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09

「アミのばか……」


 グラスを置いたら中に入っていた氷がカランと音を発生させる。

 せっかくファミレスにいるのにモヤモヤが晴れない。


「そう言わないであげなさい」

「ユミさんは悔しくないんですか?」

「元々スズがあの子に会っていなかったら出会うことすらなかった相手よ、しょうがないわ」


 そこまで大人の対応はできない。

 しかもその割には長くアミを抱きしめていたじゃないか。

 無理しているのはわかっている、好きになるのなんてあっという間だからね。


「いいですね、ユミさんは強くて」

「強くなんかないわよ、ただ、あそこでごねても意味ないじゃない」


 そうか、そんなことしたらよりアミと小楠さんが仲良くなるだけ。

 駄目だとわかっていても抱きしめてしまった私と違って引き際をわかっている。


「悔しい……」

「なんでもっとアピールしなかったの?」

「……このまま続くと思ったんです、アミに告白するような子はいなかったから」

「それで大きいのを引いたということね」


 だからこそという見方もできるわけか。

 いままで縁がなかったからこそ大物を引けたと。

 先程、付き合い始めたという連絡がきた。

 どうせ昨日の内に付き合い始めたくせにってモヤモヤが強くなったけど。


「おめでとうと言っておけばいいのよ」

「……ですね、ユミさんの言う通りです」

「とりあえずもう考えるのはやめなさい、お金は出してあげるから」

「ありがとうございます」


 せめて告白しておけば良かったなとグラスの縁をなぞりながら思った。

 それはもうできないことで、考えれば考えるほどもったいない気持ちになる。

 それでももうしょうがないことだ、親友としておめでとうと言おうと決めた。


「ユミさんは大学に行くんですか?」

「ええ、県外のだけれど」

「それはなんか寂しいですね」

「スマホがあるじゃない、いつだって連絡はできるわ」


 仮にそうでもアミと離れ離れになったら嫌だな。

 って、なんでもアミを絡めて考えてしまうのは悪い癖だ。


「小楠さんはどうするんですか?」

「スズは隣の市の大学ね」

「やっぱりいまは大学卒が当たり前ですかね?」

「そういう風になっているわね、決してそうだからと行くわけではないけれど」

「頑張ってくださいね」

「ええ、ウサもね」


 とりあえず3年生になってからも一緒のクラスになれたらいいなと思った。

 そうすれば一緒の時間はどうしたってできるから、それで勝手に満たされることができる。

 離れるわけないじゃん、なにを不安になっていたのかは知らないけどさあ。

 あからさまに拒絶されたりしたら無理だろうけど、私はできる限り側にいたいと考えている。


「アミのことばかり考えているのね」

「うぇ!?」

「隠しても無駄よ、アミといたいと顔に書いてあるわ」


 ……迷惑をかけないように頑張っていこうと決めたのだった。

ここで終わり。

ありがとう。

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