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鍛刀

「私とテジャスで鍛刀を?」

「そうじゃ」


 ドワーフの長とウーヴェから意外な提案をされました。

 私とテジャスが鍛刀を行うよう、提案されたのです。


「紅蓮刀はただの武器ではない。そしてさらに今までの紅蓮刀を上回るものを作ると考えたとき――二人の魔力を込めると良いと気付いたのじゃ」

「私たちが全力でサポートいたします。テジャス様、シアン」


 テジャスは笑みを浮かべて聞いています。

 私が鍛冶…… いや、確かにずっと長に習っていましたが。


「やってみるか。なあ、シアン」

「しかし、最期は紅蓮刀を…… もし失敗すれば! あなたの紅蓮刀が永久に喪われることに」

「そのときはこの四人で紅蓮刀を上回る刀を作ればよい。なあ、皆」

「その通り!」

「我が魔王の言うとおりです」

「にゃあ!」


 ふーちゃんが激しく自己主張しています。

 うぅ。皆の信頼が重いです。

 

「わかりました。やりましょう、テジャス」

「うむ。気楽にいけばよいぞ、シアン」


 そうはいっても緊張します。


 しかし、立ち止まっているわけにもいきません。

 早速、作成に入りましょう。


 白鋼を板状に熱しながら延ばし、水につけ込みます。

 ハンマーで叩いて炭素量が多い部分と少ない部分に選別できるのです。多い部分は細かくなり、少ない部分は大きな破片となります。軟鉄部分ですね。

 

 そこで卸金の作成もあります。古鉄といって、以前ヤシマで使われていた鋼を使います。白鋼だと刃文も出ません。

 私が使う古鉄は紅蓮刀です。折れてしまった刀はもう、鍛え直すことはできません。溶かすしかないのです。


 ここから二種類の刀の材料を同時に作成します。

 刀は芯となる部分の芯金と、刃の部分を形成する包金。芯を包み込むように覆う工程で作れらます。

 芯金は炭素量の少ない鋼で、包金は炭素量の多い良質な鋼を使います。大事なのは包金、刃を形成する部分です。


 鋼は硬いと脆くなります。刀は柔らかい芯材に、硬く上質な鋼で覆うことで、しなやかで丈夫。切れ味も抜群の武器となります。

 そして白鋼は錆びにくいという性質も持っていますので、長持ちなのも特徴です。


「ここまでは順調だ。いよいよだ」

「はい!」


 テジャスも慎重です。


 鍛錬に移ります。ええ、あの鍛錬の語源って奴です。


 まずは下鍛え、という工程です。

 砕いた白鋼の、炭素部分が多い砕けた部分と卸金をブレンドし、包金を作ります。

 軟鉄部分の白鋼と卸金をブレンドし、芯金を作ります。

 比率は包み金が3分の2。芯鉄が3分の1ですね。

  

 ブレンドした鋼を叩き続けるのです。不純物を取り除きます。

 四角い短冊状にして藁灰をまぶしたり、泥につけて形を維持します。温度を調整しながらやるのが難しい作業です。

 

 形になったところを、タガネという道具を使って切れ目を入れ、折り返してまた叩きます。この作業を繰り返すのです。二人作業でカツン、カツンとリズミカルな音を立てていきますね。

 沸しという作業です。微妙な火力調整は、テジャスとふーちゃんがやってくれます。

 飛び散る火花で炭素の含有具合がわかると、コグニが教えてくれました。火花試験ってなんです? コグニ。


 この作業を包金を、芯金を2セット行い、刀を作るための鋼が完成です。


「よし、儂らの出番じゃ!」

「これは腕が鳴りますね。夢のようですよ。火の魔王とシアン様と、鍛刀できるなどとは」

「儂もじゃ!」


 次に上鍛えに移ります。。

 テジャスとふーちゃんのフルパワーで1300度の熱を維持しながら、四人で鍛えます。刀匠の指示で、みんなで叩くのです。この場合、何故か私です。

 相槌といいまして、ええ。これまた語源です。


 下鍛えの済んだ鋼を二つ、合わせます。

 10回から15回、叩きます。これを四人で行うのです。


 ここでもまた火花を見ながら、状況におって炭素の含有率が高い鋼を投入して調整します。

 これで包金は完成です! 何度も折り返し、信じられないほどの鋼の層を積み重ねていくのです。

 芯金も同工程ですが、叩く回数は5、6回ぐらいです。

 

 この二つの鍛錬が終えた鋼を合わせる、甲伏という、いわゆる鍛接作業に移ります。

 皮型を型に乗せ、タガネで切れ込みをいれU字状の溝を作り、そこに芯金を差し込みます。火床で熱して包み込むのです。

 これで異なる炭素量の、2種の鋼が一つになりました。


「いよいよ、反りか。我に任せよ」


 テジャスが気合いをいれます。

 

 できた鋼を今度は刀身状に延ばし、次に反りを入れる作業に入ります。

 終わったら、加熱した温度をゆっくり下げる、焼き鈍しに移るとしましょう。

 しのぎという刀の背にあたる部分を削ったりします。


 最難関である焼き入れを行います。その前に土置き、という工程が入りますね。

 焼き入れ前に、焼き入れする部位を調節します。粘土、砥石の粉、炭を使って塗っていきます。

 火床で加熱し、また冷却していきます。

 その後、刀身の出来を確認し、焼き戻しを行います。


 最後の工程に入りました。仕上げです。

 砥石で形を整えます。


 出来た刀は六本。二本を真打ちとし、残りを影打ちとします。

 この二本、あまりにもできが良すぎて甲乙つげたいのです。


「できた!」

「ついに!」

「やりましたね!」

「見事じゃ、二人とも!」


 皆で歓声をあげました。

 長い旅路、ありがとうございました。


 ついに刀身ができました! あとはドワーフの長が作った柄にはめ、ハコボに頼んで研いでもらい完成です。

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