしい表情じゃないせいか、妙に(オトコ)を感じる。

少しうっとりしてしまった。だが、気がつくと、あと数ミリで唇同士が触れあってしまいそうになっていた。光の目は意識がどこかに行ってしまったかのように虚ろになっている。


このままじゃ大事にとっておいたファーストキスが失われてしまう!!


私はとっさに後ずさった。



・・・が。


そこには後ずさるスペースなどなかった。

何故ならそこには、あのフカフカなダブルベッドがあるのだから。



「・・・きゃっ!!」



「のわっ!?」










(押し倒されたぁぁぁああ!!??)


「わ、わりぃ!!周り見てなかった」



どうやらそういう気があるわけではないらしい。



「オレは・・・その、ただお前を直視出来るように練習を・・・」


「!?・・・じゃあ・・・やっぱり私の顔・・・見たくないんだ・・・」

「ち、ちがっ!!」



自分の目から雫が一粒落ちていくのがわかった。声も震えてしまう。



「光、私のこと嫌いなんだ・・・」


「林檎!!!」



2人の額がコツンと音を立てて触れた。



「違う。嫌いになんか、なるもんか。オレは・・・お前のこと!!」


「・・・?」



その時、ドアが勢いよく開き、1人の女性が部屋に入ってきた。



「朝ご飯できたよぉ〜・・・お?」



女は口を開けたままベッドの上の2人をまじまじと見た。


小柄な少女が目に涙を浮かべながら怯えたようにベッドに倒れ込んでいる。その上には少女よりも一回り大きな少年が覆い被さって顔を近づけている。



「み・・・美月!?」


「美月さん!!」


「・・・」



美月は黙ってこちらまで歩いてきて、いきなり光を突き飛ばした。

その際、頭を壁に強打。



「な、なにすんだ・・・」



「ヒカちゃん!!!!!」




美月は死期を感じるほどの形相で怒鳴り、勢いに圧されて光が床の上に正座した。




「はいぃぃぃい!!!!!」



「あんたって人は!!!こんないたいけな少女を泣かせて、その上襲うなんて!!!!私はあなたをそんな極悪非道の外道野郎に育てた覚えはありませんよ!!」



「そこまで言うか!?」



「問答無用じゃぁあ!!!」



「ちょ!!!待て―――ブフォ!!!」



最後まで言う前に美月の長い脚が光のミゾにクリーンヒットし、先ほど光の頭にタンコブをつくったあの壁に再び頭を強打した。

もちろん光の意識は旅に出た。










その後、荒れ狂う美月をなだめるために誤解であることを伝えると、慌てて光をベッドに乗せて救急箱をとってきた。


ふと扉の方を見ると、渚がしゃがみこんで笑いを堪えていた。








「ごちそうさまでしたぁ!」



「ゴメンね。スープもパンも冷めちゃってて」



「いえ!!いただけるだけで嬉しいです」




光の分は渚が全部食べてしまった。

まぁすぐには起きて来そうにないが。



「林檎ちゃん」


「はい」



美月が皿を洗いながらこちらに向く。



「コンフォーマーが何のためにルーンを持つ人のそばに現れるか知ってる?」



そういえば、なんだっけ?



「大体みんな生まれ持ったエネルギーを消費し始めるのが思春期あたりで、ルーン所持者はこの頃にコンフォーマーに出会うことが多いの」


「光と私もそうですね」


「うん。ルーン所持者はコンフォーマーに出会うとエネルギーをたくさん取り込むことが可能になるから、自分の持つ能力を自由に使うことが出来るようになると聞いたわ」


「え?能力、ですか?」



もしかして光に何か特別な能力が備わっていたりするのだろうか?



「それがどんなものかはまだわからないけど、私はコレ」



そう言うと美月は蛇口から流れ出ている水を手ですくい、目の前の皿に出した。



「え?氷・・・?」



触ってみると、完全に固まってはいないものの、さっきまで水だったとは思えない程に凍っている。



「・・・手品、ですか?」


「これは私の能力なの。本来、人が持つことのない力。ルーン所持者は今だに特殊な能力を使う事が出来るの。昔のルーン所持者はこの能力で戦っていたけれど、今の人達にはそんな強力な力はないんだ。せいぜい手品に見えるくらい」



そう言うと、美月は苦笑いして皿を片づけにキッチンへと戻った。


確かに、これで戦えと言われてもたかがしれている。

神様が造った兵隊さんなのだから当時のルーン所持者が強力な力を持っていてもおかしくはないだろうが、その血が薄れてきているであろう現在にその不思議な力が薄れてしまうというのもまたおかしくはない。



「能力が使えるようになるってことは、それだけエネルギーを使うって事。その失われたエネルギーを補給するためにコンフォーマーがいるのよ」


「補給・・・ですか」


「私は能力を使わなければ2日に一回ぐらいね。光の能力はまだわからないけど・・・2人が出会ってからもう随分経つでしょう?」


「2週間程ですね」


「光のルーンは見たことあるよね。いつ接触したか覚えてる?」



接触・・・そういえば、上向きの矢印(テイワズ)が鎖骨のあたりに浮き上がってきた日から、光は私に近づかなくなった。あの時触れていたっけ・・・?



「・・・心当たりはあります」


「その日からどのぐらい経ってる?」



あれは確か、月曜・・・。



「5日経ってますね」


「・・・え?もしかして・・・ヒカちゃんバテバテ?」



美月の顔がサッと青くなっていく。



「さっき思いっきりフッ飛ばしちゃったよ・・・?ヒカちゃん死んでないよね!?」



あれだけされれば元が元気でも結果は同じだろう・・・などと言えるはずもなく、今朝起床した時の様子を思い出す。

そういえば、上に覆い被さっていた・・・疲れている時にあんなドS発言で人を苛めようとはしないだろう。



「・・・今朝は元気でしたよ?」


「そうなの!?でも5日なんて・・・それに昨日帰ってくるとき、林檎ちゃんをおんぶして帰ってきたのよ?」


「そうなんですか?」



ここから学校までの距離はわからないが、相当疲れたはずだ。

なぜ今朝はあんなに元気だったのだろう?



ガチャ。



「ん゛ん・・・頭いてぇ・・・美月、水くれ―――!?・・・な、なんだよ」



噂をすれば、だ。

いきなり入ってきた光に2人とも目を大きく開け、ただただガン見。その視線にうろたえながらも、腰を落としてゆっくりと(カニのように)壁際を移動する。



「・・・ヒカちゃん」


「は、はい!?」



不穏な空気の中、急いで背筋をピンとのばして美月の目線から逃げるように少し上を見る。



「元気?」


「・・・は?」


「元気・・・?」


「・・・えと・・・はい」



そこで美月と林檎が顔を見合わせる。そして再度光をガン見。



「光、大丈夫なの?」


「何が?」


「そろそろエネルギー切れじゃない?」


「・・・・・・・・・・・・あ」



思い出したように口を開く光。



「いや、それは・・・」


「ぁぁああ!!!」



曖昧な反応の光を見て、わかったと言うように大声を上げる美月。

その声に驚いたのか、ビクッと肩を震わせて光が壁に貼り付く。



「な、何でしょうか」


「もしかしてヒカちゃん、林檎ちゃんが寝てる間に―――まさか・・・お・・・襲って!?」


「襲ってねぇ!!」


「じゃあなんでそんなにピンピンしてるのよ!!」


「俺は断じて襲ってなんかないぞ!!ただちょっとフラッとしたから―――」


「私、寝込み襲われたんだ・・・」


「うおぉぉぉおおい!!!林檎!!違うぞ!!確かにちょこっともらったけれども!!!」



思わず白状してしまった光に対し、美月は両手で顔を覆い、悲劇のヒロインのようにうつむいた。



「やっぱりそうなんじゃない!!ヒカちゃんは可愛い寝顔に堪えきれず、林檎ちゃんをつまみ食いしてしまったのよ!!!」


「私はおつまみですか!?」



そして今度は顎に折り曲げた人差し指と親指を当ててどこかの探偵風に目を閉じる。



「そうよ。可愛い顔して実は飢えたオッサンなのよ」


「そこせめて狼って言ってくんない?」


「あなたに決定権はない!!よってオッサン!!!」


「何でだよ!?」


「光は中年ですか!?」


「林檎。素直なのは嬉しいが、コレを真面目に受け取らないでくれ」


「違うの?よかったぁ」



ホッと胸を撫で下ろす林檎を見て、探偵風の格好のまま美月が顔をしかめた。



「・・・林檎ちゃんって・・・天然?」


「よ、養殖なんてされてませんよっ」


「「いや、だから違うって」」










いつまでも続くトリオ漫才に終止符を打ったのはやはり渚だった。



「・・・楽しそうだな。何の話してんだ?」


「わ、私がおつまみで、光は中年だったんです・・・」


「いや、わかんねぇから」


「ヒカちゃんがエネルギー切れだからって林檎ちゃんの寝込み襲ったのよ」


「襲ってねぇ」


「・・・林檎ッチのルーンはどこにあるんだ?」



また漫才が始まる前に、渚が話を続ける。

林檎は軽く(元々サイズが大きいので)襟を広げて見せた。



「なるほど・・・光、直接吸ったのか?」


「し、しょうがねぇだろ。ギリギリだったんだから」


「ん〜・・・確かに直の方が短時間で済むが・・・鎖骨を、直接・・・エロいな」


「なっ!?で、でも途中で林檎が起きたから満タンじゃねぇぞ!!」



だから上に乗ってたのか。

思い出したら恥ずかしくなってきた。



「なんだ、満タンじゃねぇのか。じゃあもらっとけよ」



その言葉に驚いたのは林檎だ。


今、ここで?



「ん?なぁに固まってんだぁ?林檎ッチ、もしかして知らないのか?」


「なにをです?」


「別に吸うのは体のどこでもいいんだぞ」


「え、そうなんですか?よかったぁ」


「ただ、ルーンに近ければ近いほどすぐ済むって事だよ」


「じゃあ腕とかでも大丈夫なんですか?」


「そ。ほら、やってみな」



長い袖をまくって、なるべくルーンに近い場所を光に差し出す。

すると、小さいため息をついて林檎の右横に片膝をついた。



「いくぞ」



光はそう言うと、薄く目を閉じて林檎の二の腕に口をつける。

その瞬間、体の中の何かがゾワゾワと動き出し、ルーンが青くなっていく。


なんだか奇妙な感じ。

背筋がゾクゾクする。



「・・・んっ・・・ふぁ・・・ぁ」



だんだん心拍数があがってくる。


なんだろう。まるで腕に性感体が出来てしまったかのような・・・。



「終わりだ。林檎?どうした?」


「な、何でもない」



なんというか・・・精神的に疲れる行為だと思う。


チラリと渚を見てみると、やはり経験者は語る。楽しそうにニヤニヤしていた。

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