表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/78

顔文字

 人のなかに、風景のなかに。

 溶け込んでいたいと感じること。


 みなさまは、ございませんか?

 控えめにいって、野田は周囲の反応を気にしてばかりの人生でした。


 しかしながら。

 周囲の反応を気にすれば気にするほど、失敗だけが積み重なっていくのです。



 初めて、「ご趣味は?」と聞かれたとき。

「TRPG」と答えたことを、未だに野田は後悔しております。


 結果として。

「なんだか難しいことを趣味にしているんだね」と苦笑いされてしまったのです。


 お相手の方は、適当な会話を成立させたいだけでした。

 当たり前ですが、TRPGについて聞きたいわけではありませんでした。


 会話を円滑に回すためには、わかりやすい趣味を答える必要があったのです。



 数年後。

「ご趣味は?」と聞かれたときには。

「読書」と答えて、また失敗しました。


 会話をしていた女の子が、本を全く読まない子だったのです。


「えっ……、すごいね」と言ってくれたのですが。

 思いっきり、顔が引きつっていました。


 めっちゃ引かれとる! と、野田は変な汗をかいてしまいましてね。

 友だちになれませんでしたよ……。



 それ以来。

「ご趣味は?」と聞かれたときには。

「岩盤浴」と答えるようにしていました。


「いいよねー」「わたしも行きたーい」などという会話を楽しみながら。

 よしよし。と、ほくそ笑んでいたのです。



 しかしながら。

 こちらも暑がりの男性には通用しませんでした。


「崇高な趣味ですね」と言われてしまったのです。

 大きな壁の隔たりを感じましたよ。



 趣味を聞かれたときの無難な答えを、未だに野田は見つけられずにいます。


 誰しもが共感できる趣味なんてないのかもしれません。

 周囲の反応を気にすること自体が、失敗の始まりなのかもしれません。


 でも、気にしてしまうのです。

 人間だもの……。



 ところで。

 ちょっと変わった子だね、と言われている女性が職場にいるのですが。


『わかりました……!』というメールの文言が問題になっていたので、野田は戦慄してしまいました。


「『てんてんてんてん』なんて、わざわざ打たないよね」

「やっぱり、ちょっと変わった子だよね」

 みたいな会話がありまして。


「三点リーダーね」とか「2回続けるのは正しいんだよね」とか。

 口が裂けても言えませんでしたよ。



 人のなかに、風景のなかに。

 全力で溶け込みたい!

 本当は、ちょっと変わった子の野田。


 そろそろ、顔文字や記号ではなくて。

 スタンプや絵文字をマスターしなければならないようです……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ