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手を繋いで一緒に行こう  作者: 那由他
イーリン 心の再構築
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初めてのトイレ掃除

虫嫌い、特にGが嫌いな方は回避してください。

「イーリン」=「家」と音声入力しているので、見落としあってすみません(/ー ̄;)

挿絵(By みてみん)

「この修道院では日に4回の祈りがあることは話しましたね。時間はたっぷりあったはずですか、昼のお祈りをすませましたか?」

「はい。もちろん済ませました」

本当は横になっていたのだがイーリンは嘘をついた。


次にシスターは 噴水のある中庭にイーリンを連れて行った。


「近くの川から この水を引いているのです。 飲むことはできませんが 手を洗ったり体を清めることに使えるのですよ」


水瓶を模した口から 流れ出る水は冷たく、 イーリンはそれで手を洗った。


「食事の前は必ずここで手を洗ってください。 ここでくんだ水を 部屋に持ち帰って、毎日体を拭いてください」

「はい」


次にシスターが案内したのは食堂だった。数十人のシスターがそこにはいた。


パンの匂い、スープの匂い。

ひもじいとイーリンは唾を飲み込んだ。


お盆に木の椀を乗せたシスター達が、配膳係に順番にスープをよそってもらっている。 イーリンも並んだ。


すぐに手をつけようとするイーリンをシスターが止めた。


「食前の祈りを忘れています」


シスター達は みんな席に座り待っている。 全員の着席、そして自分を見ていることを確認してから、修道院長が手を組み目を閉じて言った。


「神よ。今日のこの日の糧を 我らに与えてくださったことに感謝します」


同じ言葉を みなが小波のように繰り返す。 イーリンは 手付きだけ真似して 口の中でもごもご呟いただけだった。


(そんな言葉 今まで言ったことなんかないわ。 本当に固いパン。スープだって水みたいにまずいわ)


そんなことを心の中でつぶやいているとも知らず、食事が終わる頃合いにシスターが一皿運んできた。

赤いエビのようなものが いくつも串に刺されている。


「これをどうぞ。とても栄養があるのですよ」

「きゃぁぁぁ!!」


テーブルに置かれた皿に、伸ばしかけた手は 一瞬止まり、勢いをつけて払いのけた。


-ガラガラガッシャーンっ!!-


料理は床に飛び散り、木の皿が静寂の中 音を立てて転がっていった。 周りのシスター達は皆 信じられないものを見るようにイーリンを見ていた。


「何をするのです?」

「だってあれ虫じゃない!!」

「そうですバッタです。でもあれは 栄養のある食べ物なんですよ」

「じゃあ、もっとましな食べ物をよこしなさいよ!私はバッタなんか食べないわ! あんたが食べればいいじゃない!!」


それは若い娘のためにと わざわざ 人手を割いて捕まえ、料理人が作り上げた心尽くしの一品だった。串に刺して 塩をふり 見た目はエビそっくりで 味もエビのように美味しかったのに…。


シスターは悲しそうに俯いていたがやがて言った。


「食事の後は あなたにもできる仕事を探します」

「私はダンスなら得意よ」

「それはここでは役に立ちませんね。まずは洗濯場に行きましょう。 噴水の水では 不十分なので 大きなものは川に洗濯に行くのです」

「なんで私が洗濯なんかしなきゃいけないのよ!?あなたがやりなさいよ!!」

「毎日毎日同じものを着て 薄汚れて 臭くなろうとも 私は知りません。 ただ私には近づかないでくださいね」


イーリンは一言も言い返せず、仕方なくシスターの後をついて川へと案内されて行った。

大きな木の下を通りかかった後だった。


「まあ。 毛虫がついてますよ」

促されて見ると イーリンの 右肩の上に でっぷり太った 毛虫が載っていた。


「きゃぁぁぁっ!!」

悲鳴を上げる イーリンとは逆に シスターは落ち着いて 袖で毛虫を払った。


「こんなことなど普通なのです。 これぐらいで驚いていたら 洗濯になと来れませんよ」

「私は虫が嫌いなのよ!!」

「慣れることです。川の近くには食べられる野草も多く、今度見分け方を教えますから洗濯の後に摘んできなさい」

「…………」


いよいよ川が近づいてきたとき カサカサと早く動く 大きな黒い虫が 現れた。 シスターは ベジッと勢いよく その虫を足で踏み潰した。 イーリンはもう悲鳴を上げる気力もない。


「あの虫は水辺の近くや不潔なものを好むのです。すぐに増えますから 見つけたらすぐに潰してしまわなければいけません。あなたの部屋も 不潔にしていると、この虫が何十匹も沸きますよ」

「…………」


イーリンは恐怖に顔をひきつらせて戦いた。虫が嫌いだったのだ。


(外の世界は虫がたくさんいる。何て怖いところなんでしょう)


「洗濯の仕方は覚えましたね。 こちらでは自給自足の努力をしています。 次は畑を見に行ってみましょう」


シスターが案内したのは 修道院から少し離れたところにある小さな畑だった。


「虫がわきやすい野菜があるのですが それは一つ一つ 手で取っていくのですよ」

「私はそんなことしない! そんなものに絶対触らないわっ!!」

「では雑草をむしりましょう。野菜の栄養を取らないように 周りの草をむしる必要があるのです。この野菜は毎日のあなたの食事になります。嫌ならば食べなくてよろしい」


もはや反論もできずイーリンは従った。


「最後にトイレの掃除です」

「私は貴族なのよ! そんなもの 平民にでもやらせればいい!!」

「別に使わなくてもいいのです。どこか外でしてください。さっきの黒い虫や 蛇が寄ってきますよ」

「…………」

食品成分表を調べてみたのですが、イナゴの佃煮はとても高タンパクで、鉄分が豊富に含まれていました。 貧血を起こしやすい若い女性にはいいとシスターは善意で勧めています。


野草については 自分が酷い三つ葉アレルギーで 、医者に注射を打ってもらったことがあります。 思い出すと怖かったのであまり調べていません。


あるホテルに泊まった次の朝、朝食会場に入ると 足元をカサカサした 虫が走り、従業員さんがスリッパを履いた足でベジッと潰しました。そして私にニカッと笑いかけたのですが、やはりちょっと怖かったですね。 つまり実話です。


題名にちなんでというしょうもないギャグは置いておいて。

水仙の花言葉の自己愛はとても有名ですが、 希望という あまり知られてない花言葉がありました。

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