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ラスボスに水着で挑むなんて聞いたことねえよ! 

 私は賢者シアン。青の賢者シアンと呼ばれています。

理由は単に髪色が青いからです。

 賢者っていうのは攻撃魔法と回復魔法、両方使えるスペシャリストなんです。実は凄い職なんですよ。本質は違うんですけどね。もう今はそんなイメージなのです。


冒険者の酒場で反省会中です。

 一週間前、ラスボスに挑んで返り討ちにあった勇者一行です。

 私以外全滅してしまい、火の魔王の情けによって、勇者の死体は王国に送り返され蘇生できたのです。


 火の魔王は私がなんとかしました。


 なぜなら水着を着ているからです。

 女神様が言うには水着は強キャラ、らしいですよ。ちなみに夏は終わろうとしています。


 そのかわり周囲の視線が集中します。魅了の効果もアップということで、諦めています。

 呆れているだけ? 言わないで!


「というわけで、高度な駆け引きで火の魔王は我々が倒したことになりました。そして皆様は教会で復活できたのです。ですが実際のところ魔王に挑むにまだまだレベルが足りません。修行しましょう」


 ちゃんと地味にレベリングしてくださいね。

 あなたたち、まだ動く鎧に苦戦するじゃない。

 イベント戦ばっかりこなしてレベリング怠っていたらそうなりますよ。


 生真面目な性格とよくいわれます。


 彼らの自主性を育成する意味もあります。

 だって彼ら私に寄生しそうですし。


「――話はわかった。君はもうこのパーティーには必要ない。でていってくれ」


 は?


 いけないいけない。追放は願ったりですけど。


 勇者エーキル。二十歳のこの勇者は女癖が悪いのです。顔は良いんですけどね。

 そもそもこいつが功績を焦ったのが発端です。


 魔王は魔族を統べる者。魔王を倒す宿命を持つ勇者は特別な力を持っています。


 勇者に協力するのは当然、という風潮は嫌いです。

 ※個人の感想です。


 勇者なんて堅めの魔法戦士じゃないですか? ちょっとオリジナルスキルやオリジナル魔法が強いだけで。

 嫉妬してませんよ。してないったら!


 私は恩人エティから依頼されたので仲間になっているだけ。

 恩人が昔仕えていたこの国の王子――勇者が不安と将軍に頼まれたらしくて。私に相談してきました。

 だから私はこの仕事を引き受けたのです。

 彼は今放浪中の冒険者。残念です。


 勇者パーティーは無口系の可愛い僧侶に、ツンデレ系の女魔法使い、いかつい巨漢の戦士に人相の悪い盗賊が他のメンバーになります。

 私入れて六人パーティーですね。


「何故でしょうか?」


 努めて冷静な声を出す。


 私が出て行きたかったんですけど!

 エティには申し訳ないが、これで義理は果たせたかな、と思っています。


「魔王と対決するに、その格好はあまりに恥ずかしい。シリアスな場面も台無しだ。場違いすぎだろ。TPOって奴? ちったあ考えろよ」


 ええ。確かに思いっきり布面積の少ない水着着ていますよ。夏イベ限定ガチャのレジェンドレア水着です。

 それが何か?


「そんな姿で魔王と対峙するとかありえない。もう頼むから出てって。俺まで恥ずかしい!」


 え。それが理由?

 お前が言うか?


「あなたたちが着ろってうるさいから……!」

「人のせいにするな!」


 睨んでくる勇者。あなたが一番うるさかったんじゃないですか! おっと口調が乱れました。


 勇者の怒声に、冒険者の注目も集まります。主に私に。


「ラスボスに水着で挑むなんて聞いたことねえよ!」

「この業界、わりと普通なんですがそれは」

「どんな業界だよ!」


 それは夏商戦が大事な業界です。 

 強い水着スタイルならそれでラスボス行きますよね? 可愛さより強さ、性能なんです。この水着は可愛いんですけどね、ちょっと布地が……


「せめてまともな水着なら」

「普通の水着です。そもそもあなたたちに見せるために着ているわけでもありませんし?」


 他の冒険者の視線が突き刺さるのは慣れました。きわどい水着などと言われていますが、神代の水着が正式名称です。


 布面積が少ないだけでオフショルダーのフロントリボン。可愛いですが町中で水着は目立ちます。

さらに言うならハダシです! 靴を履くと能力値が下がる罰ゲーム状態です。


 夏イベからずっと水着です。


 ええ。他のスタイルにしたいですよ。私だって! 

 着替えようとするたびに愚痴愚痴いってたのは勇者なのです。

 

「そりゃないぜ。エーキル。俺たちは彼女の魔力が高まるから水着を強要した。それにシアンが抜けたら、俺たちの戦力がた落ちだぜ」


 盗賊のロイが言ってくれました! 

 極悪人の人相ですが根はいい奴で私とは一番話が合うんです。

 彼がもっと本気をだしてくれたらいいのに、とも思ってしまいます。


「何よ。私たちでは不満だというの?」


 魔法使いのレベッカが声をあげる。赤毛の魔法使いで火が得意。かなり勝ち気です。

 僧侶のマグダもこくこく頷いている。そりゃあなたたちからみたら攻撃回復両方できる私は邪魔よね。だから支援に徹してたのに。


「そもそもなんで水着で戦闘力あがるんだよ」


 戦士のカークが不満げです。

 私が知るわけないじゃない。この賢者たる私をもってしても、水着着ただけで数多のスキル所得、さらに基本戦闘力まで跳ね上がる理由は解明できていないのです。

 ばれてますかね。近接戦闘能力が彼より上ってこと。

 彼にとっても私は邪魔には間違いありません。


 この水着の防御力は布面積が少ないほど反比例の力が働き、強化されるというという予測をしています。

 なんで魔法のフルプレートメイルを着た戦士を上回る防御力に至るかは…… 反比例だからかなぁ……


「君の力なら、せめて俺を戦闘中復活させるぐらい余裕なはずだ。もしくは自己犠牲呪文で全員蘇らせることもできただろう」

「無理です」


 努めて冷静な声を出す。

 感情的になったら負けです。

 呆れた。この勇者。戦闘中死んだまま放置されてたのが気に入らないのですか?

 

 自己犠牲呪文で復活って。

 瞬殺された五人を蘇生したところで結果は同じなのに。一人わざと殺された者はいましたけどね。


「そもそもだな! そんな格好で魔王と戦った仲間がいたなんて、人様に顔向けできない! 死んだまま戦闘が終わった挙げ句、魔王に送り届けてもらっただけでも俺たちにとっては恥だ。せめて賢者が棺桶を引きずって帰ってきてくれたら」


 後半が本音ですよね。

 ちっさ! 知っていましたが、この勇者。器がちっさい!

 

「賢者一人に五人の死体を持って帰れとか無茶いわないでくれませんか」

「うるさい! 賢者なんていくらでもいるんだ! 空気も読めない場違い痴女は出て行け!」


 うわ。すっごくむかつくー。


「はい。わかりました。さようなら」


 私は立ち上がった。ロイが声をかけようとするが無視する。ごめんね、ロイ。

 宿屋に向かおう。


 そして普通の服に着替えるのです!

はじめまして! 既知の方はこちらもよろしくお願いします!


ガチャ、刀鍛治、賢者と好きな要素をたくさん盛り込んでみた小説です。

刀鍛治については、実際に木炭を使った水車小屋の鍛冶施設に取材にいったり、以前の仕事でたたら製法に関する講義を受けておりますのでその知識を活かしたものにしたいなと思います。


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