不思議な夢
今日はよく寝た。
・・・・・・。
あれ?
だれ?
ふと気が付くと、女の人がいた。
私は何をしていたのだっけ?
私、なんでこんなところに?
いつかにしたのと同じ質問を口にした、気がする。いつかに、こんな風に、いつの間にか、よくわからない場所に来た、気がする。
すると女性が、私を見下ろしていた。というより、布団にくるまっている私と、私の部屋をただ見下ろしていた。
というか、見下ろしているのが、私であった。
あれ?
いや、私が寝ている・・・なにもおかしくはない。
今の私は、見下ろしてみている・・・おかしくない。
何もおかしくはない。ここでは、普通のことだ。
あ・・・そうだ。行かなくてはいけないのだった。
目的地へと私は目を向けた。
見えたのは、木箱。
見えているのは木の壁だ。
でも、見えたのは木箱だった。
私にはわかる。
そうだ。目的地は、ここだった。
もう、着いていたのだった。
だから、行くべき場所も、もう無いのだった。
行くところがないのなら、立っていても仕方がない。
おっと、私は最初から座っていたのだったな。
あれ?
私は、何を、したかったんだろう?
あれ?
「服は、いるかね?」
え?
私の姿が見えた。誰かの眼から見える私の姿だった。
私って、こんな顔だったんだね。
私だと思えるものは、10歳くらいの女の子だった。私の記憶には、無い気がする。
あれ?
私?
誰?
すると、私はこちらを見て、小さな声で囁く。
「あなたの、せいじゃないんだよ。」
そんなことない。
なに?
そんなことないよ。
なになになになに?
そんなわけないじゃないか。
私、こんなの知らない!
全部、俺のせいじゃないか!
私は
俺は
?
「私は‼」
「ひゃ⁉」
・・・・・・。
あれ?
唐突に目の前には見知らぬ天井が広がっていた。この天井は私の部屋のものでも、双子の姉の凛奈のものでも、ましてや病院のように綺麗なものでもなかった。要するにちょっと小汚くたなった年季を感じさせてくれるような天井であった。
「ここ、どこ?」
先ほどもよくわからないところで同じ問を言った気がするが、あれは・・・。
「いや、ちょっとまって。・・・あれ?これ、夢?いや、さっきのは夢だよね?」
え?じゃあここは?どこなんですか?
もはや私はどこまでが夢なのか、もはや全部夢なのか、訳が分からない状態である。
「あ・・・でも、木箱の中にいたことは覚えて・・・」
途端に顔に血が上るのが分かった。
そうだ。
私は意味も分からず木箱の中に入り、意味も分からない恥辱を味わったのだった。
あの時の恥ずかしさが猛烈にぶり返してきて思わず
「う・・・」
と死にかけのネズミのように唸っていた。
すると、少し離れたところから女性の声がした。
「どこか、痛むところはございますか?」
「ふえ?」
見ると、見たことのない民族衣装のようなものを着ている背の高い女性が立っていた。しかも、髪の毛はセミロングくらいの長さなのだが、色はびっくりするくらいに真っ赤であった。
(なんか派手だな。)
その真っ赤な髪の毛はどうやって染めたのか知らないが、染めたにしてはつややかな髪の毛であり、純粋に綺麗だと思わされる出来栄えであった。
そして私はもう一つ、気になるものを目にした。それは彼女の手に持たれているものである。その手には・・・
(鉄板?)
ではない。
その正体は大根くらいの極太な包丁のような刃物であった。
・・・・・・。
「夢?」
「夢じゃないですよ⁉」
女性がすかさず突っ込みのようなものを入れてくれる。
でもだったらここはどこだよ!
っと叫びだしたくなると同時に
その刃物怖すぎるんですけど!
という純粋な恐怖が湧き出てきた。
私は生唾を飲み込みながらその巨大包丁を凝視していると、女性が視線に気が付いて包丁を閉まってくれた。
女性はとても柔らかい口調で謝る。
「すみません。今から料理するところだったので。いきなり持ってたら怖くもなりますよね。あはは・・・」
私的には全く持って笑えなかったのだが、とりあえず私を切り刻むためのものではないと分かったので安心した。本当に安心した。
もう眠い