抱き枕
物心ついた頃から。
ぬいぐるみの類を買ってもらえませんでした。
「すぐに埃をかぶる」
「ダニの温床になる」
そう言われました。
こっそり叔父にねだって、大きなぬいぐるみを買ってもらったこともあるのですが。
確かに、母が言う通りの結果になりました。
どのような美人も3日で飽きるものです。
いつのまにか、ぬいぐるみの存在を忘れました。
毎日毎日、野田はテレビゲームばかりしていたのです。
抱き枕なんて。
到底、縁が無さそうな代物だったのですが。
ある日。
くじ引きで当ててしまったのですよ。
大好きなキャラクター、スヌーピーの抱き枕を……!
はじめて使ったときの衝撃!
こんなに良い物が世界にあったんだ、と思った記憶があります。
しかしながら。
この幸せは長く続きませんでした。
すぐに、父との抱き枕争奪戦に巻き込まれたのです。
忘れもしない決戦の日。
絶対に見つからないであろう場所に、抱き枕を隠しておいたのですが。
「あったー!!!」という父の歓声が聞こえました。
驚きとともに、野田が抱き枕の隠し場所へ駆け寄ったところ。
背後で笑う父の姿がありました。
歓声は、フェイクだったのです。
泣く泣く、抱き枕は父の物になりました。
父も抱き枕が欲しかったようです。
母を説得して、買ってもらえば良い話なのですが。
野田の母が強すぎるのですよ。
パワーバランスの悲劇。
でも、心配には及びません。
父に抱き枕を奪われた野田。
あっさりと、抱き枕の存在を忘れてしまったのです。
そうして。
何十年と思い出すことはありませんでした。
旦那さまに出会ってから、思い出したのです。
抱き枕は持っていない人でしたが。
布団や毛布をくるくると丸めて、抱き枕にして眠る人でした。
抱き枕を買ってもらえなくても、そのような方法があったとは……!
目から鱗でした。
時折、真似しております。
横になったときの姿勢が楽なのです。
若かった頃。
シングルベッドで、旦那さまと眠っていたとき。
布団を丸めて抱き枕にするスペースがないものですから。
よく、足の掛けあい合戦をしておりました。
自分の足を相手の足の上に、いかに掛け続けるかという勝負です。
最終的に疲れ果てて、「一時休戦」と宣言。
お互いに背を向けて、眠る日々を送っておりました。
どうしてこうなったのかはわかりませんが。
今では、家族全員が各々のシングルベッドで寝ております。
1歳の娘さえもクッションを抱き枕にして眠ります。
きっと、眠りの環境を重視する家庭なのです。




